#6 「理解者」になること:大野りりこ(臨床心理士)
ー 大野さんのカウンセリングとの出会いを教えてください。
中学生のとき、体調を崩した時期があって、カウンセリングを受けてすごく良くなったという経験がありました。
私の症状は拒食症でした。
そしてちょうどカウンセラーの先生も私と同じような過去を持っていらっしゃったことを、3回目のカウンセリングの時に先生が打ち明けてくださったんです。
私の症状について分かってくれる、理解者がいるんだと気づいてから、症状自体は良くなっていきました。
そういう経験があって、中学2年生の冬ぐらいに、将来どういう進路に進もうかと思った時に、私もそういう人になれたらいいなと思ったのがきっかけですね。
ー 大野さんは企業と契約して働く人の心理支援をする、産業領域での心理士としての活躍が長いです。どういった経緯があったのでしょうか。
学生時代にアルバイトをしていたところが有名な大手ブランドだったんですけれど、すごくブラックな働き方をしていたんですね。
朝7時から夜12時まで働き続けて、連勤が11日間とか。
そうすると、病む人がすごく多くて、裏で泣いている子がいたり、店長室から分厚いファイルが叩きつけられる音がしたり、人格が乖離してしまう人もいました。
学部生の頃はスクールカウンセラーになりたかったんですけれど、そのバイトの経験があってからは関心が産業領域に移りました。
大学院生の頃には、働く人の助けになれたら、という思いを持っていました。
最初はすごく無力感がありました。
心理学を勉強しているとはいえ、当時まだ大学生で、具体的に何か心理療法を学んだかというとまだ実践できるものでもない。だから、とりあえず話を聞くことしかできないということが、すごく申し訳ないという気持ちになっていました。
それに、ブラックでしたけれど、楽しい職場でもあったんです。
私は結局7年くらい続けていて、店舗のオープニングからずっといたので学生リーダー的な立ち位置も経験していました。
どうせなら仕事は楽しくやって欲しい。そういう思いで、みんなが働きやすく楽しくなるように色々と工夫していました。
ー 働く人の悩みというのは、具体的にどういった悩みが多いのでしょうか。
やはり一番多いのは、人間関係でしょうか。
同僚、先輩、上司、後輩との関係、あとは自分自身が周囲にどう映っているのか気にされている方もいます。
いわゆる無能感というか、ご自身のことを仕事ができない人間だと思っていて、周りに迷惑をかけてしまっているんじゃないかと悩んでらっしゃる方も増えてきています。
でも、そういう方に限って上司の方の評価は全然違うんですね。本人のセルフイメージと周りの評価がかけ離れている。
そんな時は、カウンセラーが間に入りつつ、三者面談のようなスタイルで上司のフィードバックを直接いただくようなこともします。
それから認知行動療法ですね。
自己評価は低くなってしまう。
じゃあ、例えば一緒に仕事をされている同僚からはどう見えているのか、視点を変えてみることで気づける事があります。
ー 悩みには、属性も関係あるんでしょうか。
職場での人間関係の悩みが多いのは、比較的女性だと思います。
男性の場合は、悩みの種類は問わず、ちょっと手遅れ気味になってから来られる印象です。
今現在どうしようもなくて、休職や退職を検討するような段階になってからカウンセリングに来る、そんな感じでしょうか。
反対に、20代くらいの若い人はちょっとストレスが溜まったら吐き出そうという形で来てくれますね。
30代を超えると、どうも我慢してしまうみたいです。
ー わかりきった質問ですけれど、もっと早く来てくれたら、と思うような場面もありますか。
そうですね、もっと早く相談に来てくれたら仕事を辞めなくても良かったのにとか、仕事を続けていく形を模索できたのに、という方は本当に多いです。
ー 大野さんがカウンセリングをされている時に気をつけていることは何ですか?
専門職ですが、専門的な言葉は使わないように、気をつけています。
そもそもカウンセリングとは何か、という部分から分からない人も当然いらっしゃいますので、分かりやすく説明することですね。
それと、産業領域あるあるかもしれませんが、カウンセリングに来られる方は働いていて皆さん忙しいので、なるべくスピーディーな解決を目指しています。
EAP(従業員支援プログラム)だと、大体5回くらいのカウンセリングで完結できるのを目指していくんです。私もそれくらいの感覚が染み付いていますね。
インタビュー、撮影、文:メザニン広報室
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