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モビリティ革命とリアルの狭間に#1 移動貧困社会とは何か?

こんにちは。
モビノワのnoteに来ていただいて、ありがとうございます。

今回は、地域交通課題を取り上げたシリーズ「モビリティ革命とリアルの狭間に」のご紹介です。

自動車整備工場が「クルマのメンテナンス」を通じて提供している「安心・安全な移動」という価値。
この自動車整備工場が提供する価値が、メンテナンスの域を飛び越えて、地域交通自体を支えることにつながらないだろうか?
全国に約9万か所ある自動車整備工場がネットワーク化したとき、そこには地域交通課題解決のための計り知れないパワーが存在するのではないだろうか?

そんなことを思っていたとき、モビリティジャーナリストの楠田悦子さんが書かれた「移動貧困社会からの脱却」という書籍に出会いました。そして、楠田さんにお願いし、地域交通課題と自動車整備工場の関係についてモビノワに連載いただくことになりました。

その連載、第1回。「移動貧困社会とは何か?」のご紹介です。
(モビノワ編集長 田中)



自動車整備業界とこれからの役割に向き合う経営者

「今日も免許返納をする高齢のお客様の対応をしていました。クルマがないと困る地域では、少しでも安全に長く乗り続けていただきたい」
「本当に移動に困っている世代は、クルマの運転ができない子どもや子育て層ではないでしょうか」
「クルマの高度化やそれを整備する人材の採用に四苦八苦しています」

顧客のクルマ移動に関わる問題や自動車整備の人手不足、高度化への対応の遅れなどを危惧する経営者は多い。特に国内全メーカーの販売・修理・車検・保険などを手掛け、地域に愛される店づくりをめざす会社ほど、この課題を何とかできないかと頭を悩ませる。

2027年に年間100万人 免許返納者数の将来予測

警察庁の「運転免許統計(2018年版)」によると、運転免許保有者数は2018年まで一貫して増加している。しかも75歳以上の保有者数は全体の成長率を上回る水準で推移しており、2018年は2008年比で約260万人増加。全体に占める構成比は6.8%にまで上昇している。
出典:警察庁交通局運転免許課 運転免許統計 平成30年版

はたして、運転免許返納者数は今後どのように推移するのか?国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来人口」および警察庁「運転免許統計」などのデータを用いて矢野経済研究所が推計を行った。この予測には自動車運転などのクルマの技術の進展の要素は入っていない。つまり現在の環境の変化が引き続くと仮定した場合の人口動態などをベースとした予測値であるが、なんと2027年には”年間で100万人”を超える返納者数になるという。すなわち、日本国内で年間100万人レベルの「交通弱者」が生まれる可能性がある。

昨今、高齢者による自動車事故のニュースが後を絶たず、「高齢者は免許証を返納すべきだ」という社会環境の変化もあって、75歳以上の運転免許証の返納者数は増加している。2018年は約30万人が自主返納に応じている。

運転免許証の自主返納が進み、さらに生産年齢人口が減る中で、高齢者の移動を確保する仕組みの構築が求められる。公共交通で移動がまかなえない地域では、クルマに安全に長く乗り続ける対策を考えたり、自由に移動できるクルマ以外の移動手段を早急に増やしたりする取組みが必要だ。

出典:内閣府のホームページ「平成30年度(2018年度) 交通事故の状況及び交通安全施策の現況」

自動運転は万能薬か?

鉄道、バス、タクシーなどに頼れる地域ですら、ドライバーの担い手不足や利用者の減少で公共交通網が脆弱になってきているところも多い。

移動の自由から、移動時間の自由へ。そして交通事故の削減、渋滞による不満とストレスからの解放。さらには高齢者の移動困難や物流クライシスの問題の解決など、自動運転レベル4や5につながる実証実験が国内外で始まってから、自動運転がすべての移動にまつわる社会課題を解決してくれる”万能薬”として期待されている。

しかし、その頼みの綱も雲行きが怪しい。

自動運転の実証実験は、これまでさまざまな形態で行われてきた。内閣府が主導する戦略的イノベーションプログラム(SIP)、経済産業省、道の駅を拠点とした国土交通省の実証実験などだ。

2023年6月時点で、日本国内ではゴルフ場で使用されている電磁誘導線とランドカーを用いた事例や、自動運転車両を用いて住民が乗り合わせるバスやデマンド交通を運行するサービス形態で実運行が始まっている。

現段階では、自動運転車両は…


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