沖縄。「心を開き続ける真のつよさ」を持つご夫婦 vol.1(2012年43歳)
煌めくイルミネーションに、ロマンティックムードが漂う12月の街。
そんな浮足立つ世間を背に、私はひとり沖縄へと旅立った。
今回も例によって大好きな風水開運旅。
とは言え、かなり重めな傷心旅行でもある。
沖縄を選んだ理由は、12月の吉方が南西であり、その中で最も現実逃避にふさわしそうな遠い地だったから。しかも、斎場御嶽(セーファウタキ)というパワースポットもある。
私は目論んだ。
「斎場御嶽さんに、冷え固まって要塞化した我が心を、何とかしていただこう!そして、あわよくば運も授けていただこう!」
……完全におんぶにだっこ状態だった。
でも、もう人生に疲れ果てた私は、おすがりするよりほか無かったのである。
と言うことで、旅行2日目の冬とは思えぬ麗らかな朝(※初日はすぐに気温に適応できず、軽コートの地元の皆さんの中、私だけ半袖)。いよいよ宿からバスで斎場御嶽に向かった。
到着早々、入り口付近にある案内看板前でハッとする。
「あ!そう言えば、斎場御嶽さんって風水的にパワースポットだけど、本来は琉球王国最高の“聖地”だよ!」
『何を今更!?』と、私はどこまでも節穴な己に突っ込んだ。
だが仕方ない。知識が認識に至ったのが今なのだ。
「えぇー!こんなドロギラした心で聖域に入っていいの!?受け入れてもらえる?なんか、そこが一番重要な気がする……」
慌てて、少しでもシャッキリ見えるよう背筋を伸ばし、すぅーっとひと呼吸。
ドキドキしながら、いよいよ鬱蒼とした細い参道に足を踏み入れる。
……と、早くも何やら特別な気配。
その繊細にしてピリリと締まった清浄な空気感は、まるでこの地に立ち入るにふさわしいかどうかを見極めているかのようだ。
「だ、大丈夫かな……」
聖なる審査に身を固くしながら、亜熱帯の森を更に奥へ奥へ。
ひと足ごとに緑が一層深まる。
途中、ふと変化に気づく。
「あれ?空気が緩んだ?」
不思議だった。参道で感じたものと全く違う。
そればかりか、私をホワンと温かく包み込んでくれているような気がしないでもない。
「なんて心地よい……」
やがて感じ始めたふわりとした浮遊感に、思わず止まる足。
空気感を確かめる。
「このどこまでも純真で柔らかな感じ……。沖縄の方ならではの包容力にとてもよく似てる……」
そう感応した刹那、要塞化した心の壁はホロホロ崩れ、何かがギギギッと開こうとした。
……と同時に、激しい抵抗が起こる。
原因は、深く負った心の傷。傷口には、純真無垢な優しさが逆に沁みすぎて痛かったのだ。
「…………!」
切なくなった私は、反射的に壁を厚く補強し、再び閉ざし始めた。うっかり開いて、再び傷ついたりしないように。
ところが。このエネルギー空間は、そんな抵抗ももろともせず、それごと包んで温めたのだ。
「あ……」
驚きと歓喜のまま棒立ちになる。胸には、ありがたさと感激が滾々と……。
……そう、きっと大いなる聖地からして見れば、人間の心の壁なんて些末なものでしかない。そんなことは全く問題じゃないのだ。
「形無く目に見えないけれど、絶対的に何かがすごい。人間なんかは到底敵わない……」
畏敬の念はとめどなく湧き起こり、柔らかな涙がにじんだ。
こうして揺るぎない安らぎを得た私は、畏れ多くも、心の中で斎場御嶽さんにエアーハグをさせていただきながら、「本当にありがとうございました。大好きです!」などと暑苦しいほどのお礼を告げ、次の目的地「壺屋やちむん通り」を訪れるため、さっき降りたバス停に向かった。
壺屋やちむん通りは焼き物の産地である。
場所はここからバスで1時間ほど。私はそこで、何としてでも南西旅の開運行動「陶芸体験」を遂行するのだ(←強欲)!
ただし、辿り着くにはちょっとした不安が。
一つは、バスが1時間に1・2本あるかないかということ。もう一つは、更に途中でバスを乗り継がねばならぬことである。
バスと言えば、古今東西遅れがち。特に沖縄にはゆるやか~な“島時間”が流れている。
土地勘もない中、果たして無事乗り継ぎ出来るのか!?そして無事体験時間に間に合うのか!?……と言うか、そもそも方向音痴な私が辿り着けるのか!?
焦燥感を覚えた私は、とにかく急ぐことにした。まだ時間に余裕はあるけど、歩いて6分程だけど、とにかく意地でも予定時刻のバスに乗るため、速足で向かったのだった。
ゆるふわな南国の風を切りながら、ビュンビュン進む。……狭まる視界。
にもかかわらず、1/3ほど進んだところで、我が眼球は、かわいらしい看板をチラリとキャッチした。
なんとも控えめな佇まい。漂い来る、そこはかとないおしゃれ感……。
なんとなーく好奇心が掻き立てられ、看板目がけ少々コースアウト。近づいて情報収集をする。
「へえ~この脇の小径の先に、カフェがあるのか~。来る時はまだ看板出してなかったのかな。全然気づかなかった。看板からすると、素敵なお店っぽいけど……」
カフェが三度の飯より好きな私は、素早く腕時計を確認。……バスの時間まであと30分程である。
「うわ~かなり微妙な残り時間だな……うーん」
そんな逡巡に対し、ここぞとばかりに理性が推参。『ほれ、はよバス停へ!開運するんでしょ?』と急き立てた。
なのに、足は意思を持ったように頑として動かない。
「そうか!よし。そこまで気になるなら行ってみよう!まあ、ちょっと急げばギリギリ大丈夫だろう。バスが遅れるかもしれないし」
私は、体に宿りし本能を即採用。吸い込まれるように小径へと歩み入った。
小径はクネクネとカーブしており、カフェらしき建物はなかなか見えなかった。
両脇には、気持ちよさそうに生い茂る南国の植物たち。
そののびのびっぷりに癒されていると、いきなり視界がスコーンと抜け、広々とした芝生の庭と、これまたどこまでも広くて高い天空が現れた。
「うわぁぁ……」
こちらの胸も一挙に広がる。
そしたらなんと、眼下には胸の空くようなマリンブルーの海までもが広がっているではないか!
「こ…ここは天国!?」
あまりにこの世離れした美しさに動悸が止まらず、うっかり昇天しそうに、うっとりと立ち尽くす……。
しかし、そうはさせじと「時間制限アラーム」が脳内でビコンビコン。
ハッと我に返った私は、ようやく姿を現したカフェと思しき建物へ足早に向かった。
……つづく
ここまでご覧くださいまして誠にありがとうございます😌
本文が長いため、つづきは次回となります(若干のネタバレですが、こちらのカフェにて出逢いがあります😊)
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