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商売は、飽きずに、毎日コツコツやるっていうのが大切。

たまプラーザってほんとに景色がいいんで、好きなところは百カ所くらいあるかもしれない。川沿いもいいな、橋もいいな、うちの商店街は立体になっているので、橋の上からこう見る並木も、朝の子どもたちの登下校の風景とかもいいし…うん。ほんとにあげると数え切れないんですけど、私が商店会の会長ということもあるので、みんなの声を代表して言うと、お店の中から見える風景が一番好きなところ。シャッターを開けて閉めるまでお店を守っている間、お店の中から見える風景しか見えない。木があれば枯れてきたり緑が茂ったりして季節感があるんだけど、結構毎日の風景って変わりばえがしないんですよ。でも商売って「商い」っていうんです。シャレなんだけど、飽きずにやり続けるということもあって「飽きない」。商売は、飽きずに、毎日コツコツやるっていうのが大切。

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うちの薬局は45年前、街ができるときにできたんです。僕は商店会の会長になって10年目。引っ越してきたのは15年くらい前。以前の住まいはずっと都内だったんです。子どもの頃は、給料日に学校を休んで、親についてたまプラーザに来て、親の仕事が終われば車でいっしょに帰っちゃうっていう感じでした。
その頃、僕が小学校くらいの時は、このあたりは空き地だらけでした。緑色のフェンスの中に雑草が生えた空き地。空き地だったところにいろんなお店ができ始めて、車の通りもないし、みんな車道で遊んでました。車道にチョークで落書きして、ケンケンパして。駐車場では、ダンボールもらってきて電車ごっことか家作ったりとかして。建物が建ってなかったので、まあ夜暗かった。子どもの目線から車の外を見ると、木がね、今よりもっとすごい生い茂ってた記憶があるんです。ジャングルじゃないかってくらい。路地なんか通ると、建材は置いてあるし、ショベルカーみたいのもあるし。うちの薬局のそばに美しが丘橋ってあるんですけど、昔、なかったんですよ。橋がない頃は行き止まりになってたんです。

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僕の子ども時代は高度経済成長期でベビーブーム。景気がよかったので、まあ、ほんとに商品がすごい売れたわけですよ。趣向も凝らしながらだったんですけど、ほんとに置けば売れる時代だった。お客さんにこれが欲しいんだけどと言われて、粉ミルクや犬のエサを都内で仕入れると、あら、おしゃれなものがここでは手に入ると言って、売れるんですよ。ほんとに「なんでも屋さん」だったんです。猫じゃらしから、ポリデントから、何から何まで、生活雑貨ぜんぶ。
商店の人たちは夫婦共働きなので、仕事が終わるまで子どもたちはお店の周りで時間をつぶさなきゃいけなかった。家に帰ってもつまらないし。だから子どもたち、裏の駐車場にわっといるわけですよ。僕が給料日に来ると自己紹介から始まって、そうすると一緒に遊ぼう!となる。その集団の中に入るとほんとに壁はなく、どこ小とか、なに幼稚園とかもなく、親の仕事が終わるまでの時間一緒に遊ぶ。商店街の中の、今日は洋服屋さんちが当番だからってみんなでお風呂に入りに行って、ご飯を食べて、その家で寝てると親が迎えに来て帰る、という感じ。

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僕は前の会長に託されて、スクールゾーン協議会とかいろいろ見ていたんですけど、ほんとにこの街って自転車用とか歩道用の白線引いてないところが多いんです、今も。つまり線を引かなくても譲り合い精神がある街。人がいれば徐行運転というのがきちんとできている街だったってこと。最近は線を引いてくれないと歩道と車道の区別がつかないとか、いろいろ言われるんですけど、線を引くことがいいことか無いほうがいいのか。人がいたら気をつける、この時間帯には子どもたちがこの道を通るから気をつけようとか、そういうことは信号や線のあるなしにかかわらずできてきたというのがこの街なんだけどね。あんまり規制規制されちゃうとね。ただまあ、ほんとに最近は昔に比べて車の数が増えたので。

商店街も街も大きくなったんですけど、名物親父がどんどん歳をとって、若いお店の人が入って来て、商店街や街の顔が変わってきたので。それも受け止めつつ街というのは進化していくんだな、と思って見ています。

小松礼次郎

インタビュー:2017年 夏

このおはなしは2018年No.005号に収録されています。冊子をご希望のかたはご連絡ください。冊子は無料、送料180円でお送りします(5冊まで送料は同じ)。「街のはなし」プロジェクトを、スキやサポート,snsのフォローなどで応援していただけましたら大変励みになります!どうぞよろしくお願いします。

企画・文・写真: 谷山恭子
編集・校正: 伏見学・街のはなし実行委員会
発刊:街のはなし実行委員会

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