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LIBRARIAN|高田怜央の小部屋

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モーヴ・アブサン・ブック・クラブの司書、高田怜央の小部屋。詩人・翻訳家。「詩のある生活」を通して、ともに「言葉とはなにか?」という謎を探りませんか。
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#モーヴ街

LEO|聖なる紅茶を一杯、一杯、一杯

 友人が友人を亡くした。長年の友人だったようだ。それをわたしは人づてに知った。  なにか声をかけたいものの、日本語はむずかしい。故人はご家族ではないから、お悔やみ申し上げます、というのは違う気がするし「ご愁傷さま」に至っては使い慣れていないとなんとなく悪口のようにさえ感じる。そうでもないか。でも、どうしたらいいんだ。せめて、しばらくはご無理のないように……と言いたいけれど、その訃報を受けてどうやら追悼文の原稿とか対談企画とか雑誌特集の準備とかがいっぺんに舞い込んできているら

LEO|ご挨拶ー他者としての自己ー

 こんにちは。詩人・翻訳家の高田怜央です。このたびミストレス・ノールにお誘いいただき、モーヴ街3番地「MAUVE ABSINTHE BOOK CLUB」の司書になりました。これより皆さまに「詩のある生活」をご紹介しながら、ともに「言葉とはなにか?」という謎に迫っていけることを楽しみにしております。 *  私は、詩を書きながら翻訳をする日々を送っています。子どもの頃に夢みていたのは画家でしたが、いつの間にかこうなっていました。自らの「国語」を構築する段階でイギリスに暮らして

LEO & MEGUMI|詩と短篇小説のZine『黎明通信』

 こんにちは。歌人・小説家の川野芽生です。  詩人・翻訳者の高田怜央さんと一緒にZineを作成しました。  造本・デザインは霧とリボンさんにお願いした、トリプルコラボ本です。  内容は詩と短篇小説(怜央さんとわたし、おのおの詩5篇、小説1篇)。  怜央さんが小説を発表するのははじめて。  わたしが詩をまとまったかたちで発表するのははじめてです。 発端 発端はおそらく約一年前、怜央さんの詩集『SAPERE ROMANTIKA』の刊行記念の高田怜央×永井玲衣トークイベント(代

松下さちこ《1》|私のお気に入りの、ほんの一部《1》

 蓋を開けると、ハミングが聞こえる。甘やかな旋律。かすかな声が、だんだんと大きくなる。そして歌になる。はっきりと聞き取れるようになる、魔法の言葉。  松下さちこさんのイラストは、まるで秘密の菓子箱のよう。鏡台の引き出しにひっそりと仕舞ってあるとっておき。それもひとつではない。「これは私のお気に入りの、ほんの一部」。さちこさんは、私たちにこっそりウィンクする。  花だけでは足りない私のもとに、純白のお菓子がやってくる。耳元で歌を歌い、目の前で踊りを踊ってみせる。いつか古い映

松下さちこ《2》|私のお気に入りの、ほんの一部《2》

  松下さちこさんの引き出しの秘密の菓子箱。甘やかな旋律はまだまだ続く、まだ続く。アイスクリーム、ショートケーキ、マカロン、パフェ。さちこさんの魔法は、わたしたちの心をデザート皿に変えてしまう。  「甘く/冷たく/澄み渡る/ダンス」(高田怜央「ジェラート」『SAPERE ROMANTIKA』)。アイスクリームをひとくち。もうひとくち。胸にすっと溶けゆく感覚。冷たい宝石になるわたし。 *  砕けない宝石、やわらかな宝石、包み込んでくれる宝石。ショートケーキ、ささやかな休日

金田アツ子|名曲喫茶のブーケ

 東京にはまだ、訪れたことのない名曲喫茶がたくさんある。うっかりしているうちになくなってしまった場所もある。さみしい。  けれども金田アツ子さんの出してくれる昔ながらのデザート菓子は、いつまでたってもなくならない。遅くなってもいつも出迎えてくれる、わたしが来るより少し前の街の記憶。 *  まるで塔のようにそびえ立つ色とりどりの花々。しかしそれは花器ではなく、デザートプレートに載せられてやってきた。  終わりもなく始まりもない純白の円形に、いつまでも褪せることのない菫色