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LEO|聖なる紅茶を一杯、一杯、一杯
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友人が友人を亡くした。長年の友人だったようだ。それをわたしは人づてに知った。
なにか声をかけたいものの、日本語はむずかしい。故人はご家族ではないから、お悔やみ申し上げます、というのは違う気がするし「ご愁傷さま」に至っては使い慣れていないとなんとなく悪口のようにさえ感じる。そうでもないか。でも、どうしたらいいんだ。せめて、しばらくはご無理のないように……と言いたいけれど、その訃報を受けてどうやら追悼文の原稿とか対談企画とか雑誌特集の準備とかがいっぺんに舞い込んできているらしい状況を鑑みると、それもまったく違う。どう考えても一世一代の無茶してもらうしかないとき。PCの前で口を開きかけたまま、わたしの言語はあっという間に行き詰まった。
いったん諦めてお茶を淹れつつ、なんかいい言葉、思いつかないかな、と思考が巡りはじめると、待ち構えていたかのように「時間とは何か」「命とは」「記憶」「歴史」「有限性」と、壮大な脱線たちがうららかな日差しのもといっせいに駆けめぐっていく。心はパジャマのままで、ぼんやりしながら後を追う。そのうち白くて柔らか場所にたどり着く。真っ白だ。
あっ、メールするんだった、と、座ってミルクティーを啜ってようやくハッと我にかえる。とにかく、こんなふうに(少なくともわたしに扱える範囲の)日常言語が使いものにならないとき、それでも伝えたいなにかがあるとき、がある。そんなとき、思考と感情は分たれぬまま一つの詩のかたちをとる。
For Paul’s Friend
A nice cup of tea, tea, tea,
And a piece of pear, saved just for you,
Do this in memory of all your friends
till we’re wrapped up in soft sheets.
ポールの友人に
聖なる紅茶を一杯、一杯、一杯
それから梨をひとかけら、あなたのためにすくわれた、
友だちみんな 呼び覚まし讃えよ
やわらかな布にくるまれ
ともになるまで。
そうやって言葉を探すタイミングが昨今いくつかあって、詩になって、詩集になりました。それが第二詩集『ANAMNESIAC』です。どうぞよろしくお願いいたします。
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高田怜央|詩人・翻訳家 →Linktree
英国スコットランド育ち、上智大学文学部哲学科卒。バイリンガル詩作および日英双方向の翻訳を行う。詩集に『SAPERE ROMANTIKA』、写真家・遠藤祐輔との共著『KYOTO REMAINS』、作家・川野芽生とのZINE『黎明通信』など。翻訳にヴィム・ヴェンダース監督作『PERFECT DAYS』、CHANEL 2023/24 Cruise Collection『TOMORROW ELECTRIC』、田口犬男「エミリー・ディキンスンからの電話」(MONKEY 英語版 Vol.5)など。2024年11月、第二詩集『ANAMNESIAC』刊行。
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著者|高田怜央
書籍名|【サイン入り栞付き】『ANAMNESIAC [アナムネージアック]』
詩・訳|高田怜央
寄稿|伊藤潤一郎
デザイン|相島大地
推薦文|柴田元幸・川野芽生
編集・発行人|岡田翔
発行|paper company
言語|英日
サイズ|17.3cmx10.5cm
72ページ/セミハードカバー/オフセット印刷/栞付き
発行日|2024年11月30日
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