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103万円云々ではなく。。。


103万円の壁の異様な盛り上がり

「103万円の壁」は先般の選挙における論点の一つとなったが、自民党の歴史的大敗と国民民主党の躍進によってリアリティが増してきた。(同時に国会におけるキャスティングボードの取り合い・パワーバランスの探り合いといった政争の具になりつつある。。。)

世の中は「103万円の壁(もうちょっとすると178万円の壁?)」で盛り上がっているが、こちらのnote(YouTube)で狂犬こと木下斉さんがデッドプールの「俺ちゃん」も真っ青なぐらいにブッタ斬りまくっている。

103万の壁で税収が減るから財源不足みたいな話をしていますが、そもそも常々自治体は過去最高の税収を記録しても「予算がない」と言い続けています。
それは結局あれにもこれにも税金をまきまくって、全く集客もできないホールを100億円以上かけて作って維持費も数億かかっていたり、一般市民に関係ない駅前タワマン開発にも何十億円もの予算を出したりして、それで税金が足りないとかいったりする。
つまりは政治が全く優先順位なども判断せず。行政が大きな政府となりつづけようとして、あらゆることに関係しようとしているから。市民も市民でそれを要求しまくる人たちが政治家に陳情しまくっているというリアルでもあります。
こういう放漫経営そのものを見直さなければ、税収が伸びても足りない、減税したらさらに足りないみたいな話になるのは当然です。だってやること減らす気は全くなくて、あれもこれもそれも全部やろうとしているから。

木下斉さんのnote_【徹底解説】103万の壁の問題ではなく、自治体はいつも財源不足の理由

全編をぜひ視聴して欲しいが、結局は「単年度会計現金主義」でやっている行政は、お金があればその必要性・効果や将来負担などお構いなしに「全部使っちゃう」からいつまでも内部留保(財政調整基金)も増えないし、将来的なリターンが得られない(どころか竣工即負債となる)ハコモノを整備してしまう。

金がなければないで「予算が組めないからなんとかしてくれ」と国に文句を言ったり陳情したりと駄々をこねる。
「経営」の視点を持たないから、ときには反発を買ってでも必要な改革を断行しないから、金があってもなくてもいつでも「金がなくて苦しい」。
更に木下さんが指摘されているように、103万円の壁が動いたところで、様々な補填措置等も考えれば、実際の自治体経営の中で与える影響は(前述の前例踏襲・事勿れの行政運営やハコモノ等が与えるインパクトと比較すれば)そこまで大きなものではない。

世の中は変わっている

上記のnoteによると「103万円」の所得控除は1995年から2024年現在まで28年間も据え置かれている。103万・106万・130万円、どれも全く変わっていないが、変わっていないのはこれだけではない。
例えば1,300千円を修繕と工事請負のボーダーとすること、(自治体によって金額は異なるが)180,000千円の工事請負費や40,000千円の財産取得の議決必要ライン等もほとんど手をつけている自治体がないのではないか。
こうしたところにも「昨日の続きをそのまま今日やっていく」行政の前例踏襲が現れている。
世の中は大きく変わっているのに、行政が「何も変わろうとしない」から時代に取り残され、まちが衰退する。

筆者講演資料から

(建設)物価・人件費の高騰

総務省が全ての自治体を対象に公共施設等総合管理計画の策定要請をしたのは2014年である。上記noteにも記したように「財政が厳しいからハコモノ・インフラを減らせば良い」という旧来型行財政改革の思考回路・行動原理をベースに短絡的な施設総量縮減を目指したザ・公共施設マネジメントは残念ながらうまく機能することはなかった。
更にこの10年間、手を拱いていて有効な手立て・プロジェクトを具現化できないなかで物価・人件費は猛烈な勢いで(官製賃上げの影響もあるが)高騰していった。

建設物価・人件費の推移_Chat GPTで生成

上記のグラフはChat GPTで生成したものなのであくまで傾向としてでしかないが、総合管理計画の策定要請が出された2014年の単価が全く役に立たないことは明らかである。

