見出し画像

ギター

 その音は私の胸を抉った。私の傷にどうしようもなく触れてくる。その音から耳を背ければいいのだろうけど、私はその音から耳を背けることができなかった。その場から離れることができなかった。
 私は一歩を踏み出すことのできない人間だ。私は夢を諦めてしまった。だから、私の心をあの音は抉るのだ。私が夢見ていた場所。私がなりたかったもの。私はその景色を下から眺めることしかできなかった。
 本当にそうだろうか。私の夢は何なのだろうか。

ここから先は

2,493字

¥ 100

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?