国内外ドラマでのジェンダー論「ジェンダーで見るヒットドラマ」
本(ジェンダーで見るヒットドラマ)
最近流行りのジェンダー論を、国内外のドラマを素材に書かれた本です。筆者の治部(じぶ)れんげさんはフリージャーナリストで、メディアや経営、教育、さらにジェンダーやダイバーシティなどについて執筆しています。
題材となった国内外のドラマは韓国、アメリカ、欧州、日本で、個人的にもジェンダー関係の本は興味があるので、これまで何冊か読んだ延長の感覚で読み始めました。
最初は筆者が最もハマっていると感じられる韓国ドラマからで、そうなるとトレンド傾向からも最初は当然「愛の不時着」の登場となります。
韓国社会の経済格差や男尊女卑などの共通テーマを挙げながらも読み続けると、違和感が生じてきたのは、これってドラマのコアファンのエッセー、さらにいうと単なるリキが入った感想文ではと思ってしまいましたね。
少し休憩して冷静に考えると、今まで読んだジェンダー論の本が大学の先生など研究者が執筆したものは多かったので、当然その考察を裏付けるデータが表示されていましたが、当然今回は無しの訳です。
逆に先日読んだコラムニストの武田砂鉄氏の「マチズモを削り取れ」は、研究者のデータ分析とは対極のフィールドワークによる内容の糾弾で、これはデータとは違う次元のリアルな説得力があると感じました。
筆者もドラマへの溢れる愛情を述べつつも、ドラマで描かれる男女差別に対するジェンダーのあるべき姿を述べています。
正直、私自身が年を重ねるごとにドラマをほとんど観なくなったので、共感がイマイチ得られなかったというのが正直な感想ですが、さすがに日本のドラマは観ていたのでその章では共感できることがいくつかありました。
最初煮登場するヒット作の「半沢直樹」では、日本のドラマが描く女性像がステロタイプで、上戸彩演じる妻と井川遥演じる料亭の女将の区分であり、女性を良妻と娼婦に二分する古い女性像を踏襲したものと糾弾しています。
さらに阿部寛が演じた「結婚できない男」では、結婚しないのがアブノーマルとの偏見で、ドラマの基本であるタイトル自体を「結婚しない男」にすべきだと述べています。
また「きのう何食べた?」では、主人公のゲイのカップルに対する揶揄を、笑いに紛れさせてしまう現状に対する苛立ちを述べています。
まあジェンダー論を説く分析本というよりは、筆者のジェンダーに対する熱い信念を読み取った本であると感じました。