総務省_総合管理計画策定要請時の大規模改修・更新単価

実務に携わっている方はわかると思うが、このような単価で色々できるならそんな楽なことはない。先日もスーパーゼネコンの担当者と話す機会があったが、スーパーゼネコンですら近年は「人がいない問題」で受注することを諦めたり、これまで2年で出来ていた物件の工期を4〜5年に設定しなければならない(それに伴い関連経費を計上するしかない)といった信じられない現実を教えていただいた。

総務省_公共施設等総合管理計画の見直しに関すること

一方で、総務省の資料によると更新単価の見直しをせずに机上の理論による個別施設計画を反映した将来コストの推計を「費用推計の精緻化・公共施設マネジメントに係る今後の方向性の提示」を可能にした事例として紹介している。
残念ながらお気楽すぎるとしかいえないし、現実を全く直視していないから短絡的な施設総量縮減(しかも机上の空論・誰もやらない問題)から脱却できない。

内閣府_G7各国の賃金の推移

内閣府のG7各国の賃金の推移を見てみれれば、報道されているようなアメリカの一人勝ちに対応できない「米ドルに対する円安」ではなく、単なる日本の一人負けの「円弱」でしかないことも明白である。
こうした状況を総合すれば「物価・人件費の高騰+足元賃金の停滞」≒スタグフレーションが日本の現実であり、それに呼応した生き方が求められているはずだ。

新型コロナウイルス

2020年から数年間、世界を苦しめた新型コロナウイルス。
コロナ禍でステイホーム・ソーシャルディスタンスなどが叫ばれ、「集まること」への価値観が大きく変化した。また、公衆衛生・パンデミックへの対応策が求められ公共施設のエントランスにも消毒液が設置されたり、エアコンを運転しながら窓を開けて換気をするといった脱炭素とは相容れないことも行われるようになった。
「数を集める」ことがポイントだった公共施設もSNS・動画配信等を含めた公共サービスの発信・集約拠点としての価値が求められるようになってきたはずだが、(大して使用することもない・作ることが目的化している)行政評価シートでは「年間の利用者数」が(表面上の)KPIとなっていないだろうか。

更に日本ではコロナ対応が後手後手に回り、そこからの脱却にも多くの時間を有したが、アメリカをはじめとする諸国は一定程度のリスク・犠牲を払いながらも「いち早く日常を早く取り戻す」ことを選択していった。同時にコロナ禍は一義的にはネガティブな事象であったことは間違いないが、Zoomなどのオンラインツール、EC販売網、AIなどの技術を飛躍的に進歩させると同時に日常生活にもビルトインさせる貴重な機会にもなっていった。

コロナを経て自治体の生き方は変わったのだろうか。残念ながら上記noteで記したように総務省から要請された総合管理計画の見直しにあたって、コロナの影響を真剣に反映した総合管理計画はどこにも見受けられない。そもそも総務省が策定要請の関連文書においてコロナの「コ」の字も用いていないことがその証左である。

能登地震

2024年元旦に能登地方を襲った能登地震。

甚大な被害が発生していながら当時は「ボランティアすら来ないでください」の大号令が出されるとともに、水道管の損傷等に伴う道路網の寸断、応急危険度判定の進捗の遅さ(や判定への膨大な不服対応)等、比較的小規模な自治体が多いエリアであったことを差し引いても「行政だけでは自然最大に全く対応できない」ことを見せつけられてしまった。
各自治体でコンサルへの業務委託なども含めて膨大な税金を含むリソースを投下して作成したはずのBCPがいざというときに全く役に立たないことも立証されてしまった。
そうしたなかで当時の北陸地方で唯一、包括施設管理業務を実施していた射水市において受託者である日本管財株式会社が延べ60名/18日間のスタッフを派遣して公共施設の緊急点検や応急措置を実施し、3学期の学校が通常日程で再開できたことは大きなヒントであり希望になるだろう。

