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マチズモ(男性優位主義)を糾弾する本「マチズモを削り取れ」

本(マチズモを削り取れ)

コラムニスト武田砂鉄氏のジェンダー考察の本です。流行りのジェンダーギャップやジェンダーバイアスなどの言葉を使わずに、敢えてマチズモ(男性優位主義)というキーワードを使って、世間に根強くはびこる男性優位の社会を糾弾しています。
毎章筆者の担当である出版社の女性編集者から、男性優位への異議を唱えるメールから始まり、その実態を調査して解決法を模索していきます。

二章では「電車に乗るのが怖い」。これは言うまでもなく女性の痴漢被害の実態への考察で、駅構内でのポスターなどでは、なぜか痴漢に気を付けましょうと女性への自己防衛の必要性を唱えていますが、なぜ男性側に痴漢防止の方策を取らないのか、なぜ女性に余計な負担を強いるのか、素朴ながらも怒りにも近い疑問を提示しています。
痴漢に対して、痴漢冤罪を持ち出して対論に持ち込むケースは、それまでの男性優位社会を維持し続けようとするマチズモの典型例だとも語っています。

九章の「体育会系という抑圧」では、八章の「甲子園に連れて行って」で登場する女子マネージャー(日本だけの特異な存在)が、従順な女性像がマチズモの定番であるならば、「言うことを聞く」存在に位置付けられた職業を見つけると、男性の自己都合な目線がエロとしての消費を試みるようになる。
これはどういうことかというと、かの女性編集者が「女子マネージャー」で検索した所、上位にエロコンテンツが列挙された驚くべき事実があります。

さらにマチズモの岩窟として体育会系がやり玉に挙げっており、人間同士の信頼は等しいベクトルで結ばれている必要性があるが、典型的は縦社会の体育会系では体育会系ではそうではないと断言。さらに科学的な根拠もなしに成功体験を単純に語り、同じことを後続に強いる人たちが沢山いるからこそ、そこにはどこよりも凝固したマチズモが存在していると結論づけています。

あと寿司屋の空間も取り上げられていて、頑なな職人気質の男性寿司職人は、具体的な創作物=寿司に向けられる喝采がある。そこにいる「俺」は何重にも守られている。つまり代表的な職人社会である寿司職人にも、浮世離れしたマチズモが長年蓄積していると糾弾しています。

サラリーマン社会においても、できる女性は人一倍苦労すると話す男性経営者がいることにも触れ、いかに苦労しなくてもいい組織を作るべきかに注力すべきであり、こうしたコメントは現状の男性優位社会を今後も継続したい本音以外の何物でもないと述べています。
どんな仕事するかではなく、どのような仕事場に「いる」かを優先させれば、男ゆえの居場所がある現状の労働生産性の悲惨も嘆いており、世に蔓延するマチズモを削り取る駆除作業は、簡単ではないと改めて実感しました。(下線部は本文より引用しました。)

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