外国人労働者の動向。

 わが国は人口減少と労働力不足に対応するために、アジア諸国を中心とする外国人労働者の受け入れを拡大している。しかし、彼らは言葉や文化の壁、低賃金や不安定な雇用状況などの問題に直面している。
 2020年10月末には外国人の労働者数は約172万人で、過去最高を更新した。国籍別ではベトナムが最も多く、約44万人で全体の約26%を占め、次いで中国約42万人(24%)、フィリピン約18万人(11%)の順であった。在留資格別をみると、専門的・技術的分野が約36万人で一番多く、次いで技能実習の約40万人、留学を含む資格外活動が約37万人となっていた。
 外国人労働者の雇用状況は送り出し国の経済や社会の情勢などに影響される。また外国人を受け入れる理由は、労働者の減少による生産力の低下防止と、グローバル化への対応である。
 能力・人物本位で雇用するというが、採用する企業の多くは日本人の採用ができなかったり、人件費を抑制するのが本音である。外国人労働者の平均賃金は、20年の時点で一ヶ月あたり約21万8000円であり、日本人の約30万8000円と比べると約9万円の差がある。
 国立社会保障・人口問題研究所は、23年4月に新しい将来人口推計を公表した。この統計では70年のわが国の人口は約8700万人に減少し、外国人を含む総人口に占める外国人比率は約940万人に達する。
 この推計は現在の傾向・趨勢が続いた場合の状況を示しており、将来的な社会・経済情勢や政策変更などによって変化する。しかし、実際に外国人がそんなに増える可能性は少ない。
 わが国には外国人労働者を必要としながらも、厄介者のように扱った過去がある。オンライン雑誌クーリエ・ジャポン(講談社)によると、1990年代に工場で働くために来日した日系ブラジル人の待遇が典型的で、彼らの大半は日本語を話せず、文化的にもブラジル人を通した。08年の世界金融危機によって企業が労働者を解雇せざるを得なくなった際、政府は労働者一人当たり30万円を支給して帰国させ、二度と戻ってこさせないようにしたという。
 現在のわが国の経済はさらに低迷し、円安が追い打ちをかけている。これだけでも、わが国で働こうとする外国人はかなり減る。政府は外国人労働者の定義を拡大し、熟練ブルーカラー労働者も加えるようにしたが、一方、日本語の要件を引き上げ、さらなる制限となっている。
 難民の受け入れには極端に消極的で、そのくせ嫌中、嫌韓と喧しいわが国は、人種の偏見が少ない国とされる。しかし、グロ-バル化が進む中で、排外的で全体主義な傾向は強まっている。
 外国人労働者はあくまでも客人、出稼ぎの扱いである。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?