バリ山行
バリ山行のレビューそういえば書いてなかったな、と思って書きます。
(もう結構前に読み終わってた)
結論から言うと、めちゃくちゃ面白かった。
面白すぎて一気に読んだ。
今年の芥川賞は二作選ばれ、今作はそのうちの一つ。
簡単に紹介すると、山登りの話と、リフォーム会社の話。
登山はちゃんとした事ないのでその面白さとかはちょっとわからない。
私のは登山というより物見遊山程度。なんなら軽いハイキング。
「バリ」はバリエーションの略で、バリ山行とはバリエーション登山という事らしい。
あらかじめ設定された登山道ではなく、あえて道無き道をゆく。しかも一人で行ったりする。
怖い。
え、怖いよね。怖くない?
クマとか会ったらどうするんだろ、って思う。
バリをやってる会社の先輩と、主人公の話がメインで物語が展開していく。
主人公の仕事はリフォーム会社で、私も今は新築だけだがリフォーム会社にいた経験もあるので、首がもげるほど激しくうなづく事ばかりだった。
いやもうほんと、これですよ。
現調行って、下見積を依頼して、見積書作って、便利ちゃんまでやって……。
何度もプラン出しても失注する事なんてザラ。
他決することもしょっちゅうだ。
そんなむなしくもやるせない日常業務の描写がリアルすぎて、内情を知ってる人からしてみると本当に切実に胸が痛い。
物語の主要な人物の一人として、妻鹿(メガ)さんという人が出てくる。
この人がとにかくすごい。
いやもうほんとに凄い。
この人欲しい。
弊社に欲しいわ。
雨漏りの現場調査があって。
雨漏りの部位特定ってちょっと難しいのよ。
降水試験しても全然特定出来なかったりする。
それをメガさんはなんと、「1.5リットルのペットボトル2本で」特定してしまう。
これがめちゃくちゃカッコイイ。
こんなん見たら惚れてまうやろー!ってなる。
(なるのは関係者だけかもしれないが)
これは映画化して欲しい作品だった。
もし妻鹿さんをやるとしたら誰かなってずっと考えてる。
ぱっと思い浮かんだのは西島秀俊。
あとは中村倫也も有りかなーとか、考えるだけでワクワクする。
あとこの作品は文学的な表現が多くて何度か辞書を引いた。
「神社の木々の若い葉叢(はむら)」
とか、
「植村部長の眉間のしわは再び深く彫られて、日を追う事に黝(くろ)ずみを濃くしていった」
とか、聞き慣れない言葉がちょいちょい出てきて、新しい言葉に出会う喜びを教えてくれた。
それから、私はいつも本を読み終わったあとブックカバーを外して本棚に収納する時に、裏表紙を見てみる(そこで初めて見る)のですが、今回、ラストで大感動したその気持ちのまま裏表紙をみたものですからまんまと「!!!!!!!!」となった。
本屋さんで本買うとカバー付けてもらうじゃないですか。読み終わるまでまずはずさない。だからきっと私みたいな人、結構いるんじゃないかなー。
なんか、凄く嬉しかった。
裏表紙必見です!
本を読む楽しみというのは色々あって尽きない。
今作は改めてそれを感じた。
私は本を読む人生で良かったと、しみじみ思った。
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