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【今年の一冊】東畑開人著『雨の日の心理学』:心のケアは「はじまる」のではなく「はじまってしまう」
今年最後に読んだ本が、今年の本になりました
東畑開人氏の『雨の日の心理学』を読み終え、心に深く残るものがありました。特に印象的だったのは、「心のケアは始めるのではなく、はじまってしまう」という言葉です。
晴天から突然の雨へ
著者は、心のケアを「突然の雨」に例えています。よく晴れた日に散歩に出かけ、気持ちの良い風を感じていると、突然、空が暗くなり、大雨が降ってくることがあります。心のケアはまさに突然の雨に降られる人へ傘を差し出すようなことと表現しています。
身近な人の心の不調
身近な人が心の不調を表わした時、私たちは戸惑います。子どもが学校に行きたがらなくなったり、いつも元気だった友人が無気力になったり…。「頑張ってね」と励ましたら、「うるさいな」と迷惑そうな返事をされる。励ます言葉が、かえってチクチク相手を傷つけてしまう。
心理学が教えてくれること
この本は、そんな時に近くにいて、心のケアがはじまってしまった人がどう対応すればいいのかを心理学的な視点から丁寧に教えてくれます。
心のケアは特別なものではなく、日常の会話やちょっとした気遣いの中に存在していること。相手の話をじっくり聴くこと、共感すること、そして「わからない」という気持ちを素直に表現して良いこと。
ケアする人が元気でいるために
また、著者は、心のケアをする人が元気でいることの重要性も強調しています。常に相手のことに気を配り、自分を犠牲にするようなケアは、結局は誰のためにもなりません。
ケアは「酸素」のように
「晴れの日」には、私たちは無意識に周りの人をケアし、また、周りの人からケアされています。まるで空気中の酸素のように、ケアは私たちの生活の中に溶け込んでいます。
専門知識が日常のケアに活かせるよう、とにかく丁寧に優しく書いてある本です
『雨の日の心理学』は、心のケアについて、私たちが普段抱いている疑問や不安に答えてくれる、とても優しい本です。この本を読んだ後、私は、心のケアは「晴れの日」と「雨の日」の2種類があり、相手が晴れの日には良い対応でも、雨の日には傷つけることになることがわかりました。特別なスキルを持つ人だけがするもののではなく、誰にでもできることだと気づきました。
あなたにとっての「雨の日」
もし、あなたが今、「心の雨」に降られていると感じているなら、この本を手にとってみてください。きっと、あなたにとっての「傘」となるはずです。