【エッセイ】ハロー、あの日の私!
実家にて、ガサゴソと探し物をしていたら、不意に「あの日の私」が現れた。
いつかの仕事帰りに、急に思い立って買ったメモ帳だった。
「あの日の私」はコーヒーを飲みながら、自分の内面を可視化したくなったようで、ペラリとページをめくるとそのときの心情がびっしりと綴られていた。
多分深い意味はないと思うけれど、時間まで書いているところに、ちょっと自分らしさを見る。
えっ、2012年なんていったら、ここに収められているのはもう十年以上も前の「私」じゃないか…!
せっかく見つけたので、探し物の手を止めて思わず読み込んでしまう。
十二年前の私は、仕事のことや恋愛のことや諸々そのとき抱いていたものを、ボールペンでひたすら書き込んでいた。
なるほど、この頃からもうすでに私は紙とペンを、常に持ち歩く生活をしていたのだな。
そういえば、仕事のカバンにこのメモ帳を忍ばせて、気まぐれに気持ちを吐き出すということをしていたような気がする。
曖昧な記憶の向こうで、「あの日の私」がメモ越しにこっちを見ている。
部活動の大会引率の狭間。
日にちで見るに、恐らく時期としては夏休み中のことだ。
そうなのよね、本当にあの頃は休みなんてあまりなかった。長期休暇中には、大抵試合や大会があって部活動の仕事が入る。
いろんな気持ちを抱きながら、真夏の道を歩いた日のことを少し思い出す。
そうそう。練習試合や設備の問題で、他校の人がきてそれの応対をしたこともあったな。
日にちは不定期ながら、「あの日の私」はひたすらにいろんな言葉を並べている。
その頃の記憶が、ほぼ遠のいている身からすると、まるで他人の日記を見ているような気がしてかなり興味深い。
飲み食いしたものまでメモしてるの、我ながら何だかかわいい。笑
そして何で値段まで書いたんだろう、面白い。多分何も考えてはいない。
本当に変則的な周期で、「書きたい」と思ったときにカバンを探って、気ままに書いていた気がする。
推敲もへったくれもない、ボールペンでの一方通行とも言える殴り書きは、なかなか切実で迫力があってなかなか興味深い。
内容自体は取り立てて大したことを書いているわけではないけれど、「ああ、そんなこと思っていた気がするな」という、過去との出会い直しが楽しい。
「いまいち!」に、ニヤリとした。そんなことまで書かんで良い。
17時に完全下校が嬉しくて、感嘆符を使いがち。書いたときのテンションが大変わかりやすい。
そんな時間に帰ること、滅多になかったもんなあ。
勤務時間自体は、十七時半くらいまでだった気がするのだけれど。
カフェミスト。知り合いが前に飲んでいるのを見て、「なにかよくわからんけど」頼んだらしい。
もはやびっしりと書かれた本文よりも、ここの一言がおもしろい。
四月末ということは、新年度が始まって夢中で駆け抜けて、もうすぐゴールデンウィークだとそわそわしているような頃合いだろうか。
そういえばこのくらいのとき、しばらくスタバのチャンククッキーにハマっていた気がする。
不定期謎日記メモは、この日を最後に止まっていた。
その最後のメモの内容が、個人的になかなかよかった。何か本を読んだ後、感想を書いた果てで思うことがあったようだった。
なんだ、私はこの頃から「したいこと」は変わっていないではないか!紆余曲折は経ているけれど、九年も前から、私は今いる場所を目指していたのだ。
嬉しくなったし、「今」は継続して現在にもこんなに影響しているのだという不思議に、頭の真ん中がわあっと熱くなった。
「あの日の私」の夢に触れ、そっと背中を押されるような気がした。
メモの残りは、ほんの数ページ。
今日の日付と一言メモでも添えて、また元あった場所に片付けておこうかなと、思う。
ところで、メモには「続きを書かねば…」と結ばれているが、一体何を書いていたのだろう。全く記憶にない!えー気になるー!