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銀行員時代

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銀行員時代の振り返り。僕が本当の意味で自立するまで。
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銀行員時代 法人営業部編⑥

銀行員時代 法人営業部編⑥

退職するにあたって、まずは職場の上司への報告が必要となるが、銀行では上司を捕まえるタイミングが思いの外難しい。銀行の営業現場における中間管理職は、日中は基本的に担当者と一緒に外回りに出て部内にいないか、部内にいる時も部長・副部長からの指示への対応に追われている。外回りから帰ってくる夕方になっても、各担当者からの報告を受けたり部長も交えて案件協議を行なったりと、常に忙しいのだ。そんな上司が忙しくして

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銀行員時代 法人営業部編⑤

銀行員時代 法人営業部編⑤

いつからか琴葉は頻繁に家に来るようになった。週のどこか一日は僕が家に帰るとピンク色の髪をしたギャルがリビングの椅子に座っていた。どうやら哲誠とは学生時代の元恋人関係にあり、東京で再会して以来会う回数が増えたらしい。最初はこれまで接したことのない人種に一歩引いていたが、彼女とは話を重ねるうちに自然と意気投合した。彼女は誰とでもすぐに仲良くなれる稀有な社交性を備えていて、出会ったばかりなのに不思議と彼

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銀行員時代 法人営業部編④

銀行員時代 法人営業部編④

「やっぱり、もう少しだけ時間くれる?明日までには返事するから。」シェアハウスの物件契約を進める直前に僕は健友にそう言った。シェアハウスの話がいざ現実的になると、本当にこのまま寮を出ていいのだろうかと不安になったからである。寮を出て健友と哲誠と住むことになれば、おそらく今の生活に戻ることはできない。近く僕も銀行を辞めることになるだろう。そう考えると急に心が臆病になり、僕は自分がした決断を今一度躊躇し

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銀行員時代 法人営業部編③

銀行員時代 法人営業部編③

僕に声をかけてきたのは健勇と哲誠だった。僕らは自由が丘で再会し、駅最寄で美味しいと評判のPIZZA17で看板メニューのマルゲリータを頬張りながら、互いの近況報告をした。僕にはその辺のサラリーマンと同様職場の愚痴以外に話すことはなかったが、二人は僕より先に銀行を退職しそれぞれの道を歩んでいた。健勇はIT大手企業への転職を経て政府関係の仕事に就き、哲誠は健勇が紹介したITベンチャーのインターン生として

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銀行員時代 独立遊軍武蔵の会合

銀行員時代 独立遊軍武蔵の会合

支店研修を終えて一人一人がばらばらになった後も、独立遊軍武蔵の五人は連絡を取り合い、GWや年末年始といった休暇の間には何度か会合を開いた。車で地方観光に行き旅先でひたすらお酒を飲むだけのたわいも無い会合であったが、五人が集まるだけで「頑張ろう。」と自分を思い返すことができた。最初五人で集まった時には誰が一番早く銀行を辞めてもおかしくない状況であったが、会を重ねるごとに一人また一人とまずは関西組の三

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銀行員時代 法人営業部編②

銀行員時代 法人営業部編②

配属後の業務内容について振り返る。配属後すぐに担当を任され営業マンとして現場に出される場合もあるが、支店の時と同様にあおぞら法人営業部は大型店ということもあって、部内で行う下積み業務の期間が長かった。僕が実際に担当を持ち始めたのは配属して1年以上が過ぎてからである。その頃には残りの同期二人は担当を任されることもなく、次の部署へと異動していた。閉じられた空間から外に出るまでの道のりが長く、その道中で

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銀行員時代 法人営業部編①

銀行員時代 法人営業部編①

支店研修を終えると、いよいよ法人営業部への配属となる。僕は支店の時と同様、頭取を輩出したことがある都内の大型店に配属となった(以下、"あおぞら法人営業部"とする)。配属同期は僕を含めて三人。一人は理系採用の男性、そしてもう一人は国際採用の女性だった。この並びを見て僕は「この三人の中で一番長くここに残るのは自分だな。」とすぐに悟った。

配属初日の話をしよう。僕らは支店配属の時と同様一つ上の先輩と連

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銀行員時代 支店研修編④

銀行員時代 支店研修編④

支店の一員として溶け込んでからは、僕は銀行に対して何の疑問も抱かなくなっていた。つまり、思考が停止し完全な銀行の一兵卒になったのである。無駄で非効率な雑用も率先してやったし、先輩や上司との飲み会にも全て参加した。仕事は退屈だったが、職場の人に会うことが不思議と楽しみであった。

今振り返ってこの時期に戻りたいかと聞かれれば、僕は「戻りたくない。」と即答する。しかし、女性社会の中で過ごした支店研修時

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銀行員時代 支店研修編③

銀行員時代 支店研修編③

彼女が支店に来なくなって以降、気のせいかもしれないが周りが妙に優しくなった。おそらく支店長が上席会議で新人の扱いを見直すように話したのだろう。支店の評価には新人教育という項目があり、退職に至った場合にはそれが減点対象となるのである。「これ以上辞めさせるわけにはいかない。」という支店全体の空気感がちょっとしたことから感じられた。

その影響は仕事内容にも現れた。先輩の補助が付く形ではあるが窓口に出る

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銀行員時代 支店研修編②

銀行員時代 支店研修編②

長期休暇を終えて支店に顔を出すと、職場の話題は彼女で持ちきりだった。「どうして来なくなっちゃったの?」「まだ数ヶ月しか経ってないのに。」「この程度でダメになるならこの先どうせやっていけない。」等々、みんなが口にする言葉はどれも彼女への思いやりに欠けるものだった。僕も人のことは言えない。確かに仕事は退屈そのものであったが、逆に楽すぎてストレスもほとんどなく、何がそこまで彼女を追い詰めたのかいくら考え

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銀行員時代 支店研修編①

銀行員時代 支店研修編①

集合研修後、独立遊軍武蔵はばらばらになった。3人は関西、2人は関東へ。そして、僕は都内のある支店に配属された。ここでは、あおぞら支店(仮称)と言っておこう。個人富裕層も顧客として来店するような、いわゆる大型店である。

あおぞら支店への出勤初日。僕は見慣れぬ駅の改札前で配属同期の女性を待っていた。改札を通る一人一人が同じ職場の人かもしれないという妙な緊張感の中、どうも落ち着かなかったことを覚えてい

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銀行員時代 集合研修編②

銀行員時代 集合研修編②

お待ちかね、研修内容全般について記憶の限り振り返ってみよう。

無難に書き記す所感文
1ヶ月間の集合研修を振り返った時に真っ先に思い浮かぶのが「所感文」である。頭取、役員、人事部長、支店長等々お偉いさんの講話の後には決まって全員が所感文を書かされた。誠失礼な話ではあるが、それぞれの講話で彼らがどんな話をしていたのかは全く覚えていない。おそらく銀行員としての心得的な話をしていたと思われるが、今なお銀

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銀行員時代 集合研修編①

銀行員時代 集合研修編①

退職してからいつかは振り返ろうと思っていた僕の銀行員時代。まずは入行してすぐの集合研修について。確か研修内容とかあんま具体的に書くとNGだったからちょっとぼかさないとな。って言ってもほとんど覚えてないんだけど。

〜入行前〜

大学4年の冬、部活を引退してようやくストレスフリーな生活を送れると思っていたが、僕はどういう訳か引退した後もストレスある生活を送っていた。入行前の宿題として英語学習が課され

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