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わかるわけがない

「お客様の立場になって」。

以前、接客業に携わっていたころ、
自分にも、人にも、幾度となく言ってきた。

相手の気持ちに寄り添う。
相手の気持ちに共感する。

当たり前のように、
「そういう言葉」を使ってきたし、そのことが間違っていた、とも良くなかった、とも思わない。

けれど、それは「無理なことだ」と
理解できるようになった。

やっぱり、どう頑張っても
その人と「同じこと」を経験したことがない限り
その人の気持ちはわからない。

サラリーマンの気持ちは、
サラリーマンにしかわからないし
経営者の気持ちは、
経営者にしかわからない

母親の気持ちは、
母親になった人にしかわからないし
働く女性の気持ちは、
働く女性にしかわからない

自分のことが嫌いな人の気持ちは、
自分のことが嫌いな人にしかわからないし
いじめられている人の気持ちは、
いじめられたことがある人にしかわからない

大きな病を患っている人の気持ちは
大きな病を患ったことがある人にしかわからなし
大切な人を亡くした人の気持ちは、
大切な人を亡くした人にしかわからない

いくら本を読んでも、人の話を聞いても
「体感」せずに「わかる」ことは、きっとない。

だって、もしも簡単に人の気持ちがわかってしまったら、その人は、生きていくのがとても大変だ。

だから、想像するしかないのだと思う。

安易にわかったつもりにならないで、
勘違いしないでわからないまま、
いつまでも想像し続ける人だけが
良い接客ができるようになるのだと、今になって思う。

「わからない」けれど、
「わかりたい」と寄り添う姿勢に、人は心を動かされる。

「あなたの気持ちは、わたしにはわからないけれど、今日、あなたに会えてうれしいです」。


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