骨髄移植❌敗血症❌ICUで点滴入れ換え⁉️😱

骨髄移植の翌日、発熱した。CRPは20以上で、感染を強く疑う。

発熱...... 正確には、動いた直後の激しい悪寒戦慄とその直後に39度を超える発熱以外に症状はない。

動いた時? それって、血行動態に関与してる? (種明かしは↓)

骨髄移植の前に行われる、「骨髄破壊的前処置。」これは、抗がん剤や放射線で造血能も免疫も壊滅させることで、身体から自分の骨髄やその他の移植に邪魔な細胞を滅する。血液の細胞を作れなくなるから、当然免疫も無くなっている。

こういう時は、免疫反応で繰り出される熱以外の症状が出ないことは多い。

さ、ここで感染。ガンガン強力な抗菌薬を入れて、免疫力が戻るまで乗り切るしかない。

fast forward. 

点滴を繋いだ時や毎朝のCV採血後に生食を流(フラッシュ)した時など、直後に悪寒戦慄に襲われる......! カテーテルに菌塊ができていそうだ。(カテーテルの先が心臓のすぐ手前まで入っているのならば、動いて脈や血圧が上がった時にフラッシュに似た菌塊付近の流量増加が影響していてもおかしくない。)

この時、既に移植後一週間程度。食事は十分取れていないが、高カロリーは、前日から一時停止されてた。

即ち、中心静脈カテーテルからの投与が必須の薬剤は切れた。他は末梢血管からでも入れることが可能。

そして、中心静脈カテーテルが感染の温床であり、元凶の場合、即刻抜く必要がある。それ以外に完治させるのは難しい。(腐った雑巾を体内に埋め込み、それが悪さをした場合、抗菌薬でいくら血中の細菌を殺しても、雑巾を排除できない限りはそこから菌が血中に出続ける感じ。)

この時、毎日の輸血無しでは危険なほど血球が減る状態だ。血液が止まるのに非常に重要な血小板は、輸血をしても、1万程度。中心静脈カテーテル(CV)を入れるなどの処置には3万以上(できれば5万)は必要とされる。

それほどまでに上げるほど、血小板輸血をいくつもいくつも入れることは不可能。輸血製剤はどれも基本、常に不足している。そこまで病院にあるはずもない。そして、そのような大量の血小板を1人の患者に入れては、何人もの輸血を必要とする他の患者の分がなくなってしまう。(病院に無いというか、国レベルでそんな余裕がないと表現すべきかは分からない。)

末梢血管にルートを確保し、CVを抜くのが現時点での最善手。しかし、血管はボロボロ。細くて脆い血管に、医師はルートを入れられない。

残された手段は、ICUでのCVの入れ替え。

感染予防を万全にして、無菌病棟からICUに移動。そこで新たにCVを入れ、感染しているそれを抜く。

血小板が足りない状態でそれをやれば、感染源は除去できても患者は出血が止まらず窮地に陥る可能性もある。

じゃあ、為す術無し?

いいや。

CVを入れる直前に本日二回目の血小板輸血を繋ぎ、それを速めの滴下で入れ切る。入れ切った直後ならば、血小板数は一時的に閾値に近づく。

このウィンドウを逃さず、サッと首の大血管を穿刺、CVを入れるというプラン。

なんと、エコーで見ると内頸静脈(首の太い血管)が一本詰まってる。通常ならば、左右に一本ずつあるが、今感染原のカテーテルが入っている血管しか使えない。大腿にも血管はあるが、移植では感染リスクが高すぎて、まず使わない。

残された手段は一つ。

今感染原のカテーテルが入っている所に、もう一本新しいCVを入れる。それが成功したら、感染原のカテーテルを抜く。

点滴が必須の状況で、ルートが一切なくなっては、100%危険。

ならば、あの手この手で工夫して、可能な限りの最善手を模索するしかない。

え、細菌の温床になってるカテーテルと新しいカテーテルが接触したら、新しいCVにも菌がつかない?

それは当然の疑問だろう。そのリスクはある。

しかし、カテーテルから菌が周り、重症化したら死亡、カテーテルがなく、抗菌薬も他の治療薬や輸血も入れられなくなっても、待っているのは死......

