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* * * 嶋田青磁|詩人
Text嶋田青磁 ぼくらが羽ばたける場所、そこは天使たちの棲まう場所。 生も死も、男も女も、なにもかもが曖昧に揺らめく菫色の領域—— このたび、鳩山郁子先生のコミック『羽ばたき Ein Märchen』に捧げるエッセイ・詩の小品集を制作させていただくという大変に光栄な機会をいただきました。鳩山郁子先生の作品、とりわけ『羽ばたき』には、について読者に深く考えさせるようなきっかけが散りばめられています。 皆さんは、できることならずっと夢の世界に住みたい、と思った
初夏は幻のように過ぎ去り——まるで生きとし生けるものすべてがじっとわたしたちを見つめているような暑さのなか、本展は幕を上げる。 この熱暑はまぎれもなく、今は遠き〈春〉が産み落としたものである。春は、冬の間ねむっていた生命がいちどきに噴出する季節であって、そこで生まれた命は一直線に、だが静かに夏へと向かってゆく。 本展メインヴィジュアルのひとつ《私の知らない林》に描かれている、煙る記憶のなかに通り過ぎる子どもたち。その幻想は、汽車の窓から眺める景色のように、あっという
日常を生きていて、ふと「ここにはいない誰かさん」を思うことがある。 その「誰かさん」がほんとうに存在するのか、何者なのか——そういった問いはたぶん、あまり意味がない。でも、小さいとき「誰かさん」はいつも側にいて、もっと身近に実感していた気がする。 宮沢賢治『小岩井農場 パート9』は、こうした精神世界の友だちを唄った詩ではないかとわたしは思う。 影山多栄子氏はこの詩に現れる「ともだち」ユリアとペムペルを、人形作品としてみごとに表現されている。初夏に差し掛かる頃に降る
TextSeiji Shimada 底本|Renée Vivien, Du Vert au Violet (Paris : Alphonse Lemerre, 1903) * 上写真|佐分利史子カリグラフィ作品 *
TextSeiji Shimada ポール・ヴァレリー|Paul Valéry(1871-1945) * ポール・ヴァレリー ——ナルシスの見つめる詩—— 「風立ちぬ、いざ生きめやも」——宮崎駿の映画『風立ちぬ』で引用された詩句、これはポール・ヴァレリーの詩『海辺の墓地』に書かれたものである。ヴァレリーといえば、わたしたちには詩人というよりも、残された厖大なノート(カイエ)や『精神の危機』などの著作から、「思考する人」というイメージが強いかもしれない。けれど、彼に
TestSeiji Shimada マルスリーヌ・デボルド=ヴァルモール| Marceline Valmore(1786-1859) ヴァルモールはジョルジュ・サンドの誕生からさかのぼること18年前、フランス北部の町ドゥエで生まれた。彼女は女優であり、同時に19世紀ロマン主義文学を代表する女性詩人だった。同時代のヴィクトル・ユゴーや批評家サント=ブーヴに高く評価されていたが、ロマン主義の流行が去るとともにその名は忘れ去られることとなってしまう。 彼女の父親は紋章絵師
嶋田青磁 Seiji Shimada|詩人・フランス文学修士課程在籍 →note 学部在学中にピエール・ルイス『ビリティスの歌』に出会い、詩の魅力に憑かれる。19世紀末の頽廃・優美さを求め、研究の傍ら、noteを中心に詩作活動中。 初めまして、嶋田青磁と申します。 オンライン上に突如現れた幻想のモーヴ街、その3番地であるMAUVE ABSINTHE BOOK CLUBで司書を務めております。訪れる皆様にとって知的な探求のきっかけとなるべく、フランス文学を中心に、詩の新訳