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デジタル給与を受け取るときのメリット・デメリット💴

こんにちは。
メタップスHDでre:shineと人事労務を担当しているフリーランス・イケダ(@m_ike)です。

法的には2023年4月に解禁となっていた給与のデジタル払い「PayPay・au・楽天・リクルートMUFGビジネス」の4社が厚生労働省に指定資金移動業者の申請中でしたが、ついに今年の8月にPayPayが認可を受けました。

まずは、ソフトバンクグループ各社の従業員を対象に「PayPay給与受取」を希望する者に対してPayPayアカウントへの給与支払いを開始予定で、2024年内にすべてのPayPayユーザーへのサービス提供を見据えているそうです。

また、申請済みの3社も審査中で、今後も指定事業者は増えていくと見込まれています✨

キャッシュレス決済や送金サービスの多様化が急速に進むなか、給与のデジタル払いは人事労務担当として興味をひかれる話題でもあります🤔

そんなわけで、今回は『デジタル給与』について書いてみました!


賃金(給与)は現金払いが原則!?

デジタル給与の話の前に、今では当たり前になっている給与の銀行振込による支払いですが、これも会社が適切な手続きを行っていないと違法になるってご存じですか😲

労働基準法では賃金支払いの原則が次のように定められていて、通貨(日本で強制通用力のある貨幣)で本人に直接手渡しが原則です👇

1.賃金は通貨で支払うこと(通貨払の原則)
2.賃金は直接労働者に支払うこと(直接払の原則)
3.賃金は全額支払うこと(全額払の原則)
4.賃金は毎月1回以上、一定の期日を定めて支払うこと(毎月1回以上、一定期日払の原則)

兵庫県労働局_賃金支払いの原則について

銀行振込のための手続きは次の通りで、これらを満たしていれば銀行振込によって給与を支払うことが可能となります👌

  • 従業員の同意を得ること
    労働組合や従業員代表との労使協定や給与規定での定めの他に、個々の従業員の同意を得る必要があります。入社時の雇用契約書などに『賃金の支払方法は本人の同意に基づき口座振込による』というような文言で記載されていることが多いです。

  • 従業員の指定する本人名義の預金口座に振り込まれること

  • 賃金の全額を所定の支払日に払い出しができること

なお、会社は『金融機関の指定』はできず(ただし推奨はOKです)、一方的な指定は労働基準法違反となります。

昔は、給与袋に現金を入れて手渡されていた給与や賞与。給与袋が立ちました!なんて話は、今では想像もできないですよね😆

給与をデジタル払いにするには?

次に、給与をデジタル払いをするには、どんな手続きが必要なのか厚生労働省のリーフレットによると👀

厚生労働省_賃金のデジタル払いを導入する にあたって必要な手続き(雇用主向け)

『労使協定の締結』と『個々の従業員の同意を得る』は銀行振込と同じ項目ですが、内容がかなり異なるようです。

デジタル払いの同意・不同意を従業員一人一人が選択できる

厚生労働省の同意書様式例では、次のような確認事項へのチェックや、従業員の同意・不同意が選択できるようになっています✅

厚生労働省_賃金のデジタル払いについて_同意書の様式例

指定資金移動業者口座とは聞きなれない言葉ですが、厚生労働省から賃金のデジタル払いについて認可を受けた〇〇ペイなどのアカウントのことで、現時点ではPayPayマネーアカウント(給与受取)のみを指します👆

また、デジタル払い分の金額を決めることもできます。

厚生労働省_賃金のデジタル払いについて_同意書の様式例_抜粋

例えば 

  1. 月給30万円の場合
    ・デジタル払い 10万円
    ・銀行振込 20万円
    ※実際には社会保険料や税金など控除された手取り額からデジタル払いの10万円を差し引いた残額が銀行振込という指定になるでしょう。

  2. 給与手取り額が一定額(20万円)以下の場合
    全額デジタル払いで受け取り
    ※PayPayでは給与受け取りアカウントの残高上限は20万円となっていますので、これを超える額の指定はできないと思われます。
    ※なお、残高上限額を超えた分はあらかじめ指定した銀行口座に自動送金されます。

支払方法の提示、デジタル払いだけでは違法になる

同意書の様式にある通り、賃金の支払方法の選択肢には、デジタル払い以外にも銀行口座や証券総合口座への賃金支払いも併せて提示しなければなりません。

例えば、会社が現金かデジタル払いの2つだけを提示した場合や、形式的な選択肢の提示で実態としてはデジタル払いを強制している場合は、労働基準法違反となってしまいます。

デジタル給与のメリット・デメリット

給与をデジタル払いすることのメリットとデメリットを考えてみましょう🤔

受け取る側の従業員のメリットは、現金チャージの必要がなくなります。
また次のような使い分けが可能になります。

  • 生活費用はデジタルで、貯蓄や口座引き落とし分は銀行振込で受け取る

  • 本業の給与は銀行振込、副業の給与はデジタルで受け取る

デメリットとしては、会社が採用した指定資金移動業者(〇〇ペイ)が自分の使っている電子マネーでない場合は、そもそも利用できないこともあり得ます……😢

次に企業側のメリット・デメリットです。振込手数料は銀行振込に比べて低く設定されるようですが、1人の従業員に2つ以上の支払いを行う場合は、銀行・デジタルそれぞれの手数料が発生しますので、トータルの振込手数料は増えることになります。

ただ、パート・アルバイト従業員向けにデジタル給与払いを活用することで、都度払いや複数回払いの対応が検討でき、採用時の魅力づけになる期待もあります✨

制度導入時の業務量の増加はありますが、従業員への福利厚生の一環と考えれば、メリットがデメリットをしのぐと考えられるかもしれませんね!

従業員はデジタル給与を望んでる?

エン・ジャパン株式会社が、エンバイトを利用するユーザーを対象に「給与の支払い方」に関するアンケートを実施し、希望する給与の支払方法は?という質問に対して次のような回答となりました👀

希望する給与の支払方法は「口座振り込み」が最多。若い年代ほど「手渡し」を希望する傾向に。 「デジタル払い」を希望する人は10%。

エン・ジャパン_『エンバイト』ユーザー1100人に聞いた「給与の支払い方」調査

調査期間が2024年6月25日~7月24日と、PayPayが認可を受ける前だったこと、給与のデジタル払いがまだ本格的には始まっていないことなどから、希望する人はまだ少ないように感じます。

今後、デジタル払いが給与の支払方法の選択肢として広く認知されていくことで、この数字がどう変わっていくのか、人事労務担当者のイケダとしては関心を寄せております😊

デジタル給与のメリット・デメリットなども念頭におき、給与を受ける側の従業員の方は、勤務する会社がデジタル払いを導入した際には、しっかりと説明を聞き、デジタル払いに同意するかどうか、金額をいくらにするか、また自分にとって使い勝手のよいデジタルマネーであるかどうかなどもポイントに検討してください!


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