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まちとしての総力戦


能登地震

甚大な被害

2024年1月1日に発生した能登地震は能登地方を中心に富山県などに甚大な被害をもたらした。

2024.2.19現在の石川県HPによる被害状況
2024.2.19現在の石川県HPによる被害状況

地震発生から約50日が経過した2024年2月20日現在でも、輪島市では約10,000戸全てで断水状態(石川県HPによると一部で通水し19日現在で約8,700戸が断水)になっており、避難者数も石川県全体で11,000人を超えている。日常生活への復旧まではまだ長い時間を要する。

地下に埋めてきた上下水道管

こちらのnoteでも記したとおり、徐々に報道でもクローズアップされてきたが能登地方だけではなく全国の上下水道管の老朽化は深刻で、上水道のうち「基幹管路」における「耐震適合率」はわずか約40%に留まっている。水道は主たる水道管(=基幹管路)だけでなく、住宅地内等へ張り巡らされた管路も非常に多いこと、耐震適合率は耐震継手となっていないものであっても地盤状態が良好なものも含む計算となっていることから、実質的な上下水道の耐震化率はこれより圧倒的に低いものとなっているはずだ。
更に上下水道管の更新率も全国平均で1%を下回っていることから、単純計算すると40年の法定耐用年数の約2.5倍以上の更新期間、100年以上がかかることになってしまう。
(基本的に近年は下水道も含む)水道事業は、水道料金(+下水道料金)によって独立採算とすべきだが、ほとんどの自治体で赤字経営となっており、一般会計から多額の繰入がなされている。しかし、全国的に水道料金を本気で値上げをしてでもこの問題に取り組もうとする動きは鈍い。

まさに上下水道の問題を菅と共に地下に埋めて向き合ってこなかったのである。

機能しないBCP

総務省_地方公共団体における業務継続計画策定状況の調査結果(2022.3.30)
総務省_地方公共団体における業務継続計画策定状況の調査結果(2022.3.30)

阪神・淡路大震災や東日本大震災を経てBCP(事業継続計画)に対する関心が高まり、現在ではほぼ全ての自治体がBCPを策定している。「いかに被害を抑制するか、被害が発生した際にどれだけ早く日常を取り戻すか」がBCPのポイントとなるが、(被害があまりにも甚大だったとはいえ、)今回の能登地震でこれがどれだけ機能したのだろうか。

そもそも自分も公務員時代に防災関連の部署でBCPを策定していたが、残念ながら(記憶が正しければ)「コンサルに丸投げ委託+形式的な有識者委員会+既成事実としてのパブコメ」だけで策定していたこと、これをどう活用していくのかの共通認識化が図られたなかったため、恥ずかしながらこのnoteを書きながらはじめて開くこととなった。

結果論になってしまうが、年末年始やお盆などは職員も帰省や旅行などで「多数がそのまちを離れている」ことが想定されるが、「1/3の職員は必ずいつでも参集できるようにすること(3年に1回は年末年始・お盆もそのまちにいなければいけない)」などの基本的なリスクヘッジはされていただろうか。
行政における「形式的なBCP」は分厚すぎて、非常時にそのような「使えない辞書」のページをアナログでめくっている余裕は時間的にも精神的にもないはずだ。

一方で2014年に市域の1/3が水没する被害に見舞われた常総市では、「災害に強い常総市」「防災先進都市」を掲げ、外国人も含めたマイタイムライン作成や民間の福祉施設も含めた避難訓練などを平時から実施しており、職員も防災訓練時には防災服を着用し、いざというときをベースにしたリアルな対策を進めている。

今回の能登地震の被災地だけでなく、全国の自治体でこのような「本来は当たり前のこと」をどれだけ真剣に取り組んでいるだろうか。
「使えない辞書」としての分厚いBCPは仮眠の枕にすらならない。

