またひとつスキが増えた日
息子が父になった。
桜の木の下で臨月のお腹を抱えたTちゃんとの写真が送られてきたのはつい最近のこと。
早朝、夫を送り出し、ちょうどスマホを片手にnoteの街をウロウロしていた頃、息子からLINEが入った。
赤ちゃんの横で
安堵の表情を浮かべるTちゃんの写真と
『産まれたみたいです。』のメッセージ。
想像はしていたけど
案外、こんなものなのね…
意外と落ち着いている自分を不思議に感じる。
産まれたみたいです…の
…みたい
のところでクスッとなった。
寝て起きたら
いきなりパパになってしまった。
おそらくそんな感じなのだろう。
数日前、Tちゃんが入院するとの連絡が来た。
これまでにも赤ちゃんの体重増加が少ないようで総合病院で検査は続けていたのだけど…
産んでも問題ないだろう…
そういう段階まではようやく辿り着いた。
担当医の先生と話し合い、いろんな状況を想定して予定日より二週間ほど早い入院となった。
昨年、妊娠報告を受けた時には
息子たちが電話の向こうで引いてるのがわかるほど、涙で声が震えた。
ある種の興奮と感動で気持ちが込み上げてきたことに自分でも驚いた。
私の横で夫はもう、涙でぐちゃぐちゃになっていたけど…
あの時に比べたら随分落ち着いている。
安堵の方が大きかったからかもしれない。
Tちゃんが無事でよかった。
赤ちゃんが元気に産まれてくれた。
それと同時に
息子が父になったのだ。
そう思ったら、声を聞かずにはいられなくなった。
まだ早朝であることを確認してから
出勤まで、まだ余裕はあるはず…と。
少しの迷いがありながらもスマホを手に取る。
思ったより早く息子に繋がった。
一瞬の間を置いてから
「おめでとう!」
そう言いながら、
この言葉を直接伝えたかったんだ…って
ことに気付く。
息子も
照れくさそうに
でも嬉しそうに
「ありがとう」
母子ともに無事でよかったことを喜びあった。
わずか5分ほどだったけど、それで充分。
お互い離れているからかもしれないけど、なんとなく声のトーンで表情がわかる。
息子の声を聞いたからだろうか…
いろんな思いが自分の中で少しずつ溶け出した。
よかった…
ひとりでじっくりいろんな思いを噛みしめた。
午後になって
今度はTちゃんから
家族アルバムのアプリで
何枚かの写真と動画が送られてきた。
今度は赤ちゃんの声も一緒に。
ドキドキしながら
動画の再生ボタンを押す。
どこかで聞き覚えのある声。
動画の中の赤ちゃんの声を聞いた途端、自分の中に眠っていた感情がじわじわと溢れ出した。
白い産衣に包まれた赤ちゃんが
小さな手を
小さな口を
懸命に動かしながら元気に泣く姿に自然と込み上げてきた。
赤ちゃんのほっぺを指先でそっと撫でながら何やらTちゃんが語りかけている。
スマホの画面越しに見るその光景が
なぜかリアルにそして自然に。
出産という大仕事を成し遂げたTちゃんがとても穏やかな表情を浮かべていた。
柔らかさと逞しさまでそなえて…
息子には
守るべき人が
もうひとり増えた。
明日がはじめての面会日だという。
娘との対面に何を感じるだろう。
我が子の重みを腕に感じた時
息子は何を思うだろう。
それを想像するだけでこんなにもあたたかい気持ちになれる。
庭のハナミズキの蕾もひとつひとつ開き始めた。
春の息吹と新しい輝きに感謝しよう。
最後まで読んで下さり、ありがとうございます。