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視覚と足底感覚

秋の日は釣瓶落とし

とはよく言ったものですが、お盆を過ぎて一気に日が短くなりましたね。


水曜のクラスが18:30〜なのですが、お盆前まではスタート時はまだ完全に明るかったのに、今はもうスタートから一気に暗くなってくるような感覚があります。


その水曜クラスでは集合後、まずは全体でダイナミックストレッチからウォーミングアップを始めるのですが、その中には片脚立位ポジションの種目が多くあります。


このところ時間帯的に暗くなってきてからというもの、全体的に片脚支持のぐらつきが多くなった気がしたので、今回はタイトルの通り

「感覚」

のお話でもしようかなと思ったというわけです💡



人間の五感とは、

「味覚」「聴覚」「嗅覚」「視覚」「触覚」

のことを指しますが、今回は「片脚立位でのバランス」について取り上げるので、その中でも

「視覚」「触覚」

のお話になります。

聴覚なんかも関わりはありますが、今回は↑の2つをピックアップしたいと思います。



1. 特殊感覚と体性感覚

特殊感覚と体性感覚って聞いたことありますか?

特殊感覚とはその感覚を感知するための専用の器官でキャッチする感覚のことで、

「味覚=舌」「聴覚=耳」「嗅覚=鼻」「視覚=目」

がこれに当たりますね。


対して体性感覚とは、固有の器官ではなく全身の皮膚や筋、腱等にある感覚受容器から得られる感覚のことで、

「触圧覚」「温度感覚」「痛覚」「深部感覚」

なんかのことを言います。


ちなみに第六感のことは私はよくわかりません笑




2. 「感覚」は何のためにある?

これ、みなさんはどう考えますか?
全ての感覚というものが無い世界、想像してみてください…。








死にますね、すぐに💦

この辺りについては前々回の記事ともちょっとだけリンクすると思います。



痛みを感じない、熱いものを触っても何も感じない、目が見えない、耳が聞こえない、そして何の味覚も感じない…。


もちろんそれらの感覚の一部に障害を受けた方というのもいらっしゃるわけで、一部が機能しなくても他の感覚器官や運動能力で補い合って生きていらっしゃるわけですが、全てがなくなったら人としてかなり危機的状況だと思います。


ちなみに現在パリパラリンピックが開催中ですが、特にゴールボールと車椅子テニスには本当に鳥肌が立ちました!!


もっともっとTVで放映されてもいいはずなのに、オリンピックとの格差に苛立つ日々です。。。



と、脱線しましたが、ちょっと難しい言葉で言うと、人間に備わるホメオスタシス=恒常性というものが原点にあり、危険から身を守り生命活動を維持するために、全ての感覚というものが大事になるわけです。



3. 視覚情報が薄れると?

話をダイナミックストレッチに戻します。

例えば片脚を胸元に抱え込んだ片脚立位をイメージしてください↓

この動作をする際、目を開いた状態と閉じた状態ではどちらがぐらつきにくいでしょうか?



多くの方は目を開いていた方がぐらつきが少ないと思います。


それは完全に目を閉じていなくても、薄暮の時間帯、まだ暗さに慣れない時に視覚情報が薄れても、やはりぐらつきは大きくなりますよね?


ではそう言った状況でぐらつきを抑えるために必要な感覚とはどういった感覚でしょうか?




4. 受動感覚と能動感覚

ここで少し話を脱線しますが、前に挙げた感覚は受動的な感覚と能動的な感覚に分けることができると思います。

能動的、つまり情報を自分でサーチしに行く知覚システムは、

  1. 前庭系

  2. 聴覚系

  3. ハプティク系

  4. 味と匂いの系

  5. 視覚系

に分けられると、Gibson(※1)は提唱しています。


この中でハプティク系というのが手や足、口など身体に接触するものから情報を得る系のことなのですが、そういう意味で足底というのも

「地面からの情報をサーチする感覚器官である」

と言うことが出来るのではないでしょうか?

(参考文献:※2)


例えば地面がボコボコしているとか傾いているとか、芝生で柔らかいとかアスファルトで硬いとか、そう言った感覚は足底からキャッチしていますよね?




5. 足底感覚

この足底の感覚閾値について、Weinstein(※3)は、触覚感受性は他の部位に比べて必ずしも優れていないが、空間分解能は顔や手の次に感受性が高いとしています。


つまり足の裏というのは、触られた時の感覚として圧が強いか弱いかとか、熱い冷たい等の感覚はちょっと鈍めだけれど、触れたものと自分の身体の位置関係を把握したり、ぐらつきや沈み込み等の情報を得ることには長けていると言うことができます。



6. 姿勢制御と感覚

また話を片脚立位に戻します。

人間の姿勢制御機構は

  1. 前庭迷路系(視覚の安定)

  2. 足底感覚

のトップダウンの系とボトムアップの系の、大きく分けて2つあるとされます。

特に人間は直立二足歩行の生き物であるため、地面から得られる情報=足底感覚が非常に大きな比重を占めるものと考えられています。

しかしそこで足底から得られる感覚情報が少なくなると、トップダウン=視覚系に頼らざるを得なくなります。


では、足底感覚が薄れた状態で夕暮れ後、暗い競技場でバランスを取ろうとすると、どういったことが起きるでしょうか?




7. 防御行動

暗くて見えにくい。
その上足底感覚が乏しい。

ぐらつきますよね?

ぐらつくとコケる危険を感じますよね?(身体が勝手に)

危険を感じると身体ってどうなりますか?



固めませんか?

ふにゃふにゃしたままコケると、多分思いっきり頭を打つ可能性が高くなりますよね?


人間、頭を守りたい生き物なんです。



と言うことで、足底感覚が正常に機能していないと、身体に無駄な力、りきみが生じてしまうということが分かったかと思います。



8. まとめ

ということで、足底感覚の機能が低下するとウォーミングアップ時にも余計な筋緊張を生んでしまったり、それによって様々な代償動作が出てしまうと言うことがお分かりになったかと思います。


まぁ、とはいえ足底感覚を最高の状態にしないとアップの意味がない、なんて極端な話ではありませんが、日頃からこういう細かい部分の

「身体の準備」

をしておくことで、いざ練習、そしてそのためのウオーミングアップとなった時の効果にも差が生じてしまいますよね、と言う話です。


大事なことなのでもう一度言います。


日頃から身体の準備をしておかないと、走るどころかウォーミングアップすら効果的に行えない=最高の状態で練習が出来ないですよね?


と、走るための身体の準備の専門家からのメッセージでした💡




じゃあその足底感覚を機能させるためにどんなことができるの?


と言うお話は次回のお楽しみに🖐️




すがわらこうよう


【参考文献】
※1:Gibson JJ : The visual perception of objective motion and subjective movement. Psychol Rev 101 (2) : 318-323, 1954
※2:木藤伸宏 他 : 足底感覚と運動器疾患 『理学療法』23(9) : 1262-1272. 2006
※3:Weinstein S : Intensive and extensive aspects of tactile sensitivity as a function of body part, sex and laterality. The Skin Sense (Kenshalo DR ed). 195-22. Thomas, Springfield, IL, 1968

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