夜明けの紫の空

初めて出会った短歌の記憶

金色(こんじき)のちひさき鳥のかたちして銀杏ちるなり夕日の岡に    与謝野晶子『恋衣』

 小学生の頃、俳句を楽しむ祖父から俳句かるたと一緒に短歌かるたをもらった。取り札の絵が愛らしい短歌かるたに惹かれ、とりわけ晶子の一首が好きになった。まさか自分で歌を詠むことになるとは想像しなかったが、思い返すとこれが出会いであった。

 だが、件の短歌かるたはいくら探しても見つからない。もらったのは俳句かるただけだ、と父母は言う。

(初出 「短歌研究」2012年11月号特集「新進気鋭の歌人たちー初めて出会った歌」)


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