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接ぎ木の科学

接ぎ木は農業のあらゆる場面に用いられている一般的な技術である。
今回は接ぎ木について、今まで知られていなかった発見を紹介する。

接ぎ木とは?

植物というと実生(種から育てること)をイメージするけれども、果樹を育てる際はほとんど接ぎ木が使われているし、盆栽に使われる梅なども接ぎ木で育てられる。

接ぎ木の歴史は古く、一説に拠れば2000年以上前からワインを作るためにつかわれるぶどうの栽培などに用いられてきた。

しかしこの方法は、ある種の主要な作物については、長い間失敗してきた。それが、単子葉植物である。

単子葉植物(単子葉類)とは、イネや小麦などの穀物のほとんど、そしてバナナ、ネギやサトウキビといった身近な食べ物たちの種類である。

なぜ、単子葉植物では接ぎ木が困難とされてきたのか、中学生の理科教室の資料をすこし覗いてみよう。

http://tyu.oita-ed.jp/usuki/kita/2020%20%20%EF%BC%91%E5%B9%B4%E7%90%86%E7%A7%91%E6%95%99%E5%AE%A4%E3%80%80%E2%84%96%2011%20-2%E3%80%803%E7%B5%84%E8%A2%AB%E5%AD%90%E3%81%97%E3%82%87%E3%81%8F%E3%81%B6%E3%81%A4%E3%81%AE%E3%81%AA%E3%81%8B%E3%81%BE%E5%88%86%E3%81%91.pdf

単子葉植物という名前は、葉(子葉)が1枚であることに由来している。

子葉が2枚ある他の顕花植物グループは双子葉植物と呼ばれているが、現在、学術的には「単子葉植物」と「その他の植物グループ」という扱いになっている。(詳しくはWikipediaなどを見ていただきたい)

実はこの単子葉植物、世界の植物相の中で最も多く見られる。

そのため、食物としても広く用いられているのは当然であるが、実は単子葉植物の接ぎ木は何度も試みられてきたがほとんど成功しなかった。

このことから、生育の速さや病害虫に強いというメリットのある接ぎ木が主流になることはなかった。

そして、多くの専門家もまた単子葉植物の接ぎ木は不可能に近いと見ていた。その理由は、単子葉植物と双子葉植物の解剖学的な違い、特に単子葉植物には維管束形成層という特殊な内部細胞層がないためであった。

タバコ属の植物を仲人にした接ぎ木ができる


接木ができる植物、専門用語で言う「癒合適合性」が確保されるためには、接ぎ木する植物同士が近縁種であることが必須であると考えられていた。

しかし、なぜ接ぎ木が可能になるのかというメカニズムは不明だった。

名古屋大学の研究グループは、ナス科のタバコ属植物を中間に用いることで遠縁の植物とも接木ぎが可能であることを発見したという。

単子葉類も接ぎ木ができる可能性

前述の通り、単子葉植物(単子葉)と呼ばれる植物には、穀物や多くの熱帯作物が含まれる。単子葉植物の接ぎ木(異なる植物の根と芽を持つ植物を作ること)は、困難とされていた。

Reevesら1名は、単子葉植物の接ぎ木に成功した方法を報告した。

下図aにおいて胚芽(幼芽)を切除し、ドナーの種子の胚芽と交換する。移植した材料が幼根(根を形成する胚領域)に確実に密着するようにする。

http://www.natureasia.com/ja-jp/nature/highlights/111847#.YgsdvRiqJz0.twitter

bにおいては、移植された組織の界面にある未熟な細胞(移植片連合と呼ばれる)が、2つの部分を結合させるために再プログラムされるという。

シュートと根の間のコミュニケーションと物質(水や養分など)の移動は、輸送システムの木部と葉部の組織がつながっていることで可能になる。

接ぎ木、葉挿し、接ぎ木

多肉植物は接ぎ木をすることがほとんどない。多肉植物は「葉挿し」をすることができるからだ。

多肉植物で唯一接ぎ木をしているのはサボテンの類である。
新しい種類を作る際、種が必要なとき、台木となるサボテンから栄養をもらって生育をよくするという目的で行われる。

普通の薄い葉っぱでの葉挿しは不可能ではないが難しい。
そのへんの木の葉っぱを土に植えても根っこが出ることは稀である。

しかし、挿し木というやり方がある。
すこし木の部分ものこして土に植えると根っこが生えてくるのだ。
この方法は盆栽に使われる紅葉や松などの木の育成で使われる。

なぜ多肉植物だけが葉っぱだけで根っこが出てくるのか?
おそらく、水分を葉にたくさん蓄えているので、根っことなる細胞を作るだけの時間的余裕があるのではないかと考えられている。

接ぎ木については新しい情報が手に入り次第この記事にまとめていきたい。

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