【映画感想】 『ママと娼婦』 La Maman et la Putain - 学生ぶりに観た歓喜の220分
我らが日仏学院(東京館)で上映中の、「ジャン・ユスターシュ映画祭」に出掛けてきた。大好きだったRive Gauche(本屋)が無くなってしまい悲しい限りだが、日仏学院は何十回通っても胸踊る空間である。
『ママと娼婦』は、大学時代にジャン=ピエール・レオー目当てでDVDで観たものの長すぎて見切れなかった作品だった。
今回、日仏学院のシネマテークで上映されると知り、速攻でチケットを購入した。
一言で言えば大傑作すぎた。
監督ジャン・ユスターシュの実体験をベースにいくぶんの虚実を混ぜ込み、えっ?そうなる?と未知数なストーリーに展開していく。
主人公の青年(自称"倦怠至上主義")は無職で、歳上のバツイチ女性宅に居候している。ある日、性に奔放な看護師の愛人を作り、居候先に連れ込んで3人で川の字で寝るシーンなんて想像を超える。
220分、ずっと喋り続けるジャン=ピエール・レオー。この人に長尺を喋らせたらピカイチの胡散臭さ(褒めてる)な彼が適役すぎて。
パリのカフェ(ドゥマゴのあの席、座ったことあるなと思いながら)で語り散らかすところなんて、ゴダールの『男性・女性』みがある。
そしてブレッソンの『白夜』を演じたヒロイン、イザベル・ヴェンガルテンの存在を台詞の伏線に含ませていたりなど、見所の多いこと多いこと。
人によってはおフランスすぎる多様な恋愛模様に「はっ?」ってなる方もいらっしゃる気がするが、
わたし個人としては「わたしのための映画ですか?」なくらい結構グサリと刺さるストーリーだった。恋多き人生の人間にはどこかズシッとくると思う。
本作は1973年カンヌ国際映画祭で審査員特別グランプリを受賞したものの、監督はその後数作を撮ったのちに、頭がおかしくなって自害してしまっている。
スキャンダラスな内容には違いないが間違いなく世界各地で認められ、尊敬された作品。
かのレオス・カラックスもこう言っている。
わたしのブログで恒例の「あかるくたのしいフランス映画紹介」とはならないかもしれないが、どう考えても最高の作品だった。
オールタイムベスト、更新。
『ママと娼婦』は今週末の土曜、日曜とも日仏学院で上映予定だそうなので、ご都合合う方はぜひ。
あー楽しかった。
Emoru