漂流する高齢労働者を描いた映画「ノマドランド」
映画「ノマドランド」
メディアでも多く登場するこの映画、私もこの手のシブい作品は好きなので、映画館へ行って観てきました。ベネチア国際映画祭の金獅子賞受賞で、アカデミー賞でも作品賞候補になるなどの話題作です。
原作はノンフィクションの「ノマド:漂流する高齢労働者たち」という本で、実在する現代のアメリカのノマド(遊牧民)グループを追ったものです。
主人公の女性は、石膏採掘所があった町で暮らしていましたが、リーマンショックで採掘場がなくなり、企業城下町だった居住地は郵便番号さえも消滅してしまいます。
夫と死別後は、町を離れてヴァンのキャンピングカーを運転しながら、短期の仕事でお金を稼ぐノマド生活を送るようになります。そうした生活を送る内に、同じような生活のノマドグループの集会にも参加するようになりますが、その主催者がいうには
「ノマドは高齢者が多く、悲しみや喪失感を抱いている人が多い」
「別れる時はさよならではなく、またどこかで。そういうとまた会える」
主人公の年齢は61歳でノマドになったのは経済的理由からですが、グループの中には人生や仕事の価値観の違いなどからドロップアウトしてきた人もいます。もはや個人の価値観は人それぞれであり、他人がコメント知る立場にはないというのが共通の認識です。
それでも老いても生活の糧は日々必要であり、最初に主人公はアマゾンの集配場でのピッキング作業をすることになります。
国土が広くモータリゼーションが発達したアメリカでは、こうしたノマドワーカー(日本で解釈する所のポジティブなそれではなく)が多く、日本においても高齢になりながら短期の仕事をやらざる得をない現状は、先日読んだ「老後レス社会」とも、驚くほどの共通点があります。
かつての豊かな国だったアメリカの現状がこれですから、日本やヨーロッパなどでも察して余りある現状であると改めて実感しました。
この映画が問いかけるのは人生観そのものであり、文学が人生のカタルシス(かつての若い頃の懐かしい表現ですが)であると同様に、映画も全世界的な高齢化が進む社会のそれぞれの人生のカタルシスなり得ると、この映画を観て再度認識した次第です。
P.S.ノマドライフで一番気になっていた排泄行為も、何となく理解できました(笑)
(写真は公式サイトより引用しました)
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