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旅レポート#004:命の表裏をめくる地図〜分人主義と命の裏側〜


みなさん、こんにちは。街の言葉屋です。

今回は「地図コース」の事例報告。noteやインスタ繋がりで連絡をくださった桑田まどかさんが本旅の主役です。


01|旅の概要

ご本人のnoteインスタからもわかる通り、さまざまなお顔をもち、本当に精力的に活動されているのが桑田さんです。そのエネルギッシュで活力に満ちたアンテナで言葉屋も見つけていただき、連絡をいただくことで始まった旅となりました。ヒアリング時には大変楽しくお話しさせていただき、逆にこちらが励まされることも多く、実に素敵な方でした。その充実した時間や、桑田さん自身のエネルギーが、今回の地図に結実したように思います。

今回ともに作成した地図。お気に入りの1本に。


02|ヒアリングで掴んだA面/B面のアイデア

桑田さんとのヒアリング時のときのこと。

「A面とB面という考え方を最近認知した」「しっかり者と思われることが多いのがA面、主に仕事のとき」「おっちょこちょいと思われがちなのがB面、どっちかというとプライベートの面」「『妻』や『ママ』になったことで、プライベートでもA面のことが増えた」「前はおっちょこちょいだったのに少し変わったね、と夫に言われることもあったり」などなど。ご自身の「役割」の変化に敏感に反応し、色々と考えていることをお話しくださいました。

一方で「実は怖い映画を観に行くのが好きで…」と桑田さん。好きな系統を聞くなかで、言葉屋が連想した「『ミッドサマー』とかもお好きそう」というと「そう!そこの制作会社の映画が好きなんです!」と話も盛り上がりました。

A面とB面。社会における役割。怖い映画。なにかこの辺りを中心にテクストリストを編めないかと考え始めました。


03|A面:B面=命の表層:命の深層

⚫︎地図のA面には「分人主義」をテーマに据えることに
いわばこちらA面は「命の表層」のパート。私たち人間は社会で生きていく際に必ずぶつかる「アイデンティティ」や「役割」といった生きることの表層部分を考えるためのテクストを選びました。

桑田さんの持つ、あるいは考え事としてある「人の役割をめぐるA面/B面という考え方」を「分人主義」と結びつけました。平野啓一郎さんの新書『私とは何か』は、「さまざまな役割」=「異なる自分」から成立するアイデンティティや人間関係を考えるのうってつけ。その考え氏が小説にて具現化(映画もあります)した『マチネの終わりに』も添えました。

「お笑いが好き」というお声もうけて、その『私とは何か』についても言及があるオードリー・若林さんのエッセイ集も。「分人主義ってなんやねん!」とお思いの方のために、あえてこちらの若林さんのエッセイから文章を引きます。

 恋人といる時の自分、会社での自分、両親の前での自分と、人には様々な自分がいて、その分けられた一つ一つの自分のことをディヴ(分人)と呼びますと読んでいた。「キャラ」という言葉よりは操作性がなく、対人関係や居場所によって自然と作られる自分が「ディヴ(分人)」だ。
 よく、先輩と後輩と飲んでいる時に後輩に弄られて「おい!調子に乗るな!」と突っ込むと先輩に「若林って後輩にそんな感じなんだぁ」と言われ「いや、違うんです」みたいなやりとりがたまにあるが、あの居心地の悪さは先輩に対するディヴ(分人)と後輩に対するディヴ(分人)が行ったり来たりするからであろう。

若林正恭『社会人大学人見知り学部卒業見込み』2015年 角川文庫 p.96より

 ここで若林さんが明らかにしてくれたように、桑田さんも、そして私たち自身も、多くのディヴ(分人)を一度に抱えて生きているはずです。職場での姿を家族に見られたくなかったり、「授業参観に来てほしくない」という子どもの思いも、このディヴ(分人)の混線からくるものでしょう。調整が難しくなって、どうしたらいいのか分からなくなってしまうのです。

さて、A面の選書リストの仕上げです。あとは桑田さんがご家族と一緒に楽しめるといいなと願い人気漫画・アニメ『スパイファミリー』をチョイス。自身の正体を隠し合いつつ、家族を演じ合い、擬似家族ながら「愛着」をそこに覚え合う主人公らの姿は、まぎれもない「分人的状況」とも呼べそう。

こちらA面、どしっと読むものからポップなものまで織り交ぜました。あとはデザートとしてビル・エヴァンスのアルバム『Moon Beams』を入れたことも付言しておきます。「ゆくゆくは、ふとしたときに会いたく月のようなおかみさんに」という思いをもつ桑田さんに、優しくも芯の強いエネルギーを放っているご様子も重なって、月光というモチーフがピッタリだと思いました。

⚫︎B面のテーマは『命の裏側へ』
「グロテスクなものが実は好き」という隠れたご趣味を地図に反映。グロテスクは単なるエンタメではなく、そこには命への繋がりもあるのではと信じる言葉屋です

メインは写真&詩集の『いのちのうちがわB面』。古本屋をふらついていると、奇しくもテーマにドンピシャの本を発見しました。そこに添えるのがエッセイ集『生き物の死にざま』。この2冊を通して「命を終えて、還ること」に考えを巡らせてもらえたらば。

加えて「身体変形の妙」ということで、伊藤潤二さんの漫画をアニメ化した『マニアック』を。もちろん漫画でもOK。

最後に、日本の古風な文化を音訳する音楽家・冥丁さんのアルバム『怪談』と、そのアイデアの元となった小泉八雲『骨董・怪談』を編み込みました。

04|完成、そして桑田さんへ納品

地図のデザインそのものにもA面/B面のアイデアを反映し、完成。

少なくないテクストを紹介するので、その優先順位も一緒に桑田さんへ送信。

「少しみただけでも、こんなにも汲み取っていただけたことに、めちゃくちゃ感動andワクワクしました!」と返信が。

大変ありがたいフィードバックばかりをいただき、言葉屋冥利に尽きます。

皆さんの話をしっかりお聞かせいただき、選書して、地図を編む。それをお渡しだけして旅へ向かう姿をお見送りすることもあれば、言葉屋も一緒にテクストの大海へ冒険に出ることも。「共に旅する人文知」、もっともっと楽しくやれるなと確信できた地図コースとなりました。

励ましをたくさんくださった桑田さん、ありがとうございました。またご一緒できる日を楽しみにしています。そしてこれを読んでる皆さんの新たな参加も、お待ちしております。


ここまでお読みくださり有難うございました。皆さんも「共に旅する人文知」、ご一緒してみませんか?気になる方はどうぞ気軽にご連絡ください。現在モニター期間中、いまなら付け値でお受けします。ご連絡、お待ちしております。

E-MAIL:poet@machinokotobaya.com
もしくはnote・インスタのダイレクトメッセージまで

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