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気づきを得る、その瞬間に寄り添いたい:八神 あや(EAPメンタルヘルスカウンセラー)

「INTERVIEW」では、カウンセリングプラットフォーム「メザニン」のカウンセラーに広報室からインタビューを行い、その”人”を掘り下げます。

八神さんは薬科大学を出て、製薬会社に勤め、薬剤師の資格を持つカウンセラーです。
薬学の世界から、カウンセリングへ。そして自身がカウンセリングを受ける経験もして、気づいたこと、考えたことをお聞きしました。

八神 あや(やがみ あや)
製薬企業での製品開発業務、調剤薬局で薬剤師として数多くの患者の服薬指導を経て、治験コーディネーターに転職。直近では臨床研究支援業務に従事。2020年、EAPメンタルヘルスカウンセラー(eMC)資格取得。



60歳、突然"原野"に立たされた

—— 八神さんは薬剤師の資格をお持ちです。そこから心理カウンセリングに関心を持つまで、どういった経緯があったのでしょうか。

小さい頃は英語と化学が好きでした。
それで親から「化学が好きなら、薬学部を受けなさい」と言われて、薬科大学に入って薬剤師になったんです。

人の心理にも関心があったんですけれど、選択肢にはならなかったですね。

—— その後、薬剤師を十数年経験されています。

病院やクリニックの近くにある薬局は「門前薬局」と言います。
私は、ちょうど子育てをしていた頃に、精神科の近くの門前薬局に勤めていました。

精神科の近くなので、風邪薬よりも精神科の薬を扱うことが多く、精神科に通院されている患者さんに服薬指導をするんですけれど、そこでよく患者さんの悩みとか話を聞く経験をしたんです。

その精神科の先生は、カウンセリングよりも薬で治す方針だったんですね。問診は簡単に済ませて、症状だけを聞いて「その症状ならこの薬」と薬を足したり引いたりするような。

ですので、私たち薬剤師は精神科のお薬の処方箋をたくさん持った患者さんを相手に、「先生が話を聞いてくれない」といった不満や悩みを聞くような状況に自然となっていました。

もっといい受け答え、回答ができればと思うことが増えて、カウンセリングの勉強をしておきたかったな、と思っていました。

—— カウンセリングの技法を学ぼうと決断できたのは、なぜですか。

主人(一人息子)の母の介護を私がするんだろうなと思っていたんですけれど、思っていたよりも早くに亡くなってしまったんです。

介護の必要がなくなって、その時には娘たちも独立していて、私は定年を迎える時期でもあって。

今まで私は決められた一本道をずっと歩いてきたけれど、気がついたら完全な”原野”にいたんです。
60歳になって何をしても良いという状態で、逆にどうしたら良いだろうか迷いましたね。

でも、それまでバリバリ仕事をしてきて、それなりにきつい経験もしましたし、仕事ばかりしないで自分に与えられた時間を有効に使わなきゃって思った時に改めてカウンセリングを学びたいと思いました。
それで、夫に相談してみたら「やってみたら」と言ってくれて、学習を始めました。

答えはクライエントの中にある

—— リカレントの授業は、どうでしたか?

はじめは、あまり良く分からないことばかりでした。

応用授業の先生は「仮説とかアセスメント(見立て)とかあるけれど、僕はそんな”方法”は教えないから」とおっしゃっていました。
授業中もテキストの内容にはあんまり触れず、自分の体験談とか、苦労話をよくされていました。

試験対策で選択した別の先生がいろいろと分かりやすく解説してくださって、教わることが多かったですね。
「答えはクライエントの中にある」って。

そこで、応用授業の時の先生が教えたかったことは方法論ではなくて、相手が発する言葉、そして気持ちを拾おうとする態度が大事であるということに気が付きました。

リカレントのどの先生にも共通していたのは、押し付けない姿勢です。

悩む人を諭すのではなく、本気で人の話を聞きましょうという傾聴のスタンスが徹底していました。
そのような態度で人と接することで、人は本音で話してくれるようになるのだと学んで、自分もカウンセリングを受けたりして、それでようやく分かりました。

—— 八神さんもカウンセリングを受けていた経験があるんですか?

半年ほど、ほぼ毎週受けていた期間があります。

リカレントでカウンセラーとして学んだのはいいけれど、やっぱり老後の過ごし方、何をすれば良いのか迷いがあったんです。
ただ、実はそれって答えが見えているんですよね。「好きなことをやればいい」わけです。

私が問題だったのは、好きなことを「やっていいのか」ということです。

私は自分の「好きなこと」をやっていいのか

—— 八神さんは先ほど「決められた一本道を歩いてきた」とおっしゃっていましたね。

そういう教育を受けてきたんです。
「これはやって良いけれど、これはダメ」と、常に私じゃない他の誰かが私の進路を決めてきました。

「20センチ以上飛べないノミ」という話を知っていますか?
ノミはとても小さな生き物ですが、最大で2メートルくらい
ジャンプできるんです。でも、そのノミを瓶に入れて蓋をしてしまうと、飛んでも蓋にぶつかって落ちてしまう。
次第に自分が飛べる高さを覚えて、瓶から出ても20センチしか飛ばなくなる、という話です。

製薬会社の入社試験を受ける時、親から就職すること自体を反対されました。「あなたはお茶とか、お花とか、裁縫を習ってお嫁に行けばいい」と。

びっくりしたのが、製薬会社から面接の次の日に採用通知の電話連絡が来ていたのに、母親は言ってくれなかったんです。
1日経ってから「そういえば…」という感じで教えてくれて、それから「会社に勤める生活をするの? 」と。

誰でも迷い、決意する。その瞬間に寄り添いたい

—— 親御さんの影響が強かった家庭だったんですね。

すごく強かったですね。
この歳になってカウンセリングを受けたきっかけでもあると思います。

でも私のカウンセラーは、私が親との関係に影響を受けているという話はしてくれたけれど、それが「良い」とか「悪い」とか、こうしなさいとは言いませんでした。

良いカウンセラーというのは、判定はしないんですね。あくまで、私自身の力で気づくことをサポートしてくださるんです。

振り返ってみると、私はよく喋る性格なので、自分の娘に対しても「ああなって欲しい」「こうなって欲しい」と色々と口出しをしてしまいましたね。
でもそれは良くなかったなって思いました。私が親から受けたことと同じことをしていたんじゃないかって、反省しました。

—— 八神さんはどんなカウンセラーを目指していますか

誰にでも迷いはあって、その迷いの中で自分はどうすれば良いだろうという話を聞いていると、その人自身が決意をする瞬間を見ることがあるんです。クライエントの表情も明るくなるのです。
それがわかる瞬間は、自分にとっても嬉しいですね。

自分の中で気づきを得るまで時間はとてもかかるので、その瞬間まで一緒に寄り添える、そんなカウンセラーであることができれば良いなと思います。

インタビュー、撮影、文:メザニン広報室

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