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【レポート前編】書籍『遊び・学びを深める日本のプロジェクト保育 協働探究への誘い』刊行記念セミナー

こんにちは、まちの保育園・こども園 広報部です。

今回は、まちの保育園・こども園/まちの研究所・グループも執筆に参加しました、2024年9月に発行された書籍『遊び・学びを深める日本のプロジェクト保育 協働探究への誘い』(中央法規出版)の刊行を記念したオンラインセミナーの様子をお届けします。10月1日に開催された本セミナーには、約600名の方々がご参加くださいました。(ご参加くださった皆様、ありがとうございました!)


登壇者プロフィール

中央:秋田喜代美先生、左:弊社代表松本、右:弊社 山岸日登美

・秋田 喜代美 先生 (本書籍の監著者。学習院大学 教授、東京大学 名誉教授)
専門:発達心理学、教育心理学、保育学、学校教育学
東京大学大学院教育学研究科博士課程修了。博士(教育学)。
立教大学助教授、東京大学大学院教育学研究科教授、研究科長および教育学部長を経て、2021年4月から現職。こども家庭庁こども家庭審議会会長、東京都こども未来会議座長。

・松本 理寿輝(本書籍の監著者。まちの保育園・こども園/まちの研究所 代表)
認可保育園「まちの保育園」、認定こども園「まちのこども園」を都内6箇所で運営するほか、イタリアの幼児教育「レッジョ・エミリア・アプローチ」に関する日本窓口となる組織「JIREA」の代表を務める。

進行:山岸 日登美(まちの保育園・こども園 ペダゴジカルチーム  ディレクター)

※セミナー全体の司会進行:矢﨑 淳美氏(中央法規出版)

はじめに:書籍の概要について

『遊び・学びを深める日本のプロジェクト保育 協働探究への誘い』(中央法規出版)

そもそも、「協働探究」とは?

書籍のタイトルにある“協働探究”とは、子どものワクワクに保育者もワクワクして一緒に動き出すこと。乳幼時期の遊びや学びの中にある、こうした“ワクワクが深まっていくプロセス”というものを見える化して、一緒に事例を共有していこうという挑戦がかたちとなったのがこの本である、と話された秋田先生。

秋田喜代美先生の資料より

実践事例のエピソードを書くだけでなく、各事例において今どういうプロセスにあるかということを印(デザイン)で表していること。子どもや保育者、保護者の声をふんだんに紹介し、協働探究の具体的な姿を表そうとしていること。事例に出てくる園の関係者による座談会などを通じて、日本のプロジェクト保育について探究していることなど、本の特徴についてもご説明がありました。

協働探究のプロセスを見える化。「88モデル」とは?

協働探究のプロセス=子どもと大人の探究の循環を見える化したのが、図の“88モデル”。縦に並ぶ歯車がよく見ると数字の“8”に見えてくることから、この名前をつけたと松本は話します。

数字の8が2つ並んでいるように見える。色がついているのが「軸」部分

88モデルでは、まず最初に保育の場面における子どもの探究があります。そういった子どもたちの姿を見ながら、保育者などの大人が保育の環境やデザインを考える。それが大人の探究です。子どもの探究と大人の探究が波を打つようにお互いに行ったり来たりしながら循環的に巡り、協働的な探究が深まっていきます。

子どもたちの探究と、大人たちの探究がまさに歯車のように噛み合い、こどもの心が動けば大人の心も動いていく、そんな連動性・循環性を描いているのが88モデル。この歯車がきれいに噛み合っていくためには、その「軸」がぶれないということが大変重要だと松本は語りました。

全国の園より事例紹介

続いて、実践事例の発表が行われました。本書籍でも取り上げられている3園の事例について、各園の保育者が写真を交えてより詳しく説明しました。

(1)「植物の探究」 ー 和泉先生、大前先生(こどもなーと山田保育園)

和泉先生(こどもなーと山田保育園)

一人の子どもの図鑑への興味が、子どもたちみんなでチューリップの球根を植えてを育てることへ広がっていった「植物の探究」プロジェクト。
ある2歳児が家庭で魚の図鑑に興味を持ったことをきっかけに、園でも植物や昆虫の図鑑を導入。図鑑を活用しながら、散歩で拾った植物や地域の方からもらった花を調べる活動を行い、子どもたちの興味を広げたり、植物の育成を通じて成長を観察し、図鑑と実体験をつなげる学びを深めました。

図鑑と実物を見比べてみる

また、書籍には収録されていない後日談として、地域のお花屋さんとの交流の際、こどもがチューリップだと思って手に取った球根が実は違う花のもので、しかしお花屋さんが気を利かせて、気づかれないようそっと差し替えたという場面があったそうです。けれども、違う花の球根をそのまま育てても別の発見があったのではないかと、保育者が振り返って葛藤していたのが印象的だったといいます。探究における「正しい答え」にこだわらず、過程を重視する意義をあらためて見直した活動でもあったということでした。

(2)「川探検のプロジェクト」 ー 糴川先生・林先生(つぼみの子保育園)

糴川先生・林先生(つぼみの子保育園)

春探しのビンゴから発展した「川探検のプロジェクト」。はじめは、ビンゴに記された動植物を探しながら興味を広げていきましたが、ビンゴが川に流されてしまったことで、川探検へと発展。ここでは、書籍にはあまり描かれていなかった川探検の続きについてのお話がありました。

当初は、ビンゴを全て埋めることが目的だった

探検のなかで、これまで見たこともないような大きな白い鳥に出会い、衝撃を受けた子どもたち。園に戻ると、ビンゴを探しで身についたであろう、”自ら調べて考える”という行動を自然にとっていたことに保育者は感銘を受けます。また家庭内で鳥の図鑑の写真を撮ったものを持ってくるなど、クラスの話題は白い鳥で持ちきりに。

みんな白い鳥が気になって仕方がない様子

いっぽう保育者は、長い時間をかけ積み上げてきたビンゴ探しが頓挫してしまい、急速に方向転換していくことへの不安があったといいます。しかしあるとき川で白い鳥を探していた子どもたちが、流されたビンゴを発見。すると再び興味が向かう様子も見られ、それぞれの活動を切り分けて考える必要はなく、多様な発見や経験が混じり合いながら探究を深めていくという姿を受け入れられるようになったそうです。
本プロジェクトを通じ、失敗と思えることでも視点を変えてみたり、予想外の出来事を楽しむ大切さを再認識させられた、保育者にとっても意義深いものになったと語られました。

【こどもなーと山田保育園さん、つぼみの子保育園さんについて】
今回ご紹介させていただいた2園は、JIREA(私たちが日本窓口を務めるレッジョ・エミリア国際ネットワークのための組織)の活動等を通じ、いつもお世話になっている皆さまです。今回の実践発表においても、たくさんのことを学ばせていただきました。(いつもありがとうございます!)
詳細な事例紹介は書籍に掲載されていますので、よろしければ、ぜひお手にとってみてくださると嬉しいです。

つづきは後編で!

次回は、事例紹介の3園目である、「海への探究」(まちの保育園 吉祥寺)と、各事例をふまえての専門家の意見や感想パートをお届けします。おたのしみに!

【▶︎後編はこちら】


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