Jクラブのリアル~来シーズンに向けて、今すべきこと~(Off the pitch talk 第22回〜第24回まとめ)
皆さん、こんにちは。神村です。
これまで「予算」や「プロフェッショナル」といった概論をお話してきましたが、今回はより現場に近いテーマとして、2021シーズンに向けて、今サッカークラブがどのようなことを議論しているのか、サッカークラブの経営陣はどのようなことを考えているのかについて、皆さんにもお伝えできればと思っています。
言わずもがなですが、2020年は激動の一年でした。2021年が明けた今、私たちにとって大切なのは、2021年はどのような年になるのか、あるいはどのような年にするのか、というのを考えていくことです。是非、本稿を通じて、皆さんの企業や仕事がどのように変わったのかを振り返り、本年に活かしていってほしいと思います。
(本稿は「Off the pitch talk」第22~24回の放送内容のまとめです。今回はインタビュー:三浦さん(@Twitter)、文責:神田さん(@Twitter)でお届けします)
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#22: https://stand.fm/episodes/5fccaed81522a79ca42e99e8
#23: https://stand.fm/episodes/5fccb220d454553db4d8a5bd
#24: https://stand.fm/episodes/5fccb6601522a73ccc2e9a6e
クラブ経営のリアル:コロナ以前の”当たり前”が通用しなくなった
皆さんはコロナの感染が拡大して以後、リアルの会場(スタジアム等)でスポーツを観戦しましたか?
我々サッカークラブにとっても、お客様がスタジアムにどれだけ見に来てくれたかというのは、興行収入的にとても重要な要素の一つです。コロナ禍という状況下においても、感染予防対策にご協力頂きながら、Jリーグの試合を見に来てくれた方々には、この場を借りて多大な感謝を申し上げます。
2020年を振返ると、緊急事態宣言が発令され、Jリーグそのものが中断をせざるを得ない状況でした。その後、リーグは開幕したものの、最初は無観客で試合が行われてきました。さらには、入場者数制限を設けるなど、スポーツビジネスの関係者全員が必死に創意工夫をしてきました。
しかしながら、私を含めたサッカークラブの関係者は想像以上に厳しい現実を目の当たりにしました。例えば、5,000人という上限を設けても、実際には3,000人しかスタジアムに来ていただけなかったこともありましたし、上限が10,000人に緩和されても、これまでの様にスタンドがたくさんのファンで埋まることはありませんでした。
2019年シーズン平均入場者数よりもはるかに少ない「上限人数」すら埋まらないという現実があったのです。
「今までスタジアムに足を運んでくれていた方々は一体どこに行ってしまったのだろう…?」という疑問が生じました。
コロナにより皆さんの自粛意識が根付いたのか、そもそもサッカーへの関心が薄れてしまったのか等、2021シーズンの戦略を立てる上では、幅広い視点で観客数が減った原因分析をしなくてはなりません。仮説&検証の反復をしていきたいと思います。上記の問いに対してどこまで愚直に分析できたかによって、2021シーズンの集客結果は大きく変わるでしょう。
そして、サッカークラブにとって、もう一つ重要な売上収入の源となるスポンサー収入も大きな課題を抱えています。当然ながら、スポンサー収入というのはスポンサー側である企業様の業績に依存します。コロナの影響で業績が悪い企業が多いのが実情です。スポンサー側の経営が厳しいことを重々承知の上で、果たして「2021シーズンも何卒スポンサーをお願いします」と企業様にご提案できるのか、お客様にどのようなリターンを還元できるか、これまで以上の工夫と新たなチャレンジが必要になってきます。
2021シーズンに向けて、コロナとどう向き合うか
今も尚、感染が収まらないコロナウイルスは、明日突然なくなるものではありません。つまり、2021年はコロナが既にあることが前提となって経営を行わなければなりません。言い換えれば、経営においてコロナを言い訳には出来ないということです。
経営者は、「2021シーズンの経営方針」を社内外問わず、より多くの人に発信することが大切だと思います。そこには、コロナを前提として何を取り組むか、どこまで成長するかを明確に盛り込むことが必要です。「コロナだから大変だ・・・厳しい・・・」という言葉はもう聞き飽きています。
この環境下で何を目指すのかという決意表明が重要なのです。
安全対策が最も重要であることは間違いありません。
しかし、どこまで徹底しても、「絶対にコロナにはかかりません」と言い切ることはできません。その現実に立って、自信をもって「観に来てください」と胸を張って堂々と言えるか、、、このメッセージの出し方一つをとっても「経営の姿勢」が問われますし、ファン・サポーターにも敏感に伝わるものです。
政府を中心に、経済対策とコロナ対策の両立を謳っていますが、政府のみならず、個々人や企業側もしっかりと考えていかねばならない課題でしょう。
各サッカークラブにおいては、積極経営に舵を切るクラブと、保守的に経営するクラブの二極化が進むと思います。私が所属するモンデティオ山形では、「2019年レベルに戻す」を社員・スタッフ全員の目標として一丸となって取り組みます。
2021シーズンに向けた、働き方のニューノーマル
コロナによって、組織のあり方やマネジメント方法についても大きく変わりました。例えば、リモートワークは緊急事態宣言が出た昨年4月前後から一気に社会全体に広がりました。その後、緊急事態宣言が明けてからは、
①:以前と同様、毎日出社して働く会社と
②:今もリモートワークを前提に働く会社の二極化が見られるようになりました。
私の見解では、リモートワークの潮流は今後も普及すると思いますが、リモートワークによって新たな課題も見えてきたのが事実です。
一人で仕事をする時間が長くなることで、孤独感を感じたり、あるいは普段の社員同士のコミュニケーション機会が奪われたり、仕事とプライベートのメリハリがつかなくなったりと、社員によっても課題は様々です。
マネジメント職の人は、部下の動きが見えなくなったり、何をアドバイスすればいいのかがわからなくなっているかもしれません。これら新しい課題を個人任せにしないことが重要です。
「企業知」にしてしまう、企業として、新しい働き方に適したルールをどんどん取り入れていく企業が伸びていきます。
まさに走りながら考える、朝礼暮改も厭わないスピード感・臨機応変的な経営にかじを切る企業が勝ち組になるでしょう
これら「働き方に関する課題」をうまく解決することができることが、優秀な人材採用において重要なウェイトを占めるようになることも自明の理です。
(実際、スポーツ業界でも副業を解禁して、首都圏から人材を確保する動きも既に始まっています。)
まとめ:予測不能な中でも、先手を打っていく
最後に、まとめです。コロナという未曾有の経験をし、日本経済、なかんずくスポーツ業界は多大な影響を受けてきました。私自身、答えが見えない中で、頭を悩ませた場面が数多くありました。
残念ながら、未だコロナ終息の兆しは見えていません。ですが、本年は昨年延期された東京オリンピックなど、日本経済にとって非常に重要なイベントが控えています。皆さんも、オリンピックを待ち望む気持ちと、無事に開催できるのかという不安が入り混じっているかもしれません。先行きが不透明な中ですが、先々の事を見据え、手を打っていければ、きっと昨年以上の結果が得られると信じています。
皆さんの会社や組織も、本年どのような方針で進むのかを理解した上で、日々の業務に取り組んでみてください。
(文責:神田(@Twitter))