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自分の髪を愛せるようになった
鏡に映る自分自身の髪を見つめてふと思う。少しずつ自分の髪を愛することができるようになったなぁと。全然理想的な髪質でも髪型でもないけれど、今は自分の髪が大好きだと自信を持って言うことができる。
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私は元々自分の髪があまり好きではなかった。もさっとしていて重たいし、雨の日は特にウェーブするし、それでいてパーマほどクルクルしてないからお洒落に見えない。
そのため髪を伸ばすと恥ずかしかったので基本的には短めにするように心がけていた。髪が伸びてくると自分の髪がイヤになってくるからだ。
一ヶ月おきに馴染みの美容室に行き、同じように注文する。
「いつもみたいにお願いします」
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そんな中、コロナウイルスの広まりによって日本でも緊急事態という宣言がされ、これ以上の感染を防ぐために家にいることを勧める「ステイホーム」が叫ばれた。
インドア派の私にとっては苦痛になることはなかった。家で本を読むことも映画を見ることも、そもそも一人で過ごすことも好きだから。
しかし、ひとつだけ問題だったことは髪を切りに行くかどうかということだった。
髪は伸びてきていたのでそろそろ切りに行きたい。しかし必要だけど不急の外出のように思えた。
リスクをとってまで髪を切りに行くことはないし、実は髪を伸ばしてみたい願望があったのでこれがいい機会かもしれないと思った。
外出はほとんどしないし学校もオンライン授業に切り替わっている。これならあまり人に見られることはなさそうだと思った。
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髪を伸ばすとは言っても清潔感は保ちたかったので、家にあったハサミで時々自分で整えることにした。
もさっとしているところにはスキバサミを入れたり、前髪が目にかかり始めたらカットしたり。
髪を切るなんて初めての素人なので上手いとか下手とかは分からない。それでも週に一回ほどは鏡を見て髪の状態を確認するようになった。
正面から見た時だけではなく横から見たときや後ろから見た時など、平面ではなく立体的に髪型を考えながら伸ばしていくことが大切だと思った。
そのおかげで今まで以上に自分の髪に気を使うことが増えてきた。
今までは切っても切っても生えてくるので鬱陶しいなと思うこともあったが、自分で髪を切りより気を使うことで一種の作品のような感覚で髪を見ることが増えた。
おそらく自分の髪に愛着が湧いてきたのだと思う。
未だに髪は重いし雨の日にはウェーブするから私の理想的な髪質ではないけど、自分で髪を切ることによって髪に対してのネガティブな感情も少しは切り落とせたのかもしれない。
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コロナが明けて不要不急の外出が出来る様になったとしてもまたあの美容室に行くのだろうか。
「いつものように」短くしてもらうのだろうか。そうしたらまた自分の髪が好きでなくなるのだろうか。
そんな気持ちがあるから当分は自分で髪を切ろうと思う。
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あれから数年経って私は結局美容室に通うことにした。綺麗な髪質を保つためには適度なカットが必要だったし、たまにはいいトリートメントをしてもらいたいじゃない?
あまり好きではなかった私の髪だったけど自分で切って大切にしていくことで少しずつ自分の髪を愛せるようになった。その後、美容室に通うようになってからも短くすることなく、長いままの私の髪を愛することができている。
他にも自分自身の身体的な特徴であまり好きではない部分はあると思う。そこから目を背けてネガティブな感情を持ち続けるよりもそこに向き合って接していった方が愛していけるのかもしれない。