減らせない公共施設

筆者講演資料

総務省が総合管理計画の策定要請の際にモデルとして掲げたさいたま市は、「新しいハコモノは作らない」等のハコモノ3原則を掲げたが、残念ながらこれが機能することはなくハコモノの面積は増加し続けるとともに、更新経費は10,170百万円/年も不足する絶望的なデータを自らのクレジットのついた計画で提示している。
地方自治の時代に総務省から「要請」という非常に強い言葉が発せられたことにより、すべての自治体がこの10年間、総量縮減一辺倒のザ・公共施設マネジメントに向き合ってきたが、残念ながら短絡的な目標であるはずの総量縮減が進んでいる自治体はそれほど多くないのが実態である。同時に、(平成の大合併等により重複施設を多く有していたり、廃校が数多く残っていた等の要因で)若干の総量縮減を進めてきた一部の自治体においても、現時点においてこの問題に終止符を打ったという話を聞くことはない。

まちの衰退

こうしたいくつもの「行政的なファクト」は表面的・一部の事象に過ぎない。何よりも恐ろしいのは、まちに対して真摯に向き合い有効な手立てを打てないでいるうちに、根本的な問題から目を背け続けているうちに、まちが強烈なスピードで衰退してきたことである。
市民ワークショップ・お飾りの有識者委員会・コンサルへの丸投げ委託等で「取り繕ってきた」これまでの総花的なお花畑の「計画行政」たる世界が全く通じないことを特にこの10年間見せつけられてきた。
これは公共施設・インフラに限ったものではなく、福祉・教育・公共交通・・・あらゆる分野での共通課題であり、マイナンバー保険証・学校給食の無償化・日本版ライドシェアといった表面上の「やってます行政」では何らリアルなまちの課題にインパクトを与えることはできない。

公共施設等を取り巻く課題とは一言で言えば「まちが衰退」することであり、その原因の全部とは言わないが、かなりの部分を作っているのは皮肉にも行政そのものである。
経営感覚の欠如・(国等に対する)依存主義・「自分たち」に対する自信の喪失・・・いろんなものが重なって行政が「負債の資産化・まちの再編・まちの新陳代謝を促すこと」へのチャレンジすらしなくなっているようでは、アカルイミライへの道筋など描けるはずがない。

「今」の時代を生きる

「喰われる自治体」からの脱却

2024年5月11号の東洋経済では「喰われる自治体」という衝撃的な特集が組まれた。政策として地方創生が始まってからの10年間でデジタル田園都市関連までの予算は国費だけで約60兆円も投入されているのに、自治体は表面的な人口の奪い合いに終始し、隣町よりも範囲を広げた医療費の無償化・ふるさと納税・固定資産税等の減免措置を含めた移住定住合戦等のチキンレースを繰り広げた。(これは一昔前のB級グルメやゆるキャラと同じ思考回路・行動原理)
そうしたプロ意識の欠如した行政にハイエナのようにコンサル・ベンダー等が群がり、ノーリアリティの各種計画書を策定したり、実装の可能性が全くないDX等の実証実験を繰り広げ、貴重な税金が蝕まれていった。本来、まちに投下できたはずの貴重な税金はコンサル・ベンダーによって吸い尽くされることとなった。これもふるさと納税でポータルサイトを運営する大手事業者に(一般のECサイトでは考えられないような)高額の手数料をピンハネされ続けているのと同じ構図である。

そう、自治体はこうした「喰われる自治体」から脱却することからやり直さなければなならない。最近、総務省の経営・財務マネジメント強化事業によって、通常の業務委託ではあまり関わることのなかったような自治体といくつか接点を持った。
そこで感じたのは、「自分たちで考える・考えようとする力・気力」が圧倒的に不足していることである。
前述のように「喰われる自治体化」してしまったまちでは、ないはずのお金を「自分たちでは考えられないから・忙しくて時間がないから・やったことがないから」等のプロ意識が欠如した状態でコンサルに丸投げしてしまう。そして自分たちで判断することもなく、ノーリアリティの計画や竣工即負債となるハコモノ・インフラ等を整備し続けて更にまちが衰退する負のスパイラルを自ら作ってしまっている。
でも「自分たちのせいではない」「自分たちにはどうにもできなかった」と言い訳を繰り返す。