被害者は市民

そして、このような自然災害における最大の被害者は市民である。
行政として「やるべきこと・やらなければならないこと」の一つは(極論すれば自分や家族を差し置いてでも)市民の生命・財産を守ることである。実際に公務員時代に姉妹都市の相馬市へ延べ1ヶ月派遣され、現地の職員と共に様々な活動を行ったが、中には震災から1ヶ月以上経っていたにも関わらず1度も家に帰ることもなく、被害状況がわからなかったり、ご両親が津波で流されてしまっていたが安否確認すらできていない幹部職の方もいた。

今回の能登地震では避難所の開設・応急危険度判定や罹災証明の現地確認・ボランティアセンターの設置などに多大な時間を要しているし、いまだに十分に機能していない。今回のように職員も含めて高齢化・人口減少の進むエリアでは最重要の初動対応のマンパワーが圧倒的に不足する。
自分も公務員時代はすぐに手を上げて新潟中越地震・東日本大震災では現場に駆けつけ、微力ではあったが「何かすること」ができたが、一民間人・一市民となった現在では「来ないでくれ」と言われてしまうと、寄付や買い支え等の間接的なこと以外にできることが少なくなってしまう。(もちろん色々考えて自主的にもっとクリエイティブに動かなければいけないのだが)

もはや今回のような非常事態はもちろん、日常の「まちの経営」そのものも1自治体や行政だけで対応できる時代ではなくなっていることを能登地震は教訓として残したと言える。

射水市の包括施設管理業務

能登地震における公共施設の被害状況の現場調査_日本管財株式会社提供

北陸地方で唯一、公共施設の包括施設管理業務を導入している射水市では、震災発生直後から同業務の受託者である日本管財株式会社が延べ60人/18日間のスタッフを射水市に派遣し、公共施設の応急危険度判定などを実施した。
被災発生直後からしばらくの時間、行政の職員は市民の生命・財産を中心とした被害状況の把握、避難所の開設等に追われ、(その多くが避難所にも指定されている)公共施設の点検は物理的なリソースから考えて後回しにされてしまう。しかし、上の写真でもわかるように、今回はこのような小さなクラックまで含めてプロが対応することができたのである。
平時から建築・土木の専門職が不足しているまちで、今までどおりの中途半端な管理しかしていなかったら同じようなことができるだろうか。

射水市では「公共施設の物理的な被害状況の把握」を民間事業者が対応することによって、行政は市民対応等の他の部分に大きなリソースを割くことができるようになったのである。

同じことの繰り返し

2011年の東日本大震災においても東北・東日本を中心に未曾有の被害が発生し、被害の大きさに加えて多くの行政職員が命を失ったこともあり、「復興までの道筋を自らのまちで描く」時間・気力・マンパワー・資金等のリソースが全く不足した。
(もちろん良かれと思ってやっていた面の方が多いことを前提とするが、)そこへ国の復興事業という名目で防潮堤・高台移転・大規模な公共施設整備を伴う土地区画整理事業などをスーパーゼネコン・コンサル等が主導して、それぞれのエリアの特性も踏まえず基盤整備のみを優先し税金に物を言わせた「ザ・復興事業」を各地で実施していった。

復興庁_復興の現状と課題について

ここでも書かれているように、「まちの規模をどう設定するか」「地区によっては未利用地の問題が顕在化」といった当初から一部で懸念されていた事項は、ハード整備に重点を置いた復興事業で結果として顕在化してしまった。
難しいことがあったことは間違いないが「漁師や漁業関係者は海の近くで生活し、海が見えること」が生活要件として必須であるし、「いざというときにどう逃げるか」ではなく「(土地と突っ込める税金はあるんだから)最初から高台に逃げておけばいい」といった短絡的・机上の論理が事を深刻化させてしまった面もあるのではないか。

この論理は東京オリンピックにおけるレガシーも同様である。オリンピック前には国・コンサル・ゼネコン・報道等がこぞって取り上げたレガシー。
需要に対して供給が圧倒的に不足し、かつ強烈な右肩上がりの時代だった戦後復興とは時代が異なるのに、(そんな簡単なことに気づかずor認識していながら自らの目先の利益のために)巨大なハコモノを整備しまくってしまった。