現在の最善手には、リスクは有る。それでも、それをやらない方がよっぽどハイリスク。

もちろん、感染中のカテーテルから速めの滴下で血小板を落とし、悪寒戦慄に見舞われる。即ち、血中に菌が舞ったのだろう。

その後、カテーテルが詰まらないように流す生食はひとまず流さないようにお願いした。以前、同様のカテ感染時、詰まったように生食が流れないCVに力任せにフラッシュした日の晩に敗血症性ショックでICUに入った。菌塊を血中に飛ばしたのかもしれない。

今はその時より更に免疫力が無い。再び同じことが起こるリスクは最小限に抑えたい。

プラン通り、麻酔科医がCVを入れ、古いそれを抜く。

念入りに圧迫し、出血を抑える。

大丈夫。

大量出血を防ぎ、CVも無事に入れ替えられた。

これで、N95を装着して無菌室を出たことや、感染原のカテーテルと接触した新しいカテーテルが感染しなければ、窮地は乗り切れた。

いずれにせよ、今のカテ感染の切迫した窮地からは脱出できた‼️

実に様々な工夫を加えることで、様々なリスクを回避し、起こり得る合併症を未然に防いでくれたことに感謝しかない。

その後、感染症はみるみる良くなった。

ベッドから動くのも厳しかった状態から、自らシャワーに入れる体調に改善したのはあっという間。カテーテル以外の場所には菌が落ち着いていなかったのだろう。

ちなみに、私が同日投与をしていただいた血小板は、誰か別の人の優先順位を落とすことで確保されている。その誰かは、輸血できず、出血等の合併症のリスクが下げられなくなったことを意味する。

運良くその誰かは、血小板が少なくとも合併症を発症しないかもしれない。処置を翌日に回しても問題なかったかもしれない。基本的には、その可能性がより高くない人が選択されただろう。

しかし、翌日まで合併症が回避できない可能性だってある。

もちろん、私が中等度リスクの時には、より逼迫した状況下にある人が優先されている。私もまた、誰かのためにリスクを許容する立場でもある。

この一連の経験は、私の血管に対する意識を変えた。

このような事態は、末梢血管がしっかりしていればそもそも存在しなかったリスクだ。そう、血小板の輸血が増えたり、出血覚悟で大血管を穿刺したり、他の感染症に罹患するリスクを犯してまでICUでCVを入れ換えたり、感染したカテーテルと同じ血管にもう一本のCVを挿入し菌塊を飛び火させるリスクを負うことだって、血管が有れば不要なリスクだった。

もちろん、院内の別の誰かの血小板輸血が一日遅れることもなかった。

この経験の前までは「ただ、ルート確保が難しい人」だった私は「ルート確保が難しいことで命を脅かされた経験がある人」に変わった。

当然、ここまで工夫を凝らしてくれたことには感謝しかない。それでも、「末梢血管は生命予後を左右する!」と脳裏に刻まれることになったのは事実だ。

ここでのリスクを再度まとめる。

1) 血小板不足の中、首の大血管を穿刺するリスク

2) 免疫がない状態で、自室の無菌室を出て、無菌病棟すら後にし、別の階のICUに行くリスク

3) その時、複数のスタッフと接触するリスク

窮地に立たされた時、実に様々な工夫をすることでしか救えない命がある。その命を救うために、多くのスタッフの奮闘がある。そして、場合によっては、誰か別の人の犠牲の元でのみ成り立つ可能性もあるのかもしれない。

それでも、どれもそもそも末梢血管が有れば生まれなかったリスクだ。

目の前の患者が頑なに刺されることを拒んだ時、何故その人が刺されることを嫌うのかを考えて欲しい。そして、直接本人に尋ねて欲しい。

本当に、ただ痛いのが嫌なだけなの?

実はスタッフの育成に積極的に貢献したくとも、それが許さない状況にあるの?

それとも、実際に命を危うく落としかけた経験にルート確保が深く関わっているの?

若い患者を目の前にした時、その人が今まで元気で、練習台になることを許容できる身体なのか、それとも長期間の治療を有し、今後も様々な処置が必要であるのかも考えて欲しい。運動し、血管の再生や発達が起きうる体調なのかも合わせて考えて欲しい。

若者だからこそ、余命が長い。それを縮めない意識も忘れてはならないのではないだろうか。

誰であろうと、他者のことを全て理解しているなんてことはないだろう。知らないことなど有って当たり前。

私ならば、是非とも質問して欲しい。

むしろ、知ろうとしてくれることが本当に嬉しい。

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KG
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