喰われる自治体から脱却するためには「自分の金だったらやらないことを人の金、ましてや税金を使ってやらない」こと、「自分が一番のヘビーユーザーになるようなプロジェクト」を自分たちで試行錯誤しながら構築していくことである。そのための第一歩は、基本計画・可能性調査・アドバイザリー業務などを外注するのではなく自分たちで試行錯誤しながら作っていくことである。

民需なき官製都市からの脱却

2023年8月3日の日本経済新聞1面トップで「民需なき官製都市広がる」が掲載され、過去5年間で実施された約200件の市街地再開発事業のうち30%で補助金・交付金が活用されているだけではなく、行政が保留床を購入・賃借する「税金の二重適用」されているとの事実が報じられた。水戸市の泉町1丁目北の事業に至っては税金の投入割合が96%に及ぶ(つまりほぼ100%税金)、まさに「民需なき」官製都市が「街」づくり・地域活性化・地方創生・中心市街地の再生なる名の下に全国各地で形成されている。

更に阪神大震災からの復興のために行われてきた長田区の新長田駅南地区震災復興第二種再開発事業が、震災から約30年の時を経て完了したが、保留床の約60%は売れ残り、仮にこれが全て売れたとしても32,400百万円もの赤字が計上されるとのことである。そして、この赤字分は神戸市が一般会計から繰り入れることで対応する方針が示されているが、数万人規模の自治体であればこれだけで単年度の予算が全て吹っ飛ぶほどの金額である。
「震災復興の事業・ナイーブなエリアであったこと・今とは価値観が違うこと」等の要因があることは間違いないが、やはり旧来型行政のハード先行・容積率依存型の「街」づくりの限界やリスクが顕在化した事例であると言える。

ヒューマンスケール/エリアスケールに合致した、かつまちの文脈・歴史・文化・風土に沿った負債の資産化・まちの再編・まちの新陳代謝を促すことが求められていることは間違いない。

常総市_アグリサイエンスバレーとまちなか再生

https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/kanminrenkei/content/001718453.pdf

2015年の関東・東北豪雨で市域の1/3が水没する被害に見舞われた常総市。社会減を中心とする人口流出・減少も続くなかで常総インター周辺の約45haを「食と農と健康」をテーマにしたアグリサイエンスバレーとして整備してきた。

一般向け実証実験の概要
2024年2月より、アグリサイエンスバレー常総内の「道の駅常総」から観光農園「グランベリー大地」まで、約850メートルの区間を使い、来場者を対象としたCiKoMaによる自動走行の乗車体験機会を提供します。
また、2024年春には、コミュニケーション機能を搭載したCiKoMaの乗車体験も開始。専用携帯デバイスを通じてCiKoMaを呼び寄せ、自動走行で迎えにきたCiKoMaにジェスチャーで乗車位置を指定して乗車します。乗車後は、設定した目的地まで自動走行で移動し、さらに走行中に停止位置を指示することで、任意の場所に立ち寄ることも可能です。

HONDA_協調人工知能「Honda CI」を搭載したCIマイクロモビリティの一般向け自動走行技術実証実験を2月に開始

この一連の開発では道の駅常総、空中いちご園のグランベリー大地などの観光名所にもなっている施設とともに、旧自動車教習所を活用したAI自動運転パークに端を発したCIマイクロモビリティの実証実験なども行われている。

常総市_まちなか再生エリア
常総市_水海道公民館及び水海道児童センター複合施設整備に係る民間提案制度の優先交渉権者の提案

常総市では、公民連携によるインター周辺の巨大な開発事業の一方で水海道エリアを中心としたまちなか再生にも取り組んでいる。このまちなか再生プロジェクトの中核をなす「市民の広場の活用・水海道公民館及び水海道児童館の移転整備」につても、これまでのPPP/PFIの経験知を活かして随意契約保証型の民間提案制度で対応している。
また、この一連のプロジェクトについては、これまでの水海道あすなろの里におけるトライアル・サウンディング等のプロジェクトで構築してきた民間事業者とのネットワークを活用して、現実的かつ夢のあるプランが採用されている。