日本リサーチセンター_2020東京大会は何をレガシーに刻んだのか

こちらのレポートによると東京オリンピックによって「33.4%が向上・発展したものはない」だけではなく、グラフの縦軸の値を見ると上限値40%を超えた項目が一つもない。

https://www.jpnsport.go.jp/corp/chotatu/tabid/2340/Default.aspx

あれだけ二転三転した国立競技場も残念ながら2024年2月現在、(公募中ではあるが)運営事業者が決まらない状況にある。何より、オリンピックレガシーという用語そのものが闇に葬られていることを忘れてはいけない。当時の声高にレガシーを叫んでいた人たちはどこにいったのだろうか、(経営的な責任を負うこともしてないだろうが)せめてきちんとしたレビューぐらいはしてほしい。

もっと地に足がついた、一人ひとりの顔が見える、本気でまちと向き合った姿勢が今求められているはずだ。

ザ・公共施設マネジメント

こうして考えると、自分がメインで関わっている公共施設の関連でも似たようなことが起きているし、問題の根幹は共通している。

計画至上主義

総務省に言われた(要請された)とおりに、自治体によってはよくわからないまま「いつもどおり」(人の金だと思って)多額の税金を払ってコンサルに丸投げ委託し、コンサルも総務省の指示どおり・他自治体の劣化コピーで見た目だけ綺麗で「問題の先送り」をする使われない公共施設等総合管理計画を納品して、行政とコンサルの間だけでめでたしめでたしとしてしまう。

SNS等による新しいコミュニティ・人のつながりが一般化、コロナ禍を経てオンラインツールが浸透、「人が集まること」に対する意味合いの変化などを前提とすれば、公共施設のありかたも全く総合管理計画の策定要請時とは異なるはずだ。

更にここ数年の官製賃上げを含む物価・人件費の高騰によって当初の将来コスト推計は意味を持たないものになっており、試算や計画の方向性そのものも見直さなければいけないはずだが、地下に埋めた上下水道管と同様に「見ていない・見えていない」ことにしてしまっていないだろうか。
何かあったら必殺の決め台詞「想定外だった」を使うのだろうか。
使わない・使えないBCPと同じ道を歩んでいないだろうか。

やってるフリ

「将来のこどもたちに負担を残さない」と、今やらないことに目を背け、市民ワークショップやセミナーで「将来の公共施設をどうしますか」、高校生などの若いリソースを無駄づかいして啓発マンガを作ったりしてお茶を濁したりしていないだろうか。
おままごとの実践で何も使えない防災訓練と同じで「やってます行政」に陥っていないだろうか。

お茶を濁しているうちに公共施設やインフラは加速度的に老朽化していく。「やってるフリ」をしていると、時間の経過とともに取れる選択肢は減っていくだけでなく、まちが衰退していく。

ザ・PPP/PFI

PPP/PFIについても同様である。内閣府の優先的検討規程のモデルをそのまま準用して「総事業費10億円以上又は年間の維持管理費1億円以上」だけをPPP/PFIの対象としていないだろうか。しかも、その形式的な優先的検討規程ですら「やらないためのアリバイ作り」に成り下がってしまっている自治体も多い。

千葉県ではなんと、2024年2月現在までに実施した検討結果が全て「従来型手法」を選択することとなっている。

行政だけではまちを取り巻く多様・複雑・困難な課題には全く太刀打ちできない。「まちとしての総力戦」が求められているのだから、行政・民間とかいっている場合ではない。

丸投げ

しかし、実際には行政が何らビジョンを有さず、自らのリソースを提供しようともせず、覚悟もしないなかで「民間がなんとかしてくれるだろう」と甘い気持ちでサウンディングを実施している事例も多い。

