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英国シティズンシップ教育(4)-Controversial Issues(論争的な問題)とは

今回の記事では、イギリスのシティズンシップ教育の重要な要素の一つであるControversial issues (論争的な問題) への向き合い方を紹介したいと思います。

私がシティズンシップ教育に興味を持ったのも、まさにこのControversial Issuesを積極的に扱っているからです。

私たちの生活や信条、未来に深く関わるにも関わらず、意見が対立する問題というのは身の回りにたくさんあります。そのような問題をどのように考えていけば良いのでしょうか。

今回は、Council of Europe(2015)のTeaching Controversial Issuesから内容をまとめていきます。(以下筆者訳)


Controversial Issuesとは

この資料では、Controversial Issuesのことを以下のように定義しています。

Issues which arouse strong feelings and divide communities and society.
強い感情を引き起こし、コミュニティや社会を分断するテーマ

その後に、少し細かくこのように記述しています。

arouse strong emotions
強い感情を引き起こし

generate conflicting explanations and solutions based on alternative beliefs and values and/or competing interests, and which, as a result, have a tendency to divide society.

異なる信仰・価値観や利害により、対立する説明や解決策を生み出す。結果として社会を分断させる傾向にある

highly complex and incapable of being settled simply by appeal to evidence.

とても複雑で、単純にエビデンスに基づいて解決することができない


Controversial Issuesの様々な分類

また、Controversial Issuesも、2つのタイプに分けられるとしています。
まずは、その問題がいつ頃から存在しているのかという分け方

long-standing issues (長年にわたる問題)
・sectarian divisions and tensions between groups
   宗派間の分裂や人種間の対立など
(→授業で扱う場合、長く議論されてきた問題に対して、いかに新しい視点を盛り込むかということがチャレンジになるとされていました)
very recent issues(最近の問題)
・religious extremism, violence and indoctrination and radicalization
 宗教に基づく過激主義や暴力、思想の植え付けなど
・cyber-bullying online identity theft
 オンライン空間でのいじめやなりすまし犯罪など
(→こちらのタイプに取り組む上でのチャレンジは、現在進行形で起こっていることに対してどう対応するか。信頼できる情報をどう集めるかなど)

もう一つ、問題の性質による、別の分け方も紹介されていました。

Superficially controversial(表面的な論争的課題)
エビデンスなどに基づいて解決できる
Inherently controversial(根本的な論争的課題)
根本的な価値観、信仰に基づいて意見の対立が生まれる課題→解決が難しい


このような性質ゆえ、Controversial Issuesに取り組むには様々なチャレンジがあるとされています。この資料でも、生徒の間や両親、学校関係者や宗教・コミュニティリーダー、そして教師たちの間でも懸念や怒りの感情、一方的な意見の教え込みをしているのではないかという疑念が生まれる傾向にあると指摘されていました。

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そのようなControversial Issuesを、なぜあえて扱う必要があるのか。次の記事に続きます。

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出典
Council of Europe(2015) Teaching Controversial Issues https://edoc.coe.int/en/human-rights-democratic-citizenship-and-interculturalism/7738-teaching-controversial-issues.html (accessed 11/07/2020)



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