沖縄 大雨 私の一日。
その日は天気予報が何日も前から発表していた通り、朝から大雨だった。
バシャバシャ、ビチャビチャ、ザーザー、しとしと。
日本語には雨の降り方を表現する擬音がたくさんあるが、その全てが聞けるほどの大雨だった。
雨の日は内外的にもパフォーマンスが下がるため、特に予定は入れていない。
起きて外を見た後、外出するならフル装備で行こうと判断する。
宿猫ビリーのごはんがなくなったため、買いに行くことにした。
靴を濡らしたくない。サンダルで出かけることに決める。
私は靴下が濡れることをとても嫌う。
そして裸足でサンダルを履くことも、嫌う。
さあどうしよう……。
この豪雨の中、果たして靴下を濡らさず外出する方法は?
「どうせ誰も足元なんて見てないだろうから、靴下をサランラップでグルグル巻きにして出かけちゃおう大作戦」を決行することにした。
地球に優しくない……
どんだけプラゴミが出ると思っているんだ!
という声が聞こえてきそうだが、耳を塞いでサランラップを足に巻き始める。
1ミリの隙間なく、くるぶしの上まで巻かれたサランラップに満足する。これなら濡れるまい。
大きい傘を宿にお借りして、一歩二歩と歩き始めた。大丈夫、水の浸水はない♪
アーケード街までたどり着く。ここからは濡れる心配がないので、縦横無尽に歩いて店を覗いていく。
やはり皆同じことを考えるようで、オリオンビールの T シャツをお揃いで着た観光客のグループや、家族連れとすれ違う。
市場に立ち寄る。
なじみの魚屋さんに声をかける。
雨だけど(だからか?)忙しそうだ。
注文が入った魚をどんどん下ろしてお刺身にしていた。
お惣菜屋さんを覗いたら売り切れ続出だった。
今日は諦めよう。
コンビニでビリーのごはんを買って宿に戻る。
ビリーも雨なので動き回ることができず、暇そうだった。
部屋に戻ってサランラップぐるぐるをはずす。
雨ではなく、汗で靴下が湿っていた。
意外と足が汗をかくことを知る。
サランラップぐるぐるは長時間やらない方が良さそうだ。
部屋で昼ご飯を食べる。
友達に借りてきた本を読む。
夕方は再びサランラップぐるぐるで宿から10分ほどのところにある劇場まで映画を見に行った。
現在は取り壊されてしまった首里劇場の最後の姿を写真家の石川真生さんが撮る姿に密着したドキュメンタリー映画だ。
首里劇場を命懸けで撮る真生さんの姿。
彼女の力強さ、生命がそのまま伝わってくる映画だった。
殺風景で息づかいが聞こえるような、ラフでダイレクトな映画だった。
映画を見終えると辺りは暗くなっていて、なんだか無性に泡盛が飲みたくなった。
お気に入りの店「オニノウデ」へ足を向ける。
オニノウデとは、陶磁器の名称だ。
その昔、琉球王国時代に泡盛をオニノウデに詰めて日本やアジア諸国に輸出していた。
オニノウデではオニノウデで熟成された泡盛も味わうことができる。おすすめ店。
首里劇場と石川真生さんに思いを馳せながら、しっぽり泡盛を楽しむ予定だったが、出てくる料理と酒があまりにうまくて絶賛し、喋りまくり。
上機嫌で帰って来た。
格好はつかなかったが、いい夜だった。
帰りも雨は弱まることなく降っていた。
結局、一日雨だった。