見出し画像

選択肢を”引き出す”、肯定的なカウンセリングを目指して:佐藤 汐(EAPメンタルヘルスカウンセラー)

「INTERVIEW」では、カウンセリングプラットフォーム「メザニン」のカウンセラーに広報室からインタビューを行い、その”人”を掘り下げます。

佐藤汐カウンセラーは幼稚園教諭、子育て支援を経てカウンセラーに。
子ども、そして子育てに邁進する親をサポートするなかで何を考えてきたのでしょうか。その思いを伺いました。

佐藤 汐(さとう しおり)
幼稚園教諭の経験から子育て支援ボランティア団体の立ち上げ、親子参加のイベント企画開催、YCVケーブルTVでの子育て番組の企画出演など、長年にわたり子育て支援を行う。
EAPメンタルヘルスカウンセラー(eMC)資格取得後、休職社員のカウンセリング事業に従事し、働く人の心理支援も経験。こころの悩みに寄り添うメンタルヘルスの電話相談は今年で10年目になる。
現在、子育てアドバイザーとしても養育者の相談に乗り、地域では保護司としても活動中。


心理への興味は「心の発達」から

—— 心理に興味を持ったきっかけを教えてください。

きっかけは、短大の保育科で学んだ発達心理の授業でした。
子どもが育つ「環境」が、心の発達において本当に大事なんだということが印象的で、学びになりました。

短大を出て幼稚園に勤め始めてからも、私たち幼稚園教諭が親御さんと信頼関係を築くことが、子どもにとっての「良い環境」になるんだと感じていました。
なので、はじめは子どもの心理、心の発達に興味を持っていたんです。

それに、いざ子どもと関わってみると、子どもというのは大人のような感性を持っているんだと気付かされました。
だから、子どもを子どものように扱うのではなく、一人の「人」として接することが本当に大事だなと感じましたね。

—— その後は子育て支援の仕事をされています。

専業主婦になってからも子育てに関わる仕事をしていました。
ボランティア団体としていくつかの子育て応援グループを立ち上げて、それぞれのリーダーを務めたり、地域のケーブルテレビに自分たちで台本を考えて出演したりもしていました。

それから横浜市の子育て支援事業である「子育て支援者」にも参加しました。
お子さんの養育者、主にはお母さんが対象になりますが、子育ての相談に乗るお仕事です。

例えば、小さなお子さんを公園に連れて行った時に、帰る時間になっても「まだ遊びたい、ヤダヤダ」とお子さんが泣いてしまったらどうすれば良いでしょうか。
無理やり引き離すのは相当大変で、現実には親御さんはなかなか帰れないです。

そんな時は「そうだよね、まだ遊びたいよね」と一旦お子さんの気持ちを受け止めてあげて、でも帰らないといけないその理由を伝える。
そうして、例えばブランコに乗っているとしたら「じゃあ、あと20回乗ったら帰ろうか」と提案してみるといいんです。

そうすると、お子さんはちゃんとその提案を考えて、自分で選択して、気持ちに折り合いをつけられます。

—— まさに、一人の「人」として接するのが良いんですね。


相談とカウンセリングは何が違うのか?

—— 「カウンセリング」と「相談」は異なる、と教科書的な考え方では言われています。佐藤さんはどのような違いがあると思いますか?

子育て相談の場では、まずは相談に来られた親御さんの気持ちを受け止める。これはカウンセリングでも一緒だと思います。

その上で、私が子育て相談の時に意識していたのは「こうした方が良いと言われているよね」と選択肢を提示した上で、親御さんに選択していただくということです。

—— 相談の場でも、選択肢を提示して、主体的に選ぶのはお母さんなんですね。

そうです。
私が一方的に「こうすべき」と押し付けることは、避けてきました。

カウンセリングでは選択肢を提示する時の、その提示の仕方にもっと慎重になりますね。
選択肢もご自身で出していただいて、そして自身で決める。
カウンセラーは「提示する」というよりは、「引き出す」という役割でしょう。

—— 「引き出す」とは、具体的にはどういったことですか

例えば、「幸せになりたい」とおっしゃられたとして、それってとても抽象的で曖昧ですよね。
ご自身の言う「幸せ」って、どんなことだろうか。あるいは、何がどう変わると幸せだろうか。

そんなことを一緒に明らかにしていくことも、カウンセリングの一つの作業です。


「答え」が多すぎる、SNS時代の子育て

—— これはやや挑発的な質問ですが、子育てはハウツー本がとても多い気がしていて、そういう意味では相談の場って必要なのかなと疑問に思います。

いいですね。
子育てのお悩みを抱えて来られる親御さんたちは、お話を伺ってみると子育ての経験が無い方達が多い印象です。

その一方で、親御さんたちはSNSでいろんな情報をキャッチしています。
では、そうしたノウハウが自分のお子さんにあてはまるかというと、違うんですね。
子どもにも一人ひとり、違った個性があるわけです。

どんな方法が正しくて、どんな方法が間違っているのか、知りたいという気持ちがあることは分かります。
でも、じゃあその方法が果たして出来るのかというと別問題なんですよね。

—— なるほど、正しい方法があると言われても、それが自分のお子さんに適用できるとも限らないし、また自分で実践出来るとも限らない。

そうです。
お子さんによって取るべき対応方法は異なってしまいます。
それに、親御さんはすでに十分工夫して頑張っていることが多いです。

その上で「これでいいのかな」と悩みを抱えていたり、葛藤したりしているのですから、誰かがその頑張りを認めてあげることが大切ですよね。
実際に、お母さんたちからは「誰も自分のことを褒めてくれません」とよく言われます。

お子さんはどういったときに落ち着くのか、どんな時に泣き止むのか、親御さんからお話を聞いて、対処方法を模索することもしつつ、カウンセリングが終わる頃には自分の選択に自信を持って欲しい、そう思います。

インタビュー、撮影、文:メザニン広報室

▼佐藤カウンセラーのカウンセリング予約はこちらから