【滝口優さんインタビューVol.1】保育園のコミュニティコーディネーターとして地域に関わる働き方から得られた「粋」な人生観
INTERVIEW1:試行錯誤の上、たどり着いた理想の働き方
受験や就職を経る中で、ひかれたレールの上を無意識に走ってきたような感覚が滝口さん本人にはあった。その中で、自分にフィットする働き方を模索し続けてきた。現在の働き方に至るまでは、仕事を通じて自身の力量に限界を感じることや、人生の大半を使う仕事として何を選べばいいのか迷うことなど、表には現れない苦労や悩みが絶えなかったようだ。
そんな中、滝口さんの暮らし方・生き方にとって大きなターニングポイントとなったのは、保育の現場でのコミュニティコーディネーターという働き方だ。
現職のKanade流山セントラルパーク保育園では、子ども一人ひとりを尊重・受容する理念を掲げている。この理念は、滝口さん自身にとっても生き方、”Well-Being”を見つめ直すきっかけになったようだ。
今の滝口さんは、「豊かさを感じられる”粋”な人間でいたい」という価値観を大切にしている。”粋” という感覚は人それぞれかもしれないが、彼にとっては「"単に役立つ"、"便利になる"という観点以外の自己実現にあると考えている。例えば、稲刈り後の田んぼで羽釜で炊いたご飯を食べること。わざわざ外で火起こして羽釜で炊くという手間はあるが、そこで味わうものは何事にも代えがたい。そういったことが、日本には四季折々の自然の変化やそれに伴う生活の中でたくさんあり、これまでの人生では気づけていなかった」と語る。
つまり、なんとなく生きていると通り過ぎてしまうことに気づける丁寧な暮らし方こそが、滝口さんにとっての豊かさであり”粋”の形のようだ。この価値観を生活や仕事の中で蔑ろにしないことが滝口さんが自分自身を尊重・受容することにも繋がっているとインタビューを通じて感じられた。
INTERVIEW2:豊かで粋な暮らし方を広げたい、保育の理念から得た価値観を職場に還元する
保育理念を通じて見つけた粋な人生を歩みたいという価値観は、滝口さんの仕事との向き合い方にも還元されているようだ。
「子どもが見えている世界は粋な世界そのものだと考えている。子どもたちの想像力や発想はその現れです。遊びの中で経験のないことに挑戦し、自分の世界を広げようとする子どもたちは常にそれぞれのこだわりを大切にしている。その子どもたちを温かく見守ってくれる保護者や地域住民との関わり、四季折々の自然の中で子どもに自然と育まれる感性を大事にしたい。」と滝口さんは語る。コミュニティコーディネーターの仕事では、そういった子どもの豊かさをより感じ取ってもらえるように、保育園の外に繰り出して地域との関わりの中で得られる学びの環境作りを行っている。
最近、地域住民から保育園に対してメダカを寄贈してくださるような関係が生まれた。地域の方は子どもたちがかわいいと思っていても、関わるきっかけがないのではないかと思う。そのきっかけをつくれるような仕掛けを引き続き続けていきたい。滝口さんは「子ども主体の保育やコーディネーターとしての仕事は正解がない。」と話すが、悩みながらも着実に出来ることに取り組んでいる成果として、人の価値観や行動の変化という形となって表れ始めているようだ。
INTERVIEW3:決められた枠組みの中に留まらない、一歩先の働き方
豊かさのある粋な生き方・働き方の体現の場は、保育の場だけにとどまらない。
流山市内でコミュニティスペースを運営しているmachimin(まちみん)と流山市が「公園をまちのお庭に」することを目指して締結(令和3年10月22日に)した協定において、滝口さんはmachiminのスタッフとして推進役を担っている。公共の場である公園においても、性別や世代に関わらない多様な遊び方を企画・開発している。
この活動では、machimin(滝口さん)が一方的に遊びを提供するのでは決してなく、市民が主体的に関わることで市民それぞれが豊かで粋な生き方や働き方を発見する機会となること、市民が公園で楽しんでいたら公共を運営していたという自然な状態を目指しているようだ。保育園で勤務をしていると園外のことは他人事として捉えがちだが、積極的に園外に活動を広げる新しい取り組みにチャレンジしている。
滝口さんは仕事として地域との関係性構築を試みている存在であるが、指示された業務だけをこなしているわけでは無い。豊かで粋な暮らし方を大切にしている滝口さんだからこそ、新鮮な活動を思いついているのだろう。(構成、文:北島)
編集後記
滝口さんのインタビューでは、暮らし方自体を真剣に考え、その価値観を仕事の中でも大切にすることで働き甲斐を感じている姿が印象的でした。後から仕事のやりがいをこじつけているタイプの私にとっては、等身大の滝口さんは独創的で羨ましくも見えます。
地域との関わり方においては、滝口さんのように仕事であろうが私のように個人的な関わりであろうが、自分が地域に何か価値を提供して、その結果として生活の充足を得たいという共通する期待感がありました。
働くフィールドは違ったとしても、生き方と働き方の境界線が良い意味で薄い滝口さんの生き様から、刺激を受ける人は少なくないように思います。
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