雨と残響
雨が降っていた
冷たい雨に打たれていると
あの日の残響が
今も脳裏にこだまする
アナログテレビの砂嵐のように
高架下の騒音のように
冷やされた吐息の中から
濡らされた髪の先から
水滴に鳴るトタンの喧騒から
無数の嘲りが生まれた
その嘲りこそが在りし日の残響
灰色の雨の中
明かりを失った
無数の瞳の中から
あいつが現れて心を軋らせる
その音こそが在りし日の残響
ありもしない神を
ありもしない善意を
ありもしない希望を
信じ続けた私は愚かだった
過去を
無力を
凍てつく弾丸を
そして残響を
氷雨の中呪い続けた
けれども雨は止まない
いくら残響に耳をふさいでも
雨は無情に降り続けるから
死人を置き去りにして
世界が回るように
灰色のノイズを振り切って
零れる雨粒を振り切って
私を殺した過去を振り切って
曇天に抗うように
レールの下がなる鉄骨に
恨みをぶつけた過去を振り捨て
夕立の後の茜色を握りしめて
走れ
あとがき
個人的に今まで書いてきた奴の中で一番好きな奴です。まあ身内では不評でしたが。
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