●事業概要
旧カスミ跡地を選定事業者が購入、既存建物を改修し、水海道公民館、水海道児童センター、オープンスペース及び民間テナントが入る複合施設として活用します。公民館及び児童センターは選定事業者から市へ賃借し、オープンスペース及び民間テナントは選定事業者等で運営します。また、旧カスミ跡地は市民の広場と隣接しているため、施設と広場の一体的な活用によって、市民が集まりやすい環境を創出します。
●事業目標
・「子どもまんなかまちづくり」の拠点として、まちなか再生のシンボルになり、市全体への情報発信及び多世代交流の場となることを目指します。
・民間テナントを活用し、公共部分以外の利用者増進を進め、未就学児から高校生、社会人から高齢者など、多世代にご利用いただくことを目指します。
●各エリアの概要
[水海道公民館] 約600㎡(青色の部分)
現状利用数の多い高齢層には引き続き利用していただき、これまで利用が少なかった子育て世代などの幅広い世代が利用できる公民館を整備します。
[児童センター] 約400㎡(黄色の部分)
親子が安心して過ごせる空間構成となっており、本棚広場や屋内外の広場などを整備し、学びや好奇心を活発化させます。
[オープンスペース] 約330㎡
施設の利用前後に過ごす場所や学生たちの勉強の場所、マルシェ等のイベントとしての場所など多様なシーンを生み出します。
[民間テナント] 約410㎡(ピンク色の部分)
カフェや雑貨屋、書店など施設利用者が気軽に利用できる業態を想定しています。
[その他]
施設全体として、市民の広場へ緩やかにつながる動線設計となっており、利用シーンに合わせて可変的に空間を変更できるレイアウトになっています。

常総市_水海道公民館及び水海道児童センター複合施設整備に係る民間提案制度の優先交渉権者の提案

常総市のインター周辺の大型開発とまちなか再生の関係は、紫波町のオガールと日詰商店街の関係に似ているが、これは常総市がPPP/PFIに取り組みはじめた時期に神達市長をはじめ職員が紫波町の視察やプロジェクトの意義を学んできたことが影響しているのかもしれない。

常総市は財政・立地・人口動向等が決して恵まれた環境にあるとはいえないが、目の前にある課題・ポテンシャルに真摯に向き合い「自分たちらしく」「やってから考える」ポジティブなマインドで取り組んできたことがこうしたプロジェクトに影響しているのだろう。

公共R不動産_NEXT PUBLIC AWARD

「NEXT PUBLIC AWARD」は、公共R不動産が2023年度から実施している、公共空間活用の新たな可能性を発見するアワードプログラムです。
複雑化・多様化する社会の中、私たちは公共空間のあり方、さらには「公共」の概念そのものも問い直す時期に来ているように感じます。そのヒントを、みなさんの各地での取り組みから探して一緒に考えていきたい。そんな思いで、今年もNEXT PUBLIC AWARDを開催します。

公共R不動産_NEXT PUBLIC AWARD

まちみらいとしてもこのイベントを知ったとき、脊髄反射でスポンサーに応募した(が、既にその時点で別件とダブルブッキングになってしまい当日リアル参加ができないことが確定)。
当日の様子をアーカイブ動画で確認したところ、「手作り屋台でまちを繋いでいく」もの等、いくつかのプロジェクトは小さいながらも「まち」へ直接アプローチするものである程度、その場で腹落ちするものであった。
しかし、グランプリを受賞したタルキプロジェクトは「垂木」をキーワードに農・本屋・人をリンクしていくものだったり、準グランプリの「meet the artist 2022:メディアとしての空間をつくる」は、古民家の解体をわざと1年以上かけてゆっくり実施しながら、その過程で解体中の建築物を使って様々なイベントを仕掛けていくもので、面白そうな雰囲気は伝わるものの「それが何なのか?」が簡単にはわからない(現時点でもモヤモヤ感がかなり残っている)ものである。

「公共の概念そのものを問い直す」アワードの趣旨には完全一致しており、自分の頭も含めて「現在のPPP/PFI、公共空間に関する既成概念で凝り固まっていること」を痛感させられるクリエイティブな場であった。
もはやハコモノでもなければ場ですらない。人が紡ぎあって創出する一瞬、これもNEW PUBLICなんだろう。

