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【徹底解説】アダルト・チルドレン


「アダルト・チルドレン」とは

「アダルト・チルドレン」とは、機能不全家族のなかで育った人のこと。

精神医学の診断で用いられる言葉ではありませんが、アダルト・チルドレンの人々は特徴的な”生きづらさ”を抱えていることが言われています。

・他人と対等な関係を築くことができない
・他者と親密になれない
・Noと言えず、自分らしく生きることができない

私たちオンラインカウンセリングサービス「mezzanine(メザニン)」にも、「アダルト・チルドレン」という言葉を用いて自身の抱える悩みを持ち込まれる方が一定数いらっしゃいます。


「アダルト・チルドレン」の歴史

「アダルト・チルドレン」という言葉は、もともと1980年代にアメリカのアルコール依存症の治療現場で生まれたものです。

現場のケースワーカーやセラピストたちは、アルコール依存に苦しむ当事者だけでなく、幼少期にアルコール依存症を抱えた親に育てられ、成人した人たちに注目します。そうした人たちが「アダルト・チルドレン(Adult Children of Alcoholics)」と呼ばれたのです。

1990年代、日本に「アダルト・チルドレン」を紹介した精神科医の斎藤学は、「アダルト・チルドレンの問題を、アルコール依存症の家族の問題として限定せず、さまざまなタイプの機能不全家族のなかで生じた家族内トラウマの犠牲者にみられる後遺症という視点からとらえ直してみる」ことを提唱します。(斎藤学『アダルト・チルドレンと家族』p82)


家族とトラウマ

斎藤学は精神医学の枠組みで「アダルト・チルドレン」を捉えていく際に、家族との関わりの中で生じる心的外傷(トラウマ)に着目しています。

一つのトラウマが、人の人生を支配し続けることは珍しいものではありません。
トラウマが元となって生活に困難が生じていれば、それは「心的外傷後ストレス性障害(PTSD」とされます。

人生を支配してしまうようなトラウマは、戦争や災害、性的虐待といった過酷で明白な暴力に晒されるような状況だけでなく、家庭内でも生じうるのです。


「自覚」から「癒し」へ

さて、斎藤学によって日本に持ち込まれた「アダルト・チルドレン」ですが、これは決して精神医療における正式な診断の名称などではありません。
つまり、統一された定義がないのです。

実際に、「アダルト・チルドレン」や関連用語の「共依存」「嗜癖」に単一の定義が存在せず、日本だけでなくアメリカでも人や現場によって多様な解釈で使われていることが指摘されています。

単一の定義が存在せず、人によって曖昧に解釈されうる状況であるため、「あなたはアダルト・チルドレンです」と誰かが判断することは基本的にはありえません。

では、「アダルト・チルドレン」という言葉に対して、私たちはどのように向き合うべきなのでしょうか。
臨床心理士の信田さよ子は、誰かに判断してもらうことよりも、「私はアダルト・チルドレンだ」と自覚することが重要だとしています。

つまり、「アダルト・チルドレン」という言葉は、他人を決めつけるためのレッテルでも、診断のための医学用語でもなく、自分自身のために使うものなのです。

幼い頃に経験した家庭内のトラウマによって生じた、”生きづらさ”。
その生きづらさを解消する最初のステップは、まず自分自身を「アダルト・チルドレンだ」と定義して自らの出発点とすることです。


文:メザニン広報室

【参考文献】
斎藤学, 1996, 『アダルト・チルドレンと家族』, 学陽書房
柴田啓文, 1998, 「アダルトチルドレンをめぐる諸概念の検討」『四日市大学論集』11巻(第1号)
信田さよ子, 2021, 『アダルト・チルドレン:自己責任の罠を抜けだし、私の人生を取り戻す』, ヒューマンフィールドワークス