恋か推しか憧れか
好きを口にするのは自己暗示のためかもしれない。
そう思ってしまったら感情の名前を説明できなくなった。
ある映画のワンシーンで「私のこと好きじゃないんだ」と言われ「もちろん好きだよ」と答える彼氏が彼女ではなく自分に言い聞かせているように見えた。
恋愛の好きを人に抱く事が少ない。
片手でことたりる恋愛の数しかしてないが、思い返せばどれも混じり気のない純度100%の好きかどうか怪しい。
そもそも1人を好み、交際人数2人のくせして前の彼女と別れて何年経ったか検討すらつかなくなる人間なのだから、感情の名前がわからなくなるのは必然なのかもしれない。
最近(といっても2年前だが)気になる人ができた。
その人は身長が高くて、細身で、かっこよくて、綺麗で、ノリがいい、おそらく年上の花屋の店員さん。
その人はいつからか花を家に飾りたいと思い、通いやすいお花屋さんを見つけるために何軒か行った花屋にいた。
その見た目は「花屋で働いてます」と言われたら瞬時に「ぽくない」と思ってしまうくらい、世間的にイメージするお花屋さんの店員さんとは似つかわしい見た目をしていた。
ただ見た目とは裏腹に?気さくで、話しやすく、2回目には自分の意見を一切聞かずに、買う花を一方的に決めてくる面白い人だった。(実際その花はよかった)
自分は誰もが見たことがあるであろう花よりも、珍しい個性的な花を求めに行く。
その人は自分の好みを把握してくれている。
ただでさえ、男1人で、自宅用で、変わった花ありますか?と言うのはハードルが高い。
だから、その人がいるとありがたいし、楽しいし、安心する。
たまに「私もそれ好き」とか「好みが一緒」とか言われるから困ったもんだ。
それから店員と客の関係性を考慮しても仲良くなったなと思えるぐらいになった。
もちろんそこには特別な感情などなく、1人の人としてかっこいいな、面白いな、と思う人だった。
けれどある日いつも通りの感情が違うやつに変えられそうになった。
それは「よかった」という一言のせいだった。
それは今までに、そしてこれからも聞くことのない「よかった」だった。
それは自分の人生において無縁な、映画でしか聞かないような「よかった」だった。
耳を疑った。きれいな二度見をした。目は合わなかった。
ツッコもうと思ったがスルーしてしまった。動揺して頭が回らなかった。それに他に店員さん2人もいたし。この日から2週間程、よかったを反芻していた。(最早今では空耳な気がしているし、深い意味はない気がする)
この一件からあまり見ない色の感情が混ざったが、時間が経てばいつも通りに戻った。というか戻した。
もちろん、いつも通りに戻すまでにハッピーな考えもした。自分の都合の良い妄想もした。
しかしそれを現実にできるかどうかは確かめる気はなかった。
自分の人生を考えた時に交際や結婚は足枷になる。だったら初めから何も起きない方がいいと思ってる。
何よりその人の隣に自分がいることが想像できなかった。自分のポジションは近所の年下の男の子がハマり役な気がする。
それに好きかと聞かれたら未だに正直わからない。
好きという感情は確かに存在するが、それは女性としてなのか、人としてなのか、店員としてなのかが自分にはわからない。
そんなことを考えていたら半年以上が過ぎてしまった。
そんなに難しく考えずに単純になればいいのだろうが、そんな簡単にできません。
そういう人間ですから。
その人の持つ答えを知る事はあるのだろうか。
知りたいと思えるようになるのだろうか。
正式な答えを持っている人はこの世に1人しかいない。
自分の解答用紙は白紙のまま。
自信を持って答えなければ意味はない。
答えを知るにはまず、三者択一を当てなければ。
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