「病む」サイクル構造で、自分にできることは何か:幸田 京子(EAPメンタルヘルスカウンセラー)
「INTERVIEW」では、カウンセリングプラットフォーム「mezzanine(メザニン)」で活躍するカウンセラーにインタビューを行い、その”人”を掘り下げます。
幼い頃に見たテレビ番組の影響から、心理の道に憧れ、一度は諦めるもリカレントでの学びを経てカウンセラーとなった幸田京子さん。
転機や、学びのモチベーションは何だったのでしょうか。
「憧れ」と、「諦め」の過去
—— カウンセラーを志したきっかけは、小学生の頃に見たテレビ番組の心理相談だと聞きました。どこに惹かれたのでしょうか。
テレビで見たカウンセラーは、迷っている人を導くような、明かりを灯すような、そんな感じがしたんですよね。
その番組の「夫婦間の悩み」を扱っていた回をよく覚えています。
当時私は小学生だったので、お悩みの内容が当事者にとってどれだけ大変なことなのか分かりません。でも、とにかく悩んでいるんだなということは分かるんです。
悩みを一生懸命聞いて、とにかく悩みを解決しようと努力する人がいる。
そして最後には相談者を優しく励まして送り出している姿を見て、とても感動したことを覚えています。
すりガラス越しなので、相談に来た人の様子は見えないんですけれど、段々と前向きになっているのが伝わったんですね。
それを見て、とても素晴らしい仕事だなって思ったんです。
—— 福祉の学びやお仕事をされていますが、社会人になって少し間隔があいているんですね。
カウンセラーは子供の頃の憧れでしたが、進学や就職を考える時期になると生業にするのは難しいと思って諦めてしまいました。
でも、どこか近いところで仕事がしたいとは思っていたんですね。
しばらく事務職に就いていましたが、結婚を機に消費生活センター、地域包括支援センター、地域若者サポートステーションと、公的機関の相談員、対人支援職に携わりました。
その過程で、精神疾患をお持ちの利用者さんと出会うこともありました。
適切な支援をするには、精神保健の学びが必要だと感じて、勉強して精神保健福祉士の資格を取りました。
そのサイクルで、自分にできることは何か
—— 精神保健福祉士の学習カリキュラムでは実習もありますよね。どこに行かれましたか?
私は3週間くらい、大きな総合病院に行かせていただきました。
「急性期病棟」や「認知症病棟」といった色々な病棟があって、そこでたくさんの経験をさせていただきました。
通常、患者さんというのは病院に入って、そして出ていくわけですが、その流れは病院の外側でも続いているんですね。ご自宅での療養だったり、施設だったり。
そして状態が悪くなると再入院される。
実習の期間で、そういった病む人をめぐる「サイクル」が存在すると知りました。
人は、そのサイクルに一度入ってしまうと、抜け出すことが非常に難しい。
当時の私はそう思いました。
そして、自分ができることは何だろう、と考えました。
サイクルから抜けるのは難しい。なら、その前に「予防」が必要で、病む人を支援して元気にすることがすごく大事なんじゃないかと思うようになりました。
それ以上のことは、自分にはできないかなとも。
—— それから、リカレントでカウンセリングを学ばれたんですね。
カウンセリングの学びは初めてだったので、とても新鮮でした。
「ブリーフサイコセラピー」とか「システムズアプローチ」とか、とにかく興味が掻き立てられて、ずっと関心を持って学ぶことができたと思っています。
ブリーフサイコセラピーは、私がテレビを見て憧れていた時から持っていたカウンセリングのイメージとはだいぶ違いました。
カウンセラーは、問題の原因を探らないんですね。過去に焦点をあてずに、現在と未来について質問を重ねていく。この技法にはとても驚きました。
ブリーフサイコセラピーにも細かい技法があって、中でも「例外探しの質問」は重宝しています。
悩みや不安を聞くだけではなくて、反対にその例外=うまくいった体験を聞き出して、そこに目を向けて、うまくいく時間を増やす方法を相談者と一緒に考えるんです。
これはいま私が活動している未成年を対象とした相談事業でもすごく有効で、活用しています。
最後に笑えれば
—— いま、幸田さんはどんなカウンセラーになりたいと考えていますか?
これはもう本当にシンプルで、相談に来られた方は色んな問題から精神的なストレスをたくさん抱えていらっしゃるじゃないですか。
なので、自分のこれまでの対人支援経験を活かして、悩める方々の心を癒し、元気になっていただき、自らの力で悩みの本質に気づいて、それを乗り越えて、元の穏やかな生活に戻っていってもらえるような、そんなカウンセラーになりたいです。
—— ……シンプルというよりは、だいぶ要求が多いなと思いましたが。
段階を踏むと、こうなんです。
—— なるほど。
はい。
—— 幸田さんは周りからどんな人だと言われますか?
聞いたことないですね。
あ、「優しい」とは言われたことがあります。
あと昔は「面白い」と言われたこともあります。
人を笑わせようとか、そういうことを意識的にしているわけではないんですけれどね。
きっと自分は明るく過ごしたいんでしょうね。友達と深刻な話をしていても、最後は笑い合うような。
「あれ、なんだったかな」「でも良かった良かった」「じゃあね」みたいな。ええ。
—— 幸田さんにとっては、明るく過ごすことが大事なのですね。
そうですね、失敗しても笑いに変えたい。
というか、隠していてもバレるんですよ。
—— 顔に出るんですか?
行動に出るんです。落ち着かないんでしょうね。
夫がすごく鋭いんです。
—— 最近、何か失敗でもしたのですか?
だいぶ前ですけれど、お皿をうっかり割ってしまって。家の中で一番高いお皿だったんです。それをうっかり真っ二つにしてしまって。
で、まったく同じお皿を新しく買ったんです。
—— 同じお皿を。
でも、高いお皿を割って、しかも新しく買ったなんてと言われるのが怖くて。
それがバレて、「毎日使っているから、これは大好きなんだ」と言ったんですけれど、すっごく怒られて。
いや、ちょっとこれは笑えなかったな。
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