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LIBRARIAN|嶋田青磁の小部屋

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モーヴ・アブサン・ブック・クラブの司書、嶋田青磁の小部屋。詩人・フランス文学修士課程在籍。専門は19世紀フランス詩。学部在学中にピエール・ルイス『ビリティスの歌』に出会い、詩の魅…
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#文学

鳩山郁子オマージュ展 《羽ばたき Ein Märchen》 |嶋田青磁|ぼくらが羽ばたける場所はどこか?

Text嶋田青磁  ぼくらが羽ばたける場所、そこは天使たちの棲まう場所。  生も死も、男も女も、なにもかもが曖昧に揺らめく菫色の領域——  このたび、鳩山郁子先生のコミック『羽ばたき Ein Märchen』に捧げるエッセイ・詩の小品集を制作させていただくという大変に光栄な機会をいただきました。鳩山郁子先生の作品、とりわけ『羽ばたき』には、について読者に深く考えさせるようなきっかけが散りばめられています。  皆さんは、できることならずっと夢の世界に住みたい、と思った

鳩山郁子オマージュ展 《羽ばたき Ein Märchen》 |永井健一|夢と現実のあわいにて

Text|嶋田青磁  どこからか羽音が聞こえる。遠くなったかと思えばまた近くなる。  これは夢——なのだろうか?  堀辰雄の小説を原作とするコミック、鳩山郁子『羽ばたき Ein märchen』に捧ぐ本展。永井健一氏による作品がやわらかな秋風とともに菫色の塔へと舞い降りました。その絵画世界は、わたしたちに夢の残り香を伝えながら、そっと語りかけてきます。  ジジの閉じた瞳の奥に広がるのは、どんな風景なのでしょうか。遠い少年少女時代に置いてきたはずの景色が、雲間からのぞ

鳩山郁子オマージュ展 《羽ばたき Ein Märchen》 |鳩山郁子《2》|小さな夢の痕跡

Text|嶋田青磁  暗闇に浮かび上がるのは、小さな夢の痕跡。  少年はたしかにそこにゐて、夢を見ていたのです。  今秋の『羽ばたき Ein märchen』オマージュ展に際し、鳩山郁子氏による4点のイラスト作品が発表されます。菫色の小部屋には、まるでジジ扮する怪盗ジゴマが残していったかのような、アイテム(手がかり)の数々。不在の少年たち、その輪郭を、これらの”証拠品”を頼りに解き明かしたくなりませんか。  夢を駆け抜ける少年のポケットには、いつもさまざまな宝物が入

鳩山郁子オマージュ展 《羽ばたき Ein Märchen》 |鳩山郁子《4》|純白の少女が見る夢は

Text|嶋田青磁  真っ白なレースとフリルをなびかせて、軽やかに街路をゆくのは  ひとりの少年によってつくられた架空の少女——  『羽ばたき Ein Märchen』において、怪盗の時間たる夜を生きることを余儀なくされたジジ。そんな彼が、明るい日の下で堂々と街をゆくために思いついたのが、少女装でした。怪盗ジゴマはなんにだってなれます。たとえかつての友だちでも、今しがたすれ違った涼やかな目元の少女がジジだとは気づきません。  今回、鳩山郁子先生が新たにイラスト化され

Du Vert au Violet|架空のアブサン酒〜Paper Sachetシリーズ《モダンラベル》

TextKIRI to RIBBON  「架空のアブサン酒」とは、リキュールに様々な薬草が調合されているように、「文学・アート・モードを調合したコンセプト作品」のこと。アブサンの頽廃世界を様々な手法で表現してゆきます。  本記事でご紹介するのは、の「モダンラベル」バージョン3種。  先にご紹介した、画家・金田アツ子さまのロマンティックかつ硬派な植物画を配した同シリーズ(下写真)2種と共に、テイストの違いを楽しみながら、ご覧頂けましたら幸いです。  オリジナルのペーパー

Du Vert au Violet|架空のアブサン酒〜Paper Sachetシリーズ《植物画ラベル》

TextKIRI to RIBBON  「架空のアブサン酒」とは、リキュールに様々な薬草が調合されているように、「文学・アート・モードを調合したコンセプト作品」のこと。本イベントでは昨日までにと《小壜シリーズ》をご紹介してきました。 上写真架空のアブサン酒 上写真架空のアブサン酒 *  本日ご紹介するのは、画家・金田アツ子さまの香り高い植物画がラベルとカードに配された《架空のアブサン酒〜Paper Sachetシリーズ》全2種。オリジナルのペーパーサシェにポプリが封

SEIJI|ご挨拶―青萌え立つ季節に―

嶋田青磁 Seiji Shimada|詩人・フランス文学修士課程在籍 →note 学部在学中にピエール・ルイス『ビリティスの歌』に出会い、詩の魅力に憑かれる。19世紀末の頽廃・優美さを求め、研究の傍ら、noteを中心に詩作活動中。  初めまして、嶋田青磁と申します。  オンライン上に突如現れた幻想のモーヴ街、その3番地であるMAUVE ABSINTHE BOOK CLUBで司書を務めております。訪れる皆様にとって知的な探求のきっかけとなるべく、フランス文学を中心に、詩の新訳