特に日本各地で国・コンサル等が主導して行なっている地域プラットフォームにおけるオープン式のサウンディングではこの傾向が強い。「行政としてはやっているつもり」、主催している国・コンサルにとっては「場を提供しているつもり」、参加する事業者も「(金くれるなら・自らの事業リスクが限りなくゼロに近いならやるけど程度で)参加しているつもり」。
リアリティのない議論を繰り返したり、悪い場合にはそこから事業化されてしまうと墓標につながってしまう。
住民の生活やそのまちらしさを置き去りにしてしまった東日本大震災の復興事業から何も学んでいないのだろうか。
そんなことをやっているから、まちとしてのレガシーが生まれるw

短絡的なコスト削減の手法

未だにPPP/PFIを旧来型行財政改革の思考回路・行動原理で「民間を安く買い叩け」という短絡的なコスト削減の手法として勘違い・運用している人・まちも未だに多い。

https://www.jpnsport.go.jp/corp/chotatu/tabid/2340/Default.aspx

コンセッションを用いれば膨大なイニシャルコストを投じ、その何倍ものランニングコストを必要とする国立競技場もコストセンターからプロフィットセンターに生まれ変わり、「稼ぐ施設」として再生するだろうという甘い思い。

実際に民間事業として整備・運営しているエスコンフィールドや長崎市のスタジアムシティを見れば、ザ・公共施設とは全く異なる収益構造、設計・施工システム等で行われている。
スタジアムシティにおけるサッカースタジアム・アリーナには(海外のスタジアムでは当たり前となっているが、)それぞれVIPルームが数多く配置され、そこが固定費として大きな収益源となる。
ある自治体では、プロバスケットボールのクラブが既存アリーナの改修プロジェクトに合わせて自らが運営権者・指定管理者となり、同様の改修や客付けを行なっていくことを模索しており、この方向性を強く支持したが、残念ながら行政と旧来型発想・要求水準書しか持たないアドバイザリー業務を受託した大手コンサルによって、伝統的PFIとも言えるゼネコン主導のサービス購入型PFIに落ちてしまった。

会議では、行政担当者からは「このプロバスケットチームが信用に値するかわからない」という暴言も出たが、「そういうつまらないことを言っていると、北海道日本ハムファイターズに逃げられた札幌市・株式会社札幌ドームの二の舞になる、信用できるパートナーに育てることも行政の仕事だろ!」ときつく指摘しておいた。

指定管理者制度を代理執行・コスト削減の手法として捉え、要求水準はガチガチの仕様発注・価格点に重点配分された採点基準、自主事業をそもそも評価しない要求水準書等、指定管理者制度すらうまく活用できていないし、そのことにすら気づいていない。
必要十分なコストをかけず、財政が厳しいからとお小遣い帳理論の一律シーリングで安かろう・悪かろうのいい加減な施設管理しかしてこなかったのに、包括施設管理業務なぜマネジメントフィーが必要となるのか、(見かけ上の)コストが上振れすることを理解できない行政。これも上下水道管の老朽化・更新問題を見えない・見ないこととしてきた論理と同様である。

自分たちで考えない・動かない

結局、共通するのは「今だけを取り繕う」ことに精力を注ぎ、リアルな世界の過酷さ・困難さから目を背け「自分たちで考えない・動かない」、そうしようとすらしないことである。
自分のせいではない・自分たちではどうにもならない・報告したら大変なことになると逃げ続ける情けない姿は「令和版失敗の本質」に他ならない。

本当に「将来のこどもたちのために」と心から思うのであれば、「まちとしての総力戦」に挑む覚悟もできるだろうし、苦しくても決断・行動していくはずだ。

まちとしての総力戦

スタグフレーション

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2023/data/ko231130a1.pdf

前述のようにここ数年で欧米を中心としたインフレと官製賃上げ等の影響で日本でも物価高騰・人件費が急騰している。
一方で実質賃金の伸びは鈍かったり、実質GDPは停滞するなど簡単に言えば「生活は豊かにならないけど物価だけが上昇」する事態に陥っている。短絡的な給付金やガソリンの補助制度、(本来は遥か昔から必要だった)上下水道料金の据え置きなどによって目先を誤魔化し続けているが、スタグフレーションに近い状況が発生している。

