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LIBRARIAN|嶋田青磁の小部屋

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モーヴ・アブサン・ブック・クラブの司書、嶋田青磁の小部屋。詩人・フランス文学修士課程在籍。専門は19世紀フランス詩。学部在学中にピエール・ルイス『ビリティスの歌』に出会い、詩の魅…
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ruff個展《菫色少年秘密倶楽部》|巻頭詩|嶋田青磁|菫色の領域

* * * 嶋田青磁|詩人

ruff個展《菫色少年秘密倶楽部》|薬草室の秘密

 箱庭、それは大人の手がけっしてとどくことのない秘密の場所。そこに棲まうのは、人形のように美しい少年たち。ruff氏の描く彼らは、みな菫色の憂いをヴェールのごとく纏っているように見える。彼らを結びつけているのは〈秘密〉。菫色少年秘密倶楽部 (Mauve Boys Secret Club)のメンバーは、学園という城の中で、彼らだけの聖域をつくりあげているのだ。  ところで、ご存知だろうか。わたしたちが花を見つめるとき、花もまたこちらを見つめているということを。花々は、箱庭に踏

三人展《シェイクスピアの妹たちの部屋》|ティルーム|花モト・トモコ

 お茶をする時間、というのは特別なものだ。それがお気に入りのティセットや調度品に囲まれたわたしだけのティルームであればなおさら。まるでカフェ・ラテにのったミルクのように、日常からふわりと浮いたひとときである。  花モト・トモコ氏による優雅で可憐な作品は、午後のやさしい陽光に照らされたティータイムを思わせる。《Favorite Sweets》は、まるでパティスリーの華やかなショーケースを覗いているかのよう。色とりどりのスイーツをひとりじめするのももちろん素敵だけれど、なんだか

三人展《シェイクスピアの妹たちの部屋》|書斎|Miss Moppet Dolls

 書斎とは、わたしたちにとってどんな場所か。隠れ家、仕事部屋、あるいは読書室? なんにせよ、書斎という場所と〈孤独〉の間には決して解けないリボンの結び目が存在する。書物を愛するわたしたちが理想とする書斎、そこにあるべきものは、例えば重厚なヴィクトリアン・スタイルの書棚、カーテンの向こうから聞こえる風の音、書き心地のよい筆記具——など、挙げはじめたらきりがない。  でもきっと、いちばん必要なのは、静けさだ。室内に漂う菫色の憂いと、思考をやさしくかき混ぜる静けさ。ヴァージニア・

二人展《空はシトリン》|永井健一&影山多栄子|春から生まれしもの

 初夏は幻のように過ぎ去り——まるで生きとし生けるものすべてがじっとわたしたちを見つめているような暑さのなか、本展は幕を上げる。  この熱暑はまぎれもなく、今は遠き〈春〉が産み落としたものである。春は、冬の間ねむっていた生命がいちどきに噴出する季節であって、そこで生まれた命は一直線に、だが静かに夏へと向かってゆく。  本展メインヴィジュアルのひとつ《私の知らない林》に描かれている、煙る記憶のなかに通り過ぎる子どもたち。その幻想は、汽車の窓から眺める景色のように、あっという

二人展《空はシトリン》|影山多栄子|白く、やさしい幻想

 日常を生きていて、ふと「ここにはいない誰かさん」を思うことがある。  その「誰かさん」がほんとうに存在するのか、何者なのか——そういった問いはたぶん、あまり意味がない。でも、小さいとき「誰かさん」はいつも側にいて、もっと身近に実感していた気がする。  宮沢賢治『小岩井農場 パート9』は、こうした精神世界の友だちを唄った詩ではないかとわたしは思う。  影山多栄子氏はこの詩に現れる「ともだち」ユリアとペムペルを、人形作品としてみごとに表現されている。初夏に差し掛かる頃に降る

Under the rose個展|薔薇の花影でワルツを

 あたたかな光に包まれた薔薇のつぼみが、次々にほころび始める季節。  花影に耳を澄ますと、小さなワルツの調べが聴こえてくる……  アクセサリーブランド・Under the rose様の新作が、このたびオンライン個展《Hidden Garden Waltz》にて発表されます。  そして、本展はUnder the rose様の記念すべき初個展。ここヴィヴィアンズ百貨店において、作品と皆さまを繋ぐ「リボン」として、わたくし青磁にによる案内が、少しでもお役に立ちましたら光栄です。

SEIJI|書を捨てずに町へ出よう《1》|四国・四谷シモンドール巡礼記

 皆様は、四谷シモンというドール作家をご存じだろうか。  おそらく、現在日本にあるドール文化、球体関節人形というジャンルがここまで大きくなったのは、彼の創作活動のおかげであると思う。20世紀には寺山修司や唐十郎などの演劇と結びつき(実際、四谷シモン氏自身も女形として芝居に出演されていた)、どことなくアングラな雰囲気を漂わせていた「人形」ジャンルも、今では数々の大手メーカーが「キャストドール」として製品化し、専門のショップがいくつもあるなど、だいぶ明るい印象にはなった。いわば四