2023年3月 読書
先日税金で買った本を読みました。図書館が舞台なので当たり前ですが、紙媒体のことを取り扱っている作品です。それをU-NEXTのポイントで購入して読んでいる状況に少しおかしさを感じていました。単行本4巻の、
「本のたくさんある美しい空間が好きなだけで」「本自体はそんなに好きじゃないのかもね」
のシーンが刺さってしまった。変人のステータスの獲得として買って、すっかり埃を被った日本三大奇書を見てしまっては、ファッションでやってる節は否めない。
そういう所から脱却するために、ファッションからにわかに進化するべく積み本を消化し続けている。今のところ義務でやってる感じもないので継続できている。引き続き頑張ろう。本読むのに頑張るとかないけど。
7,硝子のハンマー/貴志祐介
貴志祐介は、『悪の教典』から入って『黒い家』、『天使の囀り』などを読んだものだから、てっきり大手を振ってファンを公言できるような作家と認識していなかった。
失礼ながらこんなしっかりミステリー書けるんだと思ってしまった。本当に失礼だけど。男女タッグで密室殺人を暴いていく流れやたまにコメディ要素を挟んでくるのを見て、ドラマっぽいなと感じた。実際にドラマ化しているのだが。
サムターン回しやピッキングを「ジャッジアイズ」というキムタク主演のゲームで何回もミニゲームとしてやらされたので、なんとなく雰囲気を掴むことができていたし、主人公像もキムタクを想像しながら読んでた。まあドラマは大野智なのだけれど。
他の作品よりかは売れ線の要素を詰めてるような気がした。貴志祐介と言えば大概性描写を入れてくるが、今作は無かった。悲しいような、悲しくないような。
8,狐火の家/貴志祐介
今作も面白かった。前作の硝子のハンマーと違って短編が4編収録されています。
若干のネタバレだけど「黒い牙」という短編で毒蜘蛛を凶器に使っていた。貴志先生は妙に蜘蛛への執着がある。「天使の囀り」では射精して蜘蛛を食うイカれた描写が出てくるし、「黒い家」でも蜘蛛の悪夢を見る描写が出てくる。
主人公がやたら蜘蛛に詳しいことへの説明に、ディスカバリーチャンネルとアニマルプラネットを見ていると言及がされていて、実際その辺から思いついたんだろう。雀蜂が放たれた別荘から脱出するそのまんまのタイトルの「雀蜂」も出しているし、ずっとディスカバリーチャンネルとかナショナルジオグラフィックを見ているのかもしれない。
天使の囀りで、やけに細かいエロゲオタクが出てきたと思えば、実際に「痕」なんかをプレイしてたようで。
圧倒的なディテールもさることながら、なんとなく俗っぽさを感じるのが、惹き付けられる要因なのだろうと思った。
今作も性描写がない。防犯探偵・榎本シリーズは猫をかぶった貴志祐介が見られます。
9,ぼきわんが、来る/澤村伊智
岡田准一主演で実写映画化もされています。映画と同じタイトルだったら手に取っていなかったでしょう。
本作は3つの視点に分かれて構成されています。序盤は得体のしれない何かが襲ってくる王道ホラーの様相を呈していたけど、中盤はこれ結局人間が一番怖いってやつに持って行こうとしてる?となり、終盤に至っては怨霊との戦いが始まってほぼ呪術廻戦だった。
こういう書き方をするとつまらなそうに見えるけど、そこそこ面白い作品でした。最後がバトルになったのが陳腐に映っちゃったかな。
10,イニシエーション・ラブ/乾くるみ
なんと説明すべきか…。オチに至るまでの全てが前フリで、構造が面白いということですかね。「最後の2行は絶対に読むな」とか映画の宣伝にしても、「必ずあなたは2回見る」なんて大げさすぎて拍子抜けした。
映画の方はラストだけパッと見た感じ、すごーく丁寧に説明してるので、2回見る必要はない。というか正直原作読んでなくても過剰だなと感じると思う。もう言うまでもなく叙述トリックを用いている作品なのだけど、そもそも映像化すること自体に無理がある。本当に頑張ったんだとは思うけど。僕は絶対に原作をおすすめする。
読んでてここ要る?と思ってた所もオチを見て整理すると「あぁそういう…」と理解できるようになるけど、如何せん辿り着くまでが面白くはないので正直辛い。とにかくオチ全振りすぎる。
映像化不可能なんて大層に掲げている作品は大体叙述トリックだけど、天使の囀りのそれはまた別の問題なので面白い。映像化しても見たくないし。
図に乗って今年20冊は買ってしまって積み本を減らすどころかガンガン増やしまくってるのでしばらく買うのやめます。Kindle Unlimitedで我慢します。