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黒猫の夜におやすみ:神戸元町レンタルキャット事件帖

三國青葉 2019 双葉文庫

神戸元町でレンタルキャット屋を営む主人公が拾った黒猫は、ちょっと普通じゃない猫だった。
ベーカリーや焼き菓子の名店が多い神戸を舞台にしているだけにあり、美味しいものがあれこれ出てくるところが、目の毒だったりする。
つい、あれも食べたい、これも食べてみたいと思ってしまうのは人情だ。

外からお迎えした猫が、こんな秘密を抱えていたら。
猫好きの女性にとって、こんな猫なら大歓迎だろう。
そういうロマンがたっぷりの小説だ。

猫と長く生活していると、彼らは人間の言葉がわかっているに違いないと思うことがある。
飼い主が落ち込んだり、傷ついている時に、彼らは見守るように寄り添い、傍らを温めることで慰めをくれる。
逆に、私が怒り猛っていた時には、走って逃げて近寄らなかったこともあったけど。
それが10歳を越え、20歳を越えると、いつの間にか飼い主よりもはるかに年上で、むしろ保護者のように、見守ってくれるようになっていた。
特別な猫だった。

20日間ほど、行方不明になって、痩せ細って帰ってきたことがあったけど、その時に初めて気づいた。
無事は嬉しいが、無事だからと言って、何があり、どこにいたかは、知ることができない。
なぜなら、私が彼らの言葉を理解できないからだ。
猫とおしゃべりできたら、どれだけにぎやかで、楽しいだろう。
彼らの気持ちももっとわかってあげられるかもしれないのに。

そんなことを、猫と生活してきた人なら考えてもおかしくないと思うし、そういう夢をある意味でかなえてくれる物語だ。
私の大事な特別な猫も、あの時、人助けの冒険をしていたのかもしれないなぁ。
保護猫活動をしている人のTwitterなどを思い出して、特にクレオの話に心が動かされた。
優しくて細やかでひたむきに人を愛してくれる存在なのだ。
どうか、彼らに選ばれた人もまた、精一杯、最後まで、彼らを慈しみ育てることができますように。

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