システマチックにやっていきたいのであれば、試算条件が全く異なることを受け入れて公共施設等総合管理計画を全面的に見直すことになるだろう。また、今後もスタグフレーションが進行して計画行政が通じないことを悟れば、総合管理計画を破棄したうえで計画づくり・見直し・進捗管理等に投下していた無駄なリソースを様々なプロジェクトに置換していくことになるはずだ。

無理ゲー

公共施設・インフラの老朽化や更新問題は、人口減少や少子・高齢化に伴う財政状況の悪化などを考えれば多くの自治体でほぼ無理ゲーの状態である。実際に公共施設を何十%も削減することは(簡単には)できないし、水道管の老朽化に伴う事故が年間20,000件以上も発生している異常事態に対しても、有効な手を打つことができていない。

市内の道路延長は約1511kmです。このうち道路改良率は20.8%。道路舗装率は46.8%です(平成24年度見込み)。茨城県平均の舗装率60.7%と比較すると低い水準となります。また、市民アンケートの結果では、「市内の道路が安全・快適に利用できると感じている」と答えた方が18.4%と低く、依然として課題が多い状況にあります。

桜川市_道路改良事業・排水整備事業

先日、テレビで桜川市において道路補修の予算が不足することから(土木職ではない)一般職の職員が材料を手に自ら現場で補修をしている様子が放映された。(行政職員の人件費は高額であることから)フルコストベースで考えれば、きちんと地元事業者へ発注した方が安いし、そもそもプロが補修しなければ「その場を取り繕う」だけしかできないので、質の面でも問題が生じる。地元の民間事業者へ発注することで(微々たる額かもしれないが)まちとしての経済循環も生まれるが、職員がホームセンターで資材を買って自前で応急措置すれば、全く地域経済への貢献はなされない。
一方で新庁舎の建設には6,189百万円の債務負担行為を設定している。もちろん庁舎はまちの経営にとって不可欠なものであるが、基本計画等を見る限り、このイニシャルコストの一部が道路等に充当する選択肢もあったのではないだろうか。

今までのやり方が無理ゲーであることはデータ・予算・マンパワー等から明白なので、抜本的に予算編成等からやり方を変えなければいけない。庁舎等の建設も必要なものには投資をするが、それがまちのスケールに合っているのか、そこに投下する財源で他の必要な市民サービスを提供できたのではないかなども「まち全体の経営」という視点で見ていく必要があるだろう。

「初見でスペランカーを完クリしろ」ぐらいの無理ゲーな世界、ルールやプログラムを変えていくのは必要条件である。

非合理的な社会

ルールやプログラムを書き換えても、行政は非合理的な組織なので「売上・利益」といった民間事業者と同じような共通軸・共通言語を作ることが難しく、うまくいかなくても会社が潰れることは(現実的に)ない。
だから非合理性や経営感覚のなさが通用してしまうのだが、そのような社会のなかでも諦めたら終わってしまう。

自分たちが「やっていること・やろうとしていること」が正しいことだと思えば、庁内・議会(・行政的なつながりのある市民や地元事業者)といった小さな輪ではなく、多種多様な地元事業者や行政に関心を持たない一般市民、マスメディアやSNSなどを味方につけて「正当性を既成事実化」していくことが重要である。
あるいは上記のnoteで記したように執行権・政策の立案権・予算の編成権などを持つ職員のクライアントである首長をうまく活用して3次元化していくしかない。

