「自分のことか と」
主人公の男は 定年間近の高校教師
高校といっても
さまざまな生徒がいる定時制
授業は夜
生徒は私服で
アルバイトをする者もいる
そこの教頭である男
教員となったからには
校長にはなりたかった
妻と娘が家にはいるが
いずれとの関係も良くはなく
すき間風
冷たい空気が家に満つ
男は
自分を病気だという
かつての教え子
定食屋でアルバイトをする若い女に
料金を支払い忘れ
何でも忘れていく―のだと
映画は
男が病魔…
若年性のアルツハイマーだとか
妻との離婚を考えているとか
かつての教え子によからぬ想いを抱くとか
そんなことは一切描写しない
しないが
男―光石研演じる男が
語り
その顔つきで
彼のこころがわかる つたわる
物語の半ばあたりまでは
かなり退屈で
試写室から出たい気持ちにもさせられた
だが だんだんと
男が語る言葉
男が置かれる立場が
ぼく自身にも重なってきて
ドラマチックな展開もなく
オーバーなアクション
派手な音楽もなく
映画は
小津作品を見ているような
じっくりと固定されたカメラが
男の顔と
内面までを映し出す
これはかなり
優れた映画
そう感じた一本