「会話が苦手」というもったいない勘違い:『聞く習慣』感想
私は人と話すのが苦手だ。そう思っていた。
最近、私と同じく人との会話に苦手意識のある職場の後輩と「誰とも話さずできる仕事ってないかな〜」「工場勤務とかですかね」という話で小さく盛り上がった。
円滑に業務を進めるためには多数の人とのコミュニケーションできちんと意思疎通を図ることが大切だ。そこもまあ難しいところだが、私の場合それ以上に、業務に必要のなさそうな当たり障りのない雑談が苦手である。
しかしこのたび、いしかわゆきさんの『聞く習慣』を読んで、自分がどうやら勘違いをしていたらしいと気がついた。
私はそこまで人と話すのが苦手ではないのかもしれない、と思えたのだ。
『聞く習慣』には、「話す」ことより「聞く」ことに重心を置くと会話がしやすくなるということが書かれている。
本の中で紹介されているさまざまな「聞く」コツをおさえて会話に臨めば、もっと楽に、もっと楽しく会話ができるようになる。
きっと「人と話をする」って、すごくたくさん得られるものがあるよね。苦手だからと人との会話の機会を避けて避けて避けまくるのは、さすがにちょっともったいなくない?と思わされた。
私はこの本を読んで、少し意外なことだったが、そもそも自分が好ましく思っている相手には自然と『聞く習慣』で紹介されている聞く姿勢が取れているみたいだと気づくことができて、自己肯定感が上がるのを感じた。
別に心がけているわけではなく、なんとなく取れている行動、という感じである。それらがこの本の中でやさしく言語化されており、なるほどと思った。
たとえば、忘れっぽいので友だちに会う約束の前には話したいこと、聞きたいことを整理してあらかじめメモしておくことがある。会話中に出てきたおすすめの品はその場ですぐに検索したりメモしたりしていることが多い。
これ、私もやってる〜!と思ったことである。
他には、友だちのハマっているジャンル自体に正直さして興味がなくても(ごめんねすぎる)、友だちが「どういうものに心動かされるか」に興味があるので、会えたときにはそのジャンルの話をインタビューするようなつもりで聞くことがある。
そして深掘りしていければ、友だちが楽しそうに話してくれたことに嬉しくなるし、結果的に自分はそのジャンル自体にも興味が湧き、新しい世界をほんの少しでも知れたという楽しさが得られる。
これは『聞く習慣』を読んでみて、そういえば自分のスタンスって言語化されるとこういうことだな、と気づけたものだ。
私が会話全般が苦手!と思い込んでいたのはおそらく半分勘違いで、つまり私がこれまで抱えていたのは、会話に対する苦手意識ではなく、おそらく単純にやり取りをする相手に対する苦手意識なんだろう。よく考えてみれば、相手が良ければ会話が楽しいのは当たり前のことだった。
もちろん、相手にとって自分が話しやすいタイプかどうかは、聞いてみないことにはわからないけれど。
冒頭に述べた後輩との会話もまさにそうで、たぶん仕事上は苦手な相手と接することが多く、会話するのがしんどいと感じるだけなのである。このかわいい後輩ちゃんとも、ささやかではあるがいつも何かしらお話しては盛り上がれている気がするもの。
ただまあ、これは自分が楽だというのがわかっていて自然とそうするようになったのだが、普段から1対1のサシでしか会話しないですね。たぶん多くても自分含めて4人までとしか会話の場にいて話せないです。難易度が高くて黙り込んでしまう。
なんと『聞く習慣』のほんと序盤、第1章の会話というもののハードルを下げるコツの、一番最初が「サシで話す状況をつくる」である。
正直、アッッッわかる〜!!!でしかなかった。こういう部分もあり、『聞く習慣』を1冊読み終えて考えてみたところ、そこまで苦手ではないのかもしれないが、一応たしかに、私も会話苦手族なのだと思う。
そして残念ながら、これまで苦手だと思っていた業務に関係のなさそうな雑談をするとき、苦手な相手と会話をするとき……『聞く習慣』に書かれている「聞く」コツの逆、つまり「人の話を聞く姿勢として控えたほうがいいこと」もおそらく自然にやっちまっているんだなということもわかってしまった。
自分の「早くこの会話終わってほしい」が素直に出た結果こうなるのか、と思ってしまい、ちょっと笑えた。
また『聞く習慣』は、読むことで自らを省みる他に、「この子はとても人の話を聞くのがうまい」と特に感じる友だちのことを思い出させてくれた。逆に「聞かれる」側になったときに、なるほど相手がこういう姿勢で来てくれるから、私はするすると気持ちよく話せてしまうんだな、と思えるところがたくさんあった。
その子が自然とそうしているのか、努力してそうしているのか、そこまではわからないが、私も相手にとってそうあれるように、『聞く習慣』を定期的に読み返して反省する機会を設けるようにしたいと思う。
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