BOOK, TRAIL Vol.2で出会った、本人と本
奈良県立図書情報館で2回目の「BOOK, TRAIL」が今日終了した。この週末に出会った本人たちと彼らが教えてくれた本を、忘れないうちに書いておこうと思う。
全員が3冊の本を選んで集まった。
1冊目は、忘れることが出来ない〝現在の自分につながる本〟[a]。
2冊目はいま必要性を感じている〝読み返したい本〟[b]。
3冊目はまだ読んでいないけど目にとまる〝なぜか気になる本〟[c]。
友廣裕一さん(シーベジタブル)の3冊[上からa, b, c]
『青春漂流』には、12年前の日本一周ヒッチハイクの旅で、友廣さんが直接出会うことになった人のインタビューもいくつか含まれている。「彼らがまだ模索していた若い頃の言葉を、大学生の頃に読めていたのはよかった」と話していた。
いま彼はシーベジタブルという会社を育てながら、あらためて「会社ってなに?」と考える日々をすごしているようで、周囲の人が当たり前のように語りかけてくる〝会社の成長〟や〝経営観〟への違和感を漏らしていた。私も青野さんの本を読んでみたい。(「どう?就活」にもつながる)
乾聰一郎さん(奈良県立図書情報館)の3冊[上からa, b, c, c]
『不可思議な日常』の帯文や巻頭の言葉は、鷲田清一さんが寄せている。池上さんと鷲田さんは大学で肩を並べる間柄だったそうだ。そして乾さんの大学時代の恩師が池上さんなのだと言う。この哲学の先生が生涯に書いた本が、日常の隅々に触れるエッセイだけで、社会全体を大きく論じるものではなかったことに共感をおぼえた。
あと嵐山光三郎さんの株があがった。30年くらい前のマガジンハウスの雑誌で魅力的な笑顔をよくお見かけしていたが、人一倍読み、食い、人一倍よく生きてきた方なんだな。(ご存命です)
西村佳哲の3冊[上からa, b, c]
現在の自分につながる本はもちろん無数にあるし、レコードや映画も含み数限りないが、当時もっとも多く読み返していたのは間違いなく漫画で、中でも大島弓子さんの作品群だと思う。
『バナナブレッドのプディング』は私が13歳の頃「セブンティーン」に連載されていた5回のストーリーで、たぶん15歳くらいのころ単行本で買ったんじゃないか。
生きていることを祝福する姿勢は、その後に書かれる『綿の国星』を含み大島さんの作品に通底するものだけど、当時10代中頃の自分がその感覚にたっぷり浸ることができて本当によかった。助けられていると思う。久しぶりに読み返して、この漫画の中に自分が自然と大事にしていることが全部入っていることをあらためて知った。
そして早く『内蔵とこころ』を読みたい。「読まないと」と、30年以上思ってきた本。2月には辿り着きたい。
BOOK, TRAIL Vol.2には、Slow Food Nipponの渡邉めぐみさん、料理家でWind for Mindを手掛ける どいちなつさん、精神科医でミュージシャンの星野概念さんの3名がゲストとして来てくれた。以下それぞれの本も。
渡邉めぐみさんの3冊[上からa, b, c, c]
なぜか気になる本2冊について「答えが書いてないことはわかっているんだけど、じゃあなにが書いてあるのか知りたい」と話していて、小気味よかった。
どいちなつさんの3冊[上からa, b, c]
お友だちがくれた『平松洋子の台所』を愛読していたちなつさんが、東京で歩きながらたまたますれ違った女性をハグして、離れてしばらく歩いてから「平松さんだった!」とわかった、っていう話はすごかったな。
星野概念さんの3冊[上からa, a, b, c, c]
星野さんが岸さんの本に感じている良さについて、「わからないまま着地しない」「すべてが道半ば」「『うわー、なんでもねー!』って思う(笑)」と語る言葉がまた魅力的だった。
BOOK, TRAIL Vol.2*の副題は「本を通じてきく、あなたの旅の話」。
今回は自分も、会場の参加者同士の三人組に加わって、いろんな人の3冊と彼らの旅路を垣間見た。出会った人の面影をともなって読んでみたい本が増えてゆく恐ろしいイベント(年間可読量の少ない私のような人間には)。あと一回やります。