人いない問題

国や報道では「物流」を中心に法規制を中心に2024年問題が語られているが、日本全国・様々な分野で「人がいない」問題は深刻化している。
地方にいけば24時間対応のはずのコンビニも人の確保ができずに夜間休業したり、バスも経営難ではなく人員不足でダイヤを縮小したりしている。福祉・教育などの分野でもこうしたことが発生してシビルミニマムとしての社会が揺らいだり、教育の質の低下などにつながってくる。
小規模なまちに行けばタクシー・代行すらほとんど走っていないので「夜、飲みに行けない問題」「免許非保持者が買い物に行けない問題」が顕在化し、まちの血流としての人流・物流が滞ることで経済が停滞し、まちの衰退に直結している。

一方で、行政では指定管理者の公募においてもいまだに受付人数を仕様で定めていたり、学校の夜間開放のために県職員である教員が毎日必ず誰か鍵の受け渡しをするためだけに残っていたりする。ビジネスホテルですら無人のチェックイン・チェックアウトをする時代なので、施設の予約等はインターネットで十分機能するし、受付も自動チェックイン機で対応できるはずだ。公共施設の鍵もスマートロックを活用すれば、より的確に実施できるし実利用時間などもログで管理ができる。

まちの血流としての公共交通についても、現在国がタクシー業界への忖度バリバリの「日本版ライドシェア」ではなく、オンデマンド交通や(条例設置による)ライドシェアなども視野に入れて利用者目線で再構築していく必要があるだろう。

今までのやり方は通じない

今回書いてきたように、もはや今ままでのやり方だけでなく思考回路・行動原理は通じない時代になっているし、行政だけでこうした課題に対応できるような生半可なレベルでもない。
更に毎年のように発生し規模や頻度が増す自然災害、新型コロナウイルスやロシアのウクライナ侵攻などの1自治体の規模ではどうにもならない事象も次々と襲いかかってくる。
まちを発展させるどころか「生命・財産」を守っていくことすら難しい時代に、既得権益や事なかれ主義をやっている場合ではない。

まちとしての総力戦が求められている。PPP/PFIといった言葉にこだわっている暇はないし、行政・民間といった仕切りをしている余裕もどこにも存在しない。
BCPや公共施設等総合管理計画といった旧来型行政の分厚い・机上の資料(≠計画)は何の役にも立たないことは実証されてきた。
どこかのまちの事例を劣化コピーしても通じないし、誰かが「答え」を持っているわけでもない。
「こうすれば何とかなる」という道筋もやってみなければわからない時代。

まちとしての総力戦とは、あらゆる主体が対等・信頼の関係を構築し、持てるリソースを惜しみなく出し合い試行錯誤をしていくことだ。ちょっとうまくいかなかったからといって誰かを叩いたり、いじけたりしていても意味はない。

総務省_地方議会制度の概要

それぞれの地方公共団体内部も同様である。議会も執行部を萎縮させることが役割ではないし、執行部もそんなつまらないことでヒヨっている場合ではない。それぞれが持てる権限(執行部は予算の編成権・条例の提案権・事務の執行権等、議会は議決権)を行使し、責任を全うしていくことが求められている。

しかも、こうした「地方自治」の枠組みに留まる「行政運営」ではなく、まち全体をマネジメントしていくという「自治体経営」の視点で文化・歴史・風土などともリンクしながら、市民・民間事業者・NPO等とも有機的にネットワークを構築しながら柔軟に覚悟・決断・行動していくこと、それがまちとしての総力戦である。

お知らせ

実践!PPP/PFIを成功させる本

2023年11月17日に2冊目の単著「実践!PPP/PFIを成功させる本」が出版されました。「実践に特化した内容・コラム形式・読み切れるボリューム」の書籍となっています。ぜひご購入ください。

PPP/PFIに取り組むときに最初に読む本

2021年に発売した初の単著。2024年2月現在6刷となっており、多くの方に読んでいただいています。「実践!PPP/PFIを成功させる本」と合わせて読んでいただくとより理解が深まります。

まちみらい案内

まちみらいでは現場重視・実践至上主義を掲げ自治体の公共施設マネジメント、PPP/PFI、自治体経営、まちづくりのサポートや民間事業者のプロジェクト構築支援などを行っています。
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