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38.社員が自主的に行動したくなる「仕掛学」

記事を読んでいただきありがとうございます。
前回は、「一人に頼らないリスク管理の仕組み作り」について、お伝えしました。

施設長として、部下に指示を出しても、なかなか思い通りに動いてくれず悩むことがあると思います。
組織論の観点から言えば、部下は上司の指示に100%従うべきですが、部下もロボットではなく感情を持った人間です。
その感情が指示に対して「やる・やらない」を決めてしまうのです。
特に組織的に動いていない職場では、感情に支配される部下が多い傾向があります。
そこで今回は、部下の感情が働く前の「本能」に訴えかけ、社員を動かす方法についてお話しします。
それが「仕掛学(しかけがく)」です。

仕掛学とは
「仕掛学」をご存じでしょうか?
仕掛学は、大阪大学大学院経済研究科の松村教授が提唱したもので、人が本能的に「つい」行動してしまう仕掛けを活用する学問です。
例えば、ゴミ箱の上にバスケットゴールを取り付けると、人はゴミをそのゴミ箱に入れたくなります。
また、不法投棄が多い場所に小さな鳥居を設置すると、不法投棄が減るといった事例もあります。
このように、心理や本能を利用して人を動かす仕組みを「仕掛学」と呼びます。
詳しく知りたい方は、松村真宏著『仕掛学 人を動かすアイデアのつくりかた』(東洋経済新報社)をぜひ読んでみてください。


仕掛学を使った営業成功例
数年前、当社のある施設長が自施設の利用者数を向上させたいと考えていました。
当時、会社は「チャレンジ900」という目標を掲げており、3つの施設が「月の利用延べ人数を900名以上にすること」を目指していました。
しかし、一人ひとりの能力は高いのに現状に満足していた社員たちは、この目標を共有しつつも行動には移してくれませんでした。
施設長は何度も話し合いや激励を試みましたが、社員たちの反応は鈍いままでした。
「このままでは他の施設に先を越されてしまう。」と危機感を抱いた施設長は、一つの「仕掛け」を導入しました。
横軸に日数、縦軸に延べ人数を示したグラフを作成し、目標の900名を赤線で強調。
そのグラフをスタッフルームに貼り出し、毎日の利用人数を記録していったのです。
このグラフのポイントは、利用者が1人でもいれば右肩上がりになる仕組みです。
累計人数を示しているため、利用者が少ない日があっても線が下がることはなく、社員たちに「達成可能感」を与えました。
するとどうでしょう。
社員たちは「ゲーム感覚」で900名達成のためにいろいろなアイデアを出し始めたのです。
そしてわずか3か月で目標を達成したのです。
施設長は、当時「グラフが社員の行動を変えた」と振り返っていました。


最初は全く動かなかった社員も、たった一枚のグラフをきっかけに自主的に行動するようになりました。
仕掛学を取り入れることで、感情に左右されることなく本能的に動ける環境を作ることは可能です。
皆さんの施設でも一度「仕掛学」を活用してみてはいかがでしょうか。


まとめ 直接的な指示ばかりではなく、社員が行動したくなるような仕掛けを作ってみる