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『食べる女』筒井ともみ
食と性の間には、切っても切れない関係があると思う。共に五感を使うからだろうか。
向田邦子賞を取っているだけあり、どことなくシナリオっぽさ、映像で「見える」書き方をする人だなぁと思った。(この本は映画化されている)
料理する登場人物たちの手際の良さ、的確だけれどもアナログではない表現。筒井ともみは、さぞかし料理がうまいんだろうな。でも、25もの短編の中には、料理がうまくできない辛さや、コンビニ飯だけの殺伐とした生活も、両方ある。
食と向き合うとは、「私」と、「私の体」を結び直す工程かもしれない。五感を通じて、知らない私、新しい私、いつもの私、を認めていく。
豆腐に並でないこだわりをもつ父親や、男に振る舞うための鍋の具材を思案する女、誰にでも合わせることのできる自分をひき肉のようだと考える女…
料理がしたくなったり酒が飲みたくなったり、した。
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恋人との破局や、大切な人の死。どんな悲しみが人生に訪れようとも、我々は食べなくてはいけない。生活は続いていく。
読んだ後、気付いてしまった。これだけの短編が詰まっているのに、恋愛について書かれたものはすべて異性愛であった。食と性をテーマに据えると、異性愛になってしまうのだろうか。ううむ。一度気になると気になり続ける…