長崎市_スタジアムシティ

スタジアムシティ長崎の日常

こちらのnoteで記したスタジアムシティ。
ジャパネットグループのリージョナルクリエーション長崎が、サッカースタジアムを中心にアリーナ・ホテル・商業施設・オフィスなどの複合施設を民間主導で開発したもので、試合が行われていない日でもスタジアムのかなりの部分を開放して公共空間として活用している。
行政が全く関与しない巨大プロジェクトでありながら、芝生を眺めながらランチを食べる・コンコースでランニング・ウォーキングを楽しむ等の日常性を提供する公共空間としての役割も担っている。

宮崎市_こどもの居場所づくり

ATOMicaと連携した中高生の居場所づくり

宮崎市ではコワーキングスペースを提供するATOMicaと連携して中高生の居場所づくりを実施している。宮崎市の中高生は土・日・祝日にATOMicaの提供するコワーキングスペースを無料で使用できるだけでなく、そこで働く大人とのコミュニケーションを図る多様な仕掛けが展開されている。
単なるハコモノやその場のサービスではなく、学生のうちから大人との接点を持つ機会を提供する社会性の高いプロジェクトとなっている。

改めて103万円の壁

このように見てくると「103万円の壁」は、影響を受ける人々が多いかもしれないし、ハレーションも発生するかもしれない。しかし、議論していることが所詮「大人の理論」でしかなく、国会やマスコミを中心にこれだけのリソースを割いてまで議論するほどのことなのだろうか。もっとやるべきこと、国全体として考えて実行すること、それぞれの自治体でも目の前にある課題を解決したりポテンシャルを顕在化させるプロジェクトにより多くのリソースを割かなければいけないのではないだろうか。
103万円云々のワンイシューで立ち止まっている間にもまちは衰退していく。

上記のnoteは大東市のmorinekiの第二期事業の否決に関するもので、二元代表制を採用する地方公共団体と議院内閣制の国会では仕組みが異なることは十分承知しているが、103万円の壁問題も当たり前だが国会におけるつまらない政党間のパワーバランスを探るための政争の具にするようなものでは決してあってはならない。
国民生活がどうなっていくのか、どれほどの影響が生じるのか、税収減等を代替するよりクリエイティブな政策をどう打っていくのか等の観点から国会に関連する人々は真摯な議論を行い、そのなかで判断していくことが求められる。

自治体から見ると、103万円の壁問題は国マターなので直接何らかの手立てを講じることはできないが、「そのこと」によって本来やるべきこと、対応しなければならないことから目を背けてしまったり、「予算が組めなくなる」等の短絡的なギブアップ宣言をするようなものではない。
「103万円の壁」を突破しつつ、どうそれぞれのまちを経営していくのか、覚悟・決断・行動していくしかない。

それぞれのまちにはどこか・誰かに必ずクリエイティビティがあり、そのまちをよくしていくための可能性がある。それは全国各地の事例が示してくれている。

お知らせ

2024年度PPP入門講座

来年度に予定する次期入門講座までの間、アーカイブ配信をしています。お申し込みいただいた方にはYouTubeのアドレスをご案内しますので、今からでもお申し込み可能です。

実践!PPP/PFIを成功させる本

2023年11月17日に2冊目の単著「実践!PPP/PFIを成功させる本」が出版されました。「実践に特化した内容・コラム形式・読み切れるボリューム」の書籍となっています。ぜひご購入ください。

PPP/PFIに取り組むときに最初に読む本

2021年に発売した初の単著。2024年11月現在6刷となっており、多くの方に読んでいただいています。「実践!PPP/PFIを成功させる本」と合わせて読んでいただくとより理解が深まります。

まちみらい案内

まちみらいでは現場重視・実践至上主義を掲げ自治体の公共施設マネジメント、PPP/PFI、自治体経営、まちづくりのサポートや民間事業者のプロジェクト構築支援などを行っています。
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