2024/10/18日記_『あんのこと』を観まして
観てよかったものの、感想を述べにくい。全体的に苦しい、でもそのなかに喜び辛さが描かれている。主人公は河合優実さん演じる杏で、覚醒剤を打って売春する場面から始まった。母親は杏に暴力を振るい、12歳の頃から売春させていた。食費もままならないから万引きをし、杏は小学4年生までしか学校に通っていない。杏はまさに社会の外を生きている。ぼくは生きづらさを感じるけれど、不安は常にあるけれどそれでもまだ社会の中にいるということを思い知る。
杏は警察に捕まり、取り調べを担当した刑事が佐藤二郎さん演じる多々羅だった。多々羅は杏に、薬物依存者を自助で克服する人たちのグループを紹介する。ヨガや対話によって互いに助け合う。杏が希望した介護の仕事にも就くことができた。そこで初めて得た給与で買い物をするシーンがある。かわいい手帳を手にとって、しばらく万引きするか迷ってから、レジに向かって給与袋からお金を払った。仕事をして得た給与で買う、当たり前だけどそうでなかった彼女にとっては大きな変化に見えた。危険な実家から出てシェルターのアパートメントに住むことになって、初めてそこに足を踏み入れた時はとても嬉しそうな表情だった。
この過程では社会の酷さにも描かれていた。役所では生活保護を拒否されて、同行した多々羅が食い下がってもダメで、行政の冷酷。初めての介護の職場では不当に安い賃金で働かせられる。セイフティネットは穴だらけで、助けてくれるのは行政ではなく、NPOや個人の志し高く慈善活動をしている人たちだった。
自助グループに通っていた女性に性的行為を強要したことで多々羅は逮捕されてしまう。杏は頼れる人を失ってしまい、そこからやっと積み重ねてきた安定が崩れていく。さらに新型コロナウィルスの感染拡大で、人との繋がりを失っていった。そんななか、杏は突如ある使命を課され、それにしっかり応えていく。それでも杏が疲れ果てたとき、窓の外の青空にはコロナ禍で飛んだブルーインパルスの編成飛行が映る。一直線に伸びて朧げになっていく飛行機雲と独り置き去りにされた杏、まるで何もしてくれない権力を象徴しているかのようだった。
杏も、多々羅も、稲垣吾郎演じる雑誌記者も、良し悪しがあって、全方位で良い人も悪い人もいない。河合青葉さん演じる杏の母は全面的に悪く描かれているけど、どんな生い立ちだったのかわからない。世の中にはルールや仕組みがあって、それはお互いにとって良い社会になるためだと信じたい。でもその枠の外に見えなくなっている人たちを、助けない。悲しい終わり方の作品であるけれど、希望はもてない作品だけど、そういう事実があったことを、ぼくを含めて社会は知るべきだと思う。
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今日は残っていた茄子と粗挽き豚肉で麻婆茄子をつくったら、かなり美味しくできた。『地獄が呼んできる』の1stシーズンをみかえし始めた。ポリタスでキャッシュレス決済の特集は見入ってしまった。うちの店は現金のみにしている。 QRやクレジット払いは手数料が高すぎるし、個人経営の小規模店にとっては便利ではないのです。