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フランス映画シリーズ

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フランス映画を熱く推しています。あかるくたのしい作品からダークなものまで。
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#映画感想

【映画感想】 『美しき仕事』 Beau Travail - クレール・ドゥニの隠れた傑作

ああああああああ 良い映画を観た。 すごい映画を観た。 クレール・ドゥニってこういう鑑賞後感あるんだよなああああ だから好きなんだよなあああ 捻りも変哲もない直訳の邦題だけど、ロゴすら美しい。 ロゴデザイナーの端くれとして惚れ惚れするタイポグラフィ。 そしてそして、主演はあのドニ・ラヴァン。 そう、カラックス青春三部作(『ポンヌフの恋人』『汚れた血』など)で有名なあのドニ・ラヴァンですよ!!!! おっさんになってるかと思いきや、いやおっさんの役なんだけど、身体はキレ

【映画感想】 『白と黒の恋人たち』 Sauvage Innocence - 久々の "ガレルらしさ" に歓喜の120分

ああそう、これがフィリップ・ガレルなんだよね!!! もの哀しさが残るぶっきらぼうなカット、 不安と切なさをほんのわずか残す残響、 情緒の入り込む隙間もない硬派な映像美に、そのはずなのに胸が締め付けれられる不思議な世界観………… くちっとしてよく締まった口元をもつ、目立たないけどなぜか魅力的な女優陣、これはガレルの他作品にもよく思うんだけど圧倒的に "ガレル主観の好み" が全面的に反映されている、そうかこういう女性がタイプなのかガレルは。 ガレルを観ているとたまに「魅力的

【映画感想】 『ママと娼婦』 La Maman et la Putain - 学生ぶりに観た歓喜の220分

我らが日仏学院(東京館)で上映中の、「ジャン・ユスターシュ映画祭」に出掛けてきた。大好きだったRive Gauche(本屋)が無くなってしまい悲しい限りだが、日仏学院は何十回通っても胸踊る空間である。 『ママと娼婦』は、大学時代にジャン=ピエール・レオー目当てでDVDで観たものの長すぎて見切れなかった作品だった。 今回、日仏学院のシネマテークで上映されると知り、速攻でチケットを購入した。 一言で言えば大傑作すぎた。 監督ジャン・ユスターシュの実体験をベースにいくぶんの虚

『地下鉄のザジ』 Zazie dans le métro- フランス映画の沼へようこそ

わたしが初めてフランス映画を観たのは2015年、この作品だった。 人生で三度目の映画体験だ。そう、三度目。渋谷のBunkamura ル・シネマでたまたまかかっていたのだが、チケットの買い方も知らなかったくらいだ。 感想は「え。まって。映画って、こんなに面白いの?」 それまで映画といえば、幼稚園時代に見た『千と千尋の神隠し』の人が豚になるシーンで泣き、『ファインディング・ニモ』で魚の大群がこちらに向かってくるシーンで泣き、良い思いを一度もしたことがなかった